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    夢魅屋の終雪

    @hiduki_kasuga

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    夢魅屋の終雪です。推しのRがつくものを投稿してます

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    夢魅屋の終雪

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    藍家に無事に帰ってきた二人だが、そこにいたのは楓だった。
    クリスマスアンケSS

    #曦澄
    #創作モブ
    originalMob

    【曦澄】クリスマスまで五日【腐向け】「……勿論、藍家だよ」

    握っていた手を、子供のように大きく振り回して歩き出す。
    それがどこかぎこちないのは、藍曦臣は子供の頃にこういうことをした事がなかったのだろう。
    姉と義兄が、江晩吟を挟んで似たように歩いてくれた事がある。
    その後ろを、友人が静かに追いかけていた。

    江晩吟が帰りたい場所は、あの頃だ。

    それを、藍曦臣も察していた。
    江晩吟は、寂しがり屋だ。苛烈な性格に隠された優しさと寂しがり屋な青年だ。
    本当は江家に帰したほうがいいと解っていたけれど、
    家出のように出てきてくれた事を裏切るような事はしたくない

    「……迷惑じゃないのか?」
    「迷惑じゃないよ」
    「本当に?帰っていいのか?」

    寒さからなのだろう、ズビッと鼻を啜る音がして横目で見る。
    寒いのか鼻が赤くなっていて、目頭が赤くなっていた。
    それを見て見ぬふりをして、藍曦臣は家路を歩く。

    「帰っておいで」
    「うん」

    ▼△▼△▼△▼△▼


    「澄!」

    藍家に辿り着くと、黒塗りの車から江楓眠が駆け寄ってくる。
    その後ろには、友人と秘書がいて様子を見ていた。
    藍曦臣の背後に、江晩吟が隠れると父親は傷ついた顔をする。

    「どうして、家を抜け出した」
    「抜け出した訳じゃない、ただ出かけただけだ」
    「観世にも黙って?玄関も使わず、3階の部屋の窓から?」

    江楓眠の言葉に、藍曦臣は後ろに隠れた江晩吟を見た。

    「……晩吟?」
    「……慣れてる」
    「慣れるほど抜け出しているのかい?!」
    「無羨に誘われてだ!観世だって、よくやってた!!」

    藍曦臣の背中から、ビシッと黒塗りの車の側にいる友人を指差す。
    すると「観世?」と秘書と江楓眠が、友人を白い目で見つめる。
    ビクッと体を震わせてから、江晩吟に対して指を刺し返す。

    「とばっちりだ!何を巻き込んでるんですか!!!」
    「うるさい!!裏切り者!!!」
    「貴方が、家出する先が少なすぎるのがいけないんでしょうが!!
    社長の心当たり一発ですよ!!」
    「残念だったな!一発じゃない!!聶精肉店に行った!!!」
    「その後どうするつもりだったんですか!!?」

    二人の喧嘩を咳払いて止めたのは、江楓眠だった。
    息子に向き直りながら、手を伸ばす。

    「澄…帰っておいで」
    「い、いやです」

    藍曦臣の手を強く握って、首を横に振る。
    眉が寄るけれど、泣きそうな顔に見えた。

    「澄!」
    「いやです。俺は、戻りたくない」

    一歩近づく江楓眠の前に、藍曦臣が立ち塞がる。
    その為に、江楓眠は彼を睨みつけた。

    「曦臣!」
    「すみません、江社長。晩吟の望み通りにしてあげたいのです」
    「……」
    「……」

    それでも藍曦臣は、彼の前から立ち退かなかった。
    一発触発といった所で、玄関の扉が開いた。

    「なんや、表が騒がしいと思ったらお客さまですかぁ。
    あら、坊ちゃん。おかえりなさい、早いおかえりでしたなぁ」

    のほほんとした声が、響いた。
    中から出てきた家政夫は、にっこり笑って家から出てきた晩吟の頭を撫でた。
    その手が心地が良くて、江晩吟は頬を染めてされるがままになる。

    「「あ!」」

    藍曦臣と江楓眠の声が、重なる。

    「悠瞬、私だって滅多に晩吟を滅多に頭を撫でた事ないんですよ?!」
    「勝手に撫でたら、ええやないですか」

    なぁ?と家政夫は、江晩吟に同意を求める。
    しかしどうすればいいのか解らず、顔を赤くして俯いた。
    それから、買い物袋を家政夫に差し出す。

    「ん?」
    「今日のセールの戦利品」
    「あらぁ!坊ちゃん、えらいわぁ!!!後で、お小遣いあげますなぁ!!!」

    買い物袋を受け取った家政夫は、江晩吟を抱きしめる。
    次は、三つの声が重なった。

    「まぁ…お遊びはこれまでにしまして」
    「お遊びって言うなら、晩吟を離してから言って」

    藍曦臣は、江晩吟を引き寄せる。
    やれやれと肩をすくめると、家政夫は江楓眠に向き合った。

    「寒い外にお引き止めして申し訳ございません。中にお入りください。
    私の主、藍啓仁様がお待ちです」

    恭しく頭を下げてから、顔を上げた時には先ほどとは違い笑顔のままだが真顔のように見えた。
    江楓眠もその顔を見て、彼に客人として向き合う。

    「急な訪問、失礼する」

    ▼△▼△▼△▼△▼


    家の中に入ると客間に、藍啓仁が待っていた。
    家政夫に案内されて江楓眠は、藍啓仁のテーブルの椅子に座る。
    後ろには、江晩吟の友人と江楓眠の秘書が立つ。
    藍啓仁の後ろには、家政夫が立った。
    江晩吟は、藍曦臣に導かれて藍啓仁の隣に座った。
    その隣に藍曦臣が座ったために、江楓眠は眉を寄せる。

    「啓仁、どう言うつもりだい」
    「まだ晩吟は、私の保護下だと言うことだ」
    「澄は、私の息子だ」
    「晩吟は、もう20歳だ。どこで暮らすかは、自分で決める年齢だと思うがね」

    バチりと、二人の間に火花が散った気がした。

    「どうして、晩吟の意志も聞かずに連れ帰った」
    「……藍曦臣が、私の息子にキスをしていた。私は、啓仁と曦臣を信頼して預けたのに」

    ぎりっと、膝の上で拳を作る。
    こんなふうに、自分のために怒る父親を初めて見た気がした。
    しかし、藍啓仁は冷静に江楓眠を見据えていた。

    「キスをしていたと言うが、私の甥はお前の息子のどこにキスをしていた?」
    「額に」
    「額ならば、ただの愛情表現。あの時は、晩吟は体調が悪かったと記憶している。気休めのまじないだろう」
    「しかし!曦臣は!」
    「曦臣が、同性愛者だから?それがなんだと言うのだ。
    同性愛者だからまじないのキスをする事が、手を出したことになるか?
    曦臣がお前の信頼を裏切っていると、今の晩吟を見て思うのか?」

    ばん!と、藍啓仁はテーブルを叩いた。
    同性愛者だからと言うのは、偏見した者が多い。
    藍啓仁も、藍忘機が魏無羨と恋人同士になる時は大反対したものだ。
    そして藍曦臣が、同性愛者だとカミングアウトした時は三日三晩倒れた。
    しかし、甥の二人は異性と結婚して子供を作るという期待以外は応えてくれた事を思い直した。
    同性愛者だろうと異性愛者だろうと、愛する自慢の甥である。ただ、少しだけ反抗期が遅かっただけなのだ。

    「江楓眠、私は言ったな。お前たち家族は、言葉が足りないと」
    「……」

    反論を言わない江楓眠に、藍啓仁はソファーの背もたれに寄りかかる。

    「晩吟は、部屋の片付けができる」
    「……そうなのか?」

    藍啓仁の言葉に、瞬きをして江楓眠は息子を見る。
    江晩吟は、うなづく。

    「課題が終わったら、必ず悠瞬の手伝いをする」
    「……」
    「もう近所のセールを把握してくれとりますわぁ」

    やんごとなき家柄の藍家の食卓が、セール品が並ぶと言うのが信じられないという顔をする。
    この家政夫も藍氏分家の御曹司のようだが、所帯染みている。
    後ろにいる息子の友人のようだ。

    「晩吟とは、食事が終わると1日の事を話してくれる」
    「……そうか」
    「晩吟が、この家で1番どこで過ごすか、わかるか?」

    藍啓仁は、江楓眠は問いかける。
    この家で過ごした事を、昨日一日で江晩吟から聞いていれば分かるはずだ。

    「……自分の部屋、だろうか?」

    江楓眠の言葉に、藍啓仁は眉をよせて横目で江晩吟を見る。
    俯く江晩吟に、肩を落とした。

    「違う、リビングだ。うちのリビングにはソファーがあってな。
    そこでは、曦臣と忘機と悠瞬がよく課題をこなしていたんだ。
    私もそこで過ごす事が多い」
    「……」
    「そこには、誰かしらいるし。誰かがそこで過ごしていれば、誰かしらがそこにくる」

    そこには、家族の安らぎがあった。
    最初こそ戸惑っていた江晩吟だったが、藍曦臣や家政夫が連れ込んだ。
    テレビを見ていれば、一緒に見るようになった。
    藍啓仁は、顎髭を撫で下ろす。

    「晩吟がよく見る番組を知っているか?」
    「……いや」
    「バラエティだ。動物が出ると笑う回数が多い」
    「……」
    「一緒に見て私が質問すると、的確に説明をして答えてくれる」

    ふふん、と微笑みを浮かべる藍啓仁。
    そんな叔父と主を見つめながら、江楓眠をからかっているなと推定した。
    プルプルと、江楓眠は俯いて体が震えている。

    「じ、自慢か……」

    小さな声だった。しかし、耳のいい藍氏の三人は聞き取った。
    江晩吟だけが、首を傾げた。なんて言った?

    「自慢か、啓仁」
    「自慢?当たり前の事を言ったまでだが?」

    声が弾んでる。と、親戚の二人は内心は大きくため息をついた。
    しかし、江晩吟だけは何が自慢なのか解っていない様子である。
    父親が何を藍啓仁に羨んでいるのか、全く解っていないんだろうなぁ。
    と向かい側で見ていた友人も内心ため息をついた。

    「素直に言ったらどうだ?」
    「……」
    「晩吟が、曦臣に甘えていた事が羨ましいと。
    悠瞬のように、頭を撫でて抱きしめたいと。
    私のように、一緒にテレビを見たり夕飯後には語らいたいと」
    「……な!」
    「先生、父が俺とそんなことをしたい訳ないでしょう!」

    今まで黙っていた江晩吟が、勢いよく藍啓仁を見た。
    そのため江楓眠が、泣きそうな顔で息子を見ていることに気づいていない。
    これには、藍啓仁も旧友に哀れみを向けざる得なかった。

    「楓眠」
    「……今夜は、付き合ってやるから泊まっていきなさい」
    「どうせ、10時くらいには寝るだろう」
    「当たり前だ」

    ▼△▼△▼△▼△▼

    藍啓仁の部屋から、父の泣き声を聞こえている。
    心配そうに江晩吟は、リビングのソファーから心配そうに見つめていた。

    「お父さんの説得は、叔父上に任せておくといいよ」
    「あれは説得というより、自慢ですなぁ」
    「だから、何を自慢するんだ?」
    「んー…愛弟子自慢?」

    苦笑しながら、藍曦臣と家政夫はあいまいに笑って見せた。
    ここにいる者たちは、江楓眠と秘書以外は藍啓仁の生徒であった者たちだ。
    なるほど、自慢するには有能な人物ばかりだ。

    「私は、梓の坊ちゃん送りがてら家に帰りますな」
    「うん、お疲れ様」
    「それじゃあ、晩吟。おやすみなさい」
    「ああ、おやすみ」

    家政夫は、車の鍵を持って江晩吟の友人を連れて家から出ていく。
    友人の家は、江家から近いが藍家からは少し遠いので車やバイクなしでは通える距離ではない。
    運転手であり秘書も、父を慰めているために家には帰れないのだ。

    藍曦臣と江晩吟は、リビングで二人きりになる。
    江晩吟の手には網掛けのマフラーがあって、それを藍曦臣は愛しそうに見つめていた。

    「曦臣さん」
    「何かな?」
    「もう少しだけ、そっちに行っていいか?」
    「どうぞ」

    隣同士で座っていたけれど、少しだけ二人の間には距離が置かれていた。
    それを江晩吟は、詰める。肩がふれあうくらいに近くなり肩に寄りかかる。

    「あのな」
    「うん?」
    「1日だけだけど、実家に帰ったら……その…」

    ポツリと江晩吟は呟くように声をかけるのだが、途中で言いかけた事、伝えたい事に感情の歯止めがかかる。
    伝えていいのか、伝えてしまって迷惑にならないだろうか?
    そんな風に思って、藍曦臣を見上げる。

    「……寂しかった」
    「……」
    「半年しか、暮らしてないけど……ここにずっと帰りたかった」

    恥ずかしくなって俯くと、藍曦臣は肩に手を回した。

    「私も、君がここにいない事が寂しかったよ」
    「……本当?」
    「うん、本当。すごく、寂しくてね。食事もできなくて、悠瞬に叱られた」

    江晩吟の頭に、藍曦臣は頬を擦り寄らせる。

    「できる事なら、ずっとここにいて欲しい」
    「俺もここにいたい。曦臣さんの側にいたい」

    二人は、どちらと共なく向き合った。

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    PROGRESS恋綴3-5(旧続々長編曦澄)
    月はまだ出ない夜
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    「んんっ」
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    1437

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     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
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     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
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    takami180

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    「何をしている!」
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    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
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    「よかった、あなたをお守りできて」
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     江澄は眉間にしわを寄せた。
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