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    16年かけてくっつく曦澄2話
    ここまでで過去編終わり。素直になれない江澄とすれ違い😊

    #曦澄
    #MDZS

    曦澄② ぽっかり空いた心の隙間を、藍曦臣が埋めていくのに時間はかからなかった。

     二、三日に一度、藍曦臣は夜になるたびに江晩吟の部屋に訪ねてくるようになった。二人で温かい茶を一杯飲む間だけ他愛もない話をして、静心音を聴かせてもらう。藍曦臣が来てくれた日は、嫌な夢を見なくなった。

    「昨日の稽古、あなたは少々手を抜いた気がする」
    「江宗主相手にそんなことしません」

     昨日の稽古、初めて江晩吟が二勝したのだ。怪我も完全に癒え、衰えていた体力もすっかり回復したらしい。藍曦臣に勝てて嬉しいはずが、素直に喜べなかったのは目の前の男がちっとも悔しそうでないからだろう。

    「なら今度は、あなたは朔月と裂氷を両方使ってくれ。俺も紫電と三毒を使う」
    「そうなると修練場だけでは手狭になりますね」
    「場所を変えればいいだけの話だ」
    「ふふ、では受けて立ちましょう」

     こういう他愛もない会話が楽しい。あんなに絶望していたはずなのに、楽しいと思える自分が信じられなかった。


    「何か困っていることはありませんか?」
    「ない。あなたのおかげでよく眠れるようにもなった」

     琴を弾く前になると寝台に横になる江晩吟に向かって、藍曦臣はいつもそう聞いた。二人で話している時もどこそこの家のだれそれが最近元気がない様子だとか、誰々の傷の治りが遅いだとか……江晩吟ではとても気付けないような些細な変化を見逃さずに気を配っている。いつだって誰かの心配をしていていて、彼自身が疲れないのかと江晩吟は逆に心配になるときがあった。

    「あなたは何かないのか?」
    「え?」

     自分に余裕ができてきたからか、その日は気まぐれに藍曦臣に聞き返した。身体を起こして、顔を覗きながら尋ねれば、琴を弾く気になっていた藍曦臣はびっくりした顔をして長い睫毛がついた目蓋を数回瞬かせていた。

    「人の傷を癒やし続けていてあなた自身溜まるものや困ることはないのか?俺には琴の音であなたを癒せないが、話を聞くことくらいならできる」
    「……」
    「それとも癒やしてくれる相手がいるなら、余計なお世話かもしれないが……」
    「いません」

     藍曦臣のためにと思って提案したが、余計なお世話だったかなと最後はごにょごにょと自信のない声になった。いくら宗主同士とはいえ、江晩吟では頼りにならないだろう。そもそも藍曦臣ほどの男なら、恋人の一人二人いてもおかしくないと思いつき、話を引っ込めようとしたところで藍曦臣がはっきりそれを否定した。

    「私には特別な人はいません」
    「そ、そうか……」

     はっきり言われれば、じわりと胸の奥に喜びが広がっていく。

    「ありがとう、江宗主。あなたのその言葉だけで、とても気持ちが楽になった気がします。……正直なことを言うと、雲深不知処が襲撃された時は不安も大きかった。でもあなたを見ていたら自然と私も頑張らなければならないと思えるようになりました。おかげで、今はとても自然体に息ができています」
    「……なぜそこで俺が出てくる」
    「辛い立場なのに自分を律して、頑張りすぎというほど頑張っているじゃありませんか」
    「……何もかも不慣れで必死なだけだ」
    「それでも。あなたの頑張りが私に力をくれた」

     ありがとうと藍曦臣が優しく微笑むせいで、江晩吟は自分の頬に熱が集まるのを感じた。顔を見られるのが恥ずかしくて、藍曦臣に背を向けて横になる。
     少しくらい自分も助けになりたくて話しかけたのに、これでは結局自分の方が救われている。

    「ふん。特に話がないなら、今日の琴を頼む」
    「はい」
    「……」

     返事をしたきりいつまで経っても琴の音が聞こえてこないので不思議に思っていれば、「江晩吟」と呼ばれ慣れない名で呼ばれて驚いた。

    「私のことを案じてくれて本当にありがとうございます。……もしもひとりで耐えられないことがこれから先あっても、あなたがいてくれると思えば耐えられる気がします」
    「大袈裟だな」
    「そんなことありません」
    「もしあなたが眠れなくなったときには琴の代わりに手でも握ってあげますよ」
    「頼もしいです」

     ふふ、と相変わらず上品に笑ってから、藍曦臣の指が琴の弦を弾きだす。背を向けたままその音を聞きながら、江晩吟はまずいと思った。

     自分の中で藍曦臣の気持ちがどんどん大きくなっていく。隙間を埋めて、埋め切った隙間から気持ちが溢れて膨らんでいくのを止められない。

     まずい。まずい。まずいとしか考えられない。
     まずいと思うことこそが、多分もう藍曦臣のことが好きになってしまっている証拠なのかもしれなかった。





     魏無羨を目撃したという情報が入ったのは、それからしばらくしてのことだった。
     酒場で赤い服を着た集団にそれらしき人が連れて行かれるのを見た人がいると伝えられるのを、江晩吟は絶望的な気持ちで聞いていた。
     このタイミングで赤い服といえば、確実に温氏だろう。
     何度も殴られながら連れて行かれたと聞けば、その先に何があったかなど見なくともわかる。

     あの魏無羨が!転んでもただでは起きない、聡明で、強く、何にも縛られない魏無羨が死ぬはずない!
     何度も何度も必死に自分に言い聞かせながらも、心のどこかに大きな穴でも開いたかのような喪失感に襲われていた。普通に生活などできるはずもなく、その日は全ての訓練を反故にして魏無羨を探しに行こうとした。
    「外出許可がありません」と出口で門番に止められたのは、魏無羨の件を報告した後で江晩吟がヤケを起こさぬようにとの差金だろう。
     頭のどこかに冷静な部分も残っていて、この静止を振り切ってまで飛び出しても何も得られないことはわかっていた。諦めて部屋に帰ろうとするとあまりに不憫に思ったのであろう門番が「秘密だぞ」と耳打ちながら酒を一甕差し出した。これを飲んで今日は眠るといい、と言われれば、自分がどれだけひどい顔をしているのか容易に想像できた。断るのも面倒で、差し出されるまま受け取ると部屋に戻る。
     そういえば今日は何も口にしていなかったけれど、やけくそな気持ちで部屋に入るなりたったまま酒を呷る。甕から直接流し込むように口に入れれば、その飲み方は魏無羨を思い出させて余計に不安定な気分になった。
     眠れ、と言われて渡されただけのことはあり、よほど強い鮭だったらしい。空きっ腹に満たされた酒は強い香りと共に身体中に酔いを巡らせる。立っているのが辛くなり、投げやりに寝台の上に座る。頭がクラクラして、身体中が熱いのに、期待した眠気は訪れそうにない。
     魏無羨が死んだ?ありえない。でもそれならなぜあいつは帰ってこないのだ。
     栓無き思考は止めどなく溢れ、この世にたった一人になってしまったような心細さを江晩吟にもたらした。遠くで生きているはずの姉に会いたい。一人は怖い。誰か……。

     ふと、頭に浮かんだ人物の顔に、想像した自分自身が驚いた。
     姉と並べて思い浮かべるにはあまりにも畏れ多い人物だった。

    「江晩吟」

     自分の思考を打ち払おうとしたのと、ドア越しにそっと名前を呼ばれたのは同時だった。会いたいと、頼りたいと思ったはずの人物に名前を呼ばれ、突っぱねられないくらいには江晩吟は弱り切っていた。

    「……はい」

     やっと絞り出した返事はみっともないほど震えていた。声の主ーー藍曦臣は、返事が聞こえたことにホッとしたように息をついたと思うと「失礼」と短くわびてドアを開ける。部屋の中を充満する酒の匂いに一瞬顔を顰めたけれど、今日ばかりは美濃が好きになったらしいかった。江晩吟を咎めることなく床に転がっている酒甕を見ないふりで通り過ぎると、江晩吟の前に跪いた。

    「何を……」

     目上の立場の藍曦臣が自分のために膝をつくなどあってはならないと、酔った頭でも思い至る。慌てて寝台から降りて自分も同じようにしゃがもうとすると、曦臣の手によって阻まれ寝台に座り直された。

    「顔を見たかっただけだよ。私の膝を心配してくれるなら、顔をあげて」
    「……はい」
    「魏の若君のことは、とても残念に思う。情報の真偽、それからその後逃げおおせている可能性も含めて、こちらでも探らせていくから安心してほしい」
    「……」
    「不安になるなと言う方が酷だとは思う。けれど何の情報もない今は、まずは身体を休めるべきだ」

     曦臣は江晩吟の向かいに椅子を引っ張ってきて腰掛けると、江晩吟の膝に置かれていた手を優しく握った。優しい言葉を連ねて励ましながらも、最後にはキッパリと眠るように告げる。ひつようならば静心音を弾いてくれると言われて、江晩吟は首を振る。
     心配してくれていることも、内容の正当性もわかるけれど、とてもじゃないが穏やかに眠りたいと言う気持ちにはなれなかった。

     握られた曦臣の手は、とても暖かかった。
     目の前の男が確かに生きているのだと思うと、少しだけホッとする。少なくともこの人は、自分がやけを起こさないかを見に来てくれるくらいには江晩吟のことを気にかけていてくれているのだ。

    「藍曦臣」
    「はい」
    「どうしてここまでよくしてくれるんですか」

     元々深い交流が会ったわけでもない。それなのに、たった一日修練をサボっただけで心配をして様子を見にきて、手を握って励ましてくれる。そんな風に優しくしてもらう価値など今の自分にはないのに。江晩吟の問いかけに藍曦臣は少し困った顔をした。

    「……困っている時に力になるのに、理由なんて必要ないよ」

     その答えを聞いて、そういえばこの男は沢蕪君だったのだと思い出す。理由がなくとも困っている人がいたら助ける。数多くいる保護の対象の一人。そんなこと、考えるまでもなくわかりきっていたことなのに、自分はどうやら想像以上に酔っている。
     公正公平、情に熱い沢蕪君の正答に、ひどくがっかりしている自分がいた。

     何に傷ついているのかわからないまま、瞳に一粒涙が浮かぶ。
     それを見て藍曦臣がハッとしたように目を見開いたのがあまりにも惨めで、江晩吟は慌てて立ち上がろうとする。この狭い部屋の中で逃げ場などない。立ち上がったところですっかり酒気帯びた体はふらついて、結果として藍曦臣に体を支えられることとなった。

    「大丈夫ですか」

     ほっそりとした見た目に反して程よい筋肉に包まれた体は、江晩吟の体を抱き止めてもフラつきもしなかった。強い力で抱きすくめられると、その拍子に胸元から柔らか檀香がすることに気がつく。この男らしい優しくて柔らかい香りだった。

     欲しい、と思った。

     こんな時に抱く感情じゃないと、どこか冷静な頭でかわかっている。それでも、今だからこそ、この香りを手に入れて目の前の男が確かに生きて、自分を見ているのだと思いたかった。

    「江晩吟?」

     何も言わずに抱き止められたままの江晩吟を心配して、藍曦臣が尋ねた。その唇にそっと自分のそれを寄せる。口付けをするのは生まれて初めてだったけれど、唇同士を触れ合わせると驚くほど柔らかい感触がそこにあった。
     触れたまま、目を瞑っていると、藍曦臣がはっと身を硬くしたのがわかる。突き飛ばされないのをいいことに、江晩吟はだその体を抱きしめた。

    「頼む」
    「……何を」
    「俺を哀れに思うなら、忘れさせてくれ」

     抱き止めたまま、寝台の方へと倒れ込む。心臓はこのまま飛び出してしまうのではないかと言うほど早鐘を打っていた。

    「藍曦臣」

     江晩吟組み敷く形で寝台に横になりながら、呆然と自分を見下ろす藍曦臣の名を呼びながら、江晩吟は襟元を掴んで自分の方へ引き寄せる。
     もう一度、今度は薄く唇を開きながら口付けて、江晩吟は目を瞑る。

    (いつの間に、こんなに好きなったのだろう)

     自分自身に問いかけながら差し出した舌で驚いたまま固まった唇をひと舐めする。こんなこと普段なら絶対できないのに、今はどうにか目の前の男をやる気にさせることだけで頭がいっぱいだった。

    「めちゃくちゃにしてほしい」

     やっとの事でそれだけ言ったのと、藍曦臣がゴクリと息を呑んで江晩吟の舌に応えて自らの舌を絡めたのはほとんど同時だった。
     長い舌が口内に侵入してきて、躊躇いながらも江晩吟の口内を歯列に沿ってなぞっていく。上歯の裏側や上顎に触れられるとそれだけでみっともなく声が漏れる。

    「……んっ、ふっ、んんっ」

     迷っているのか、或いは慣れていないのか、藍曦臣の動きはたどたどしく、恐る恐る進む舌はどこか冷静ささえ感じさせた。これでいいのだろうか、この先に進んでもよいのかと、迷っているのがわかる。江晩吟こそ初めてで、どうすれば良いかなんてわからなかった。けれどここで辞められるは嫌で、藍曦臣の首の後ろに手を回して引き寄せながら必死に自らの舌を絡めた。

     お互いの合わさった下肢が熱を孕んできたのがわかる。どうやらこの口付けに嫌悪はないらしいとわかるとホッとした。

    「きみは酔っていて、それに、傷ついてる……きっと後悔する」

     後悔すると聞いた時、胸がズキズキと傷んだ。
     後悔なんてするはずがない。自分はこの人が好きだから。でも藍曦臣の方は違う。いくら優しい男でも、好きでもない男を抱いて後悔しないはずがない。

    「曦臣…どうか、そのまま」

     それでいて、この優しい男が断れないように懇願してみるのだから、自分はタチが悪い。
     曦臣の髪を撫でて、抹額に手を伸ばす。ただ行為に気持ちを向かわせたかっただけの深い意味はない行為だったけれど、ピクリと小さく曦臣の肩が震えたのを見て、そういえば昔、藍家の抹額の意味を聞いたことがあったと思い出した。触れていいのは親子と伴侶のみ。

    (俺が触れていいものじゃない)

     抹額に触れようとした手を引っ込めてそのまま襟に手を伸ばす。優しい藍曦臣はこれ以上江晩吟を拒むこともできないまま、誘いに乗るようにしておずおずとその手を伸ばした。




     翌朝。
     頭と身体がひどく痛んで目が覚めた。ゆっくりと目を開ける。一瞬何が起きたかわからず、目を瞬かせた後、次の瞬間には昨日の記憶が一気に蘇った。自分は何て事をしでかしてしまったのかと慌てて起き上がれば、腰に痛みが走る。

    「大丈夫ですか?」

     てっきり曦臣はもういないと思っていたから、声をかけられて驚いた。彼は椅子に腰掛けていた江晩吟の様子を見て慌てて立ち上がった。

     ひどく悩み、疲れた顔だった。
     もしかして昨日はほとんど寝ていないのかもしれない。

    「どこか痛みが……?」
    「頭が」

     本当は身体中どこも軋むように痛かったが、このままだと曦臣が倒れかねないと思いそこは伏せた。身体を起こし、向かい合えば気まずい沈黙が落ちてくる。

    「江晩吟……昨日は、」

     曦臣はそう言ったきり言葉を切った。
     何と言えば良いか迷うように視線が揺れるのを見ながら、やはり後悔しているのだと思った。

    「昨日はどうかしていました」

     なんだか可哀想になってしまい、江晩吟は自分から話を切り出した。声が震えてしまわないよう、曦臣から見えない方の奥の手で寝台の掛け布を握りしめる。

    「江晩吟……」
    「酒のせいで、おかしくなっていた。あのくらいで酔うとは、俺もまだまだだな」

     冗談めかして笑ってみせたのに、曦臣は一つも表情を変えなかった。いつもの柔和な笑みがないと、この顔は本当に彼の弟に似ているのだと気づく。嫌いな男の顔に似ていているおかげで、嘘をつきやすいことが幸いだった。

    「あなたにとっては苦痛な時間だったことと思うが、俺にとっては必要な時間だった。……あと一つ、情けをかけてくれるなら、今後この件には触れないでほしい」
    「苦痛なんて、そんなこと……江晩吟、私は…」
    「沢蕪君」

     曦臣の言葉を遮った。これ以上同情で優しい言葉をかけられることに耐えられそうもなかった。

    「自分の立場は弁えているつもりだ。俺は昨日どうかしていたし、貴方がそれをほっておけるはずがなかった。あなたのおかげで昨日はよく眠れて、感謝している。……自分の愚かさに俺の気が狂う前に、部屋を出て行っていってくれ」

     視線を合わせないよう、強く握りしめた自分の拳を睨みつけながら吐き捨てる。
     沈黙はどのくらい続いたのか。永遠のように長く感じられたが、実際はごく短い時間だったのかもしれない。

     曦臣が立ち上がったのが気配で分かった。何も言わないまま、彼は扉の前まで歩み、そこで一度足を止めた。

    「昨日、あなたを見舞ったのが私ではなくても……あなたは同じことをしたか?」

     こちらを見ないまま問われた言葉の真意は考えるまでもなかった。

    「……そうだな。ひどくしてくれるなら誰でも良かった」

     江晩吟が曦臣相手によこしまな気持ちを抱いていないことを確かめたいのだろう。実際のところ、彼以外にこのような愚行をはたらくはずがなかったけれど、曦臣を安心させるために嘘をついた。
     曦臣がはっと息を呑む音が室内に落ちる。節操のない男だと思われたに違いなかったが、今更引き下がりようもない。

    「昨晩のことは、忘れます。私たちの関係は、今まで通り何も変わらない。それでいいね?」

     忘れる、と言われてショックを受けている自分に気がついて、自嘲する。自分から望んだくせに、受け入れられたことが悲しかった。

    「恩に着る」

     声が震えないように注意を払いながら、やっとの事で返事がする。藍曦臣は今度こそ何も言わずに部屋を後にした。

     芽生えたばかりの恋が、粉々に砕け散った音が聞こえた気がする。
     江晩吟の初恋は、最悪な形で終わったのだ。





    .
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     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
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