HAVE A GOOD DAY! 今日のオレはとことんツイていない。
まず手始めに、今日の仕事場が都内から離れたド田舎だという時点ですでにオレは運命の女神に見放されていた。
普段は兄貴とセットでの仕事が多いが、今日は兄貴ご指名の別件があり、珍しくオレ一人での仕事だった。
朝起きると兄貴はすでに家を出ていたようで、兄貴の目がないことでハイになったオレは、お飾りと化したコーヒーメーカーを引っ張り出して、朝から淹れたてのコーヒーを飲んで最高の朝を迎えようと一人張り切った。
……結論から言う。慣れないことを仕事前にやるもんじゃない。
いくらスイッチを押しても一向に一滴たりともコーヒーが滴り落ちてこないため、故障を疑ったオレはコーヒーメーカーの内部を確認した。
すると、水とコーヒーの粉とが混ざり、岩石のように固くなった塊が道を塞いでいることが原因で、コーヒーが出てこないことが分かった。
堰き止めている塊を力ずくで取ると、「ガガガガガガガガ!!!!」と急に大きな音を出して動いたかと思えば、そこら中にコーヒーが発射され、着ていたスーツは勿論、髪の毛や顔、キッチン周りがドロドロになった。
あとから分かったことだが、あの時電源を入れっぱなしで内部をイジったことがマズかったらしい。
ただコーヒーを飲みたかったオレは、「なんでこんな目に合わなきゃなんねぇんだよ!もう知るか!!」とコーヒーメーカーをシンクに叩きつけて、片付けもせず、どこもかしこもコーヒー塗れのまま放置した。
あのキッチンの惨状を帰宅した兄貴が見たらどうなるか、考える余裕もないままにイライラゲージMAXだったオレは家を出たので、その時点でオレの未来は失せたも同然だ。
せめてもの詫びモンブランくらいは買って帰らないときっとオレは秒で消し炭、良くてミンチだろう。
モンブラン効果で機嫌を直して貰えた試しは今の今まで一度もないが、何もないよりかはマシだろう。
話を元に戻して、せめて身なりだけはと予定にはなかった朝風呂に入り、ソファーで寛いでいると、いつもなら予定時刻の十五分前には迎えに来るはずの運転手が、時間を過ぎても何故か来ないことに気が付いた。
おかしいなとスマホを確認すると、着信履歴が一件とSMSが一件入っており、見ると運転手からだった。
『お電話いたしましたがお出になりませんでしたので、メールにて失礼いたします。本日体調不良のためお休みを頂きます。蘭さんにはご連絡しております。ご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたします』
とメッセージには記されていた。
確か二時間くらい前に着信があったが、その時のオレはまだ寝ぼけ眼で、着信音がうるさくて誰からかかってきたかを確認せずにすぐ切ったことを思い出した。
「運転手が来ないことを知ってたなら兄貴も連絡してくれたらいいじゃん!ってか知ってたなら連絡するだろ普通!」と思ったが、オレの兄貴に”普通”が通じないことを思い出して、期待するだけ無駄だとすぐに諦めた。
仕方がないので、誰か手の空いている部下にでも送迎を頼もうと連絡したところ、何故か誰とも連絡がつかない。
「今日は確か大きな定例会があって、動けるヤツ全員マイキーの護衛に出すとか何とか三途が叫んでたな…」と数日前の出来事を薄ぼんやりと思い出した。
となるとタクシーだなとタクシー会社に連絡したところ、「繁忙期にそんな遠いところまで走らせられない」と乗車を拒否されたオレは完全に道を絶たれ、途方に暮れた。
仕事自体は大した内容ではないが、梵天では仕事の大小問わず、【仕事をトチる=裏切り者=スクラップ】という組員全員体に叩き込まれた梵天ルールが存在し、これは幹部だから例外というものではない。
万が一、スクラップは逃れられたとしても兄貴からの制裁は待ったナシなことは想像に難くないし (何ならそっちの方が怖い) 、運良く命拾いしても当面好き勝手することは許されないだろう。
こうしている時点で、すでに予定出発時刻を二十分過ぎているので、手段を選んでなどいられない絶体絶命のオレは、文明の利器に頼るべくスマホで目的地までどうやって行くのか血眼になって探した。
結論、このクソがつくほどのド田舎にはバスすらも運行しておらず、唯一の手段は電車で、目的地のすぐそばに最寄り駅があることも分かった。
かつて六本木のカリスマと呼ばれ、今では日本最大の犯罪組織「梵天」の幹部である灰谷竜胆ことこのオレが、電車に乗るなんてことはまずない。
いつか観た東京のどこかの駅に密着したテレビ番組で、何の感情も持たず乗客を押し込めるだけ押し込んでいる駅員と、押し合いへし合いで我先に電車に乗り込もうとする乗客の映像がフラッシュバックしたオレは、「あんな野蛮な乗り物に乗るのか?」と想像し、「うげえ」と拒絶反応が起きたが、今の状況で四の五の言ってなどいられない。
手段が一択だと分かった時点でオレは家を出て、最寄りの駅へと向かった。
東京ダンジョンと称されるほど複雑で難解な地下鉄と格闘しながら、やっとの思いで都内から出ることが出来て、唯一そのド田舎まで走る廃線寸前としか思えないオンボロの単線電車に乗り込んだ。
ここに辿り着くまでにもホームを間違えることは朝飯前で、上り下りの意味が分からず取り敢えず乗ると逆方向へ行っていたり、乗り換える予定の電車を間違えて戻る羽目になったり、目的地に着く頃にはイケてるスーツに身を包みイケイケだったはずのオレが、どことなく疲労感と悲壮感を漂わせ、一気に老け込んだズタボロな仕上がりに生まれ変わっていた。
結局、色々なミスが重なったこともあり、予定時刻を大幅に過ぎていたため、きっと先方から梵天幹部共に連絡がいっていることは間違いないし、説教もスクラップも免れられないだろう。
「東京に帰ったら絶対ェ、運転手も部下も全員吊し上げてオレと同じくらいに恥をかかせてから一番泣き喚く方法でコロす」と怒りでドカドカと大股で改札に向かって歩いていると、
「ご乗車ありがとうございました。どうぞお気をつけて。良い一日を!」
と声がした。
この駅は都内のようなICカードをかざして決済する自動改札機がなく、まさかの駅員が改札鋏と呼ばれる切符を切るためだけのハサミで一枚一枚厚紙で作られた硬券と呼ばれる乗車券を切っていく、昔の映画でしか観たことのない光景がそこにはあった。
さらに駅舎もかなり年季の入った代物で、風が吹けば今にも吹き飛んでいってしまいそうな程にオンボロだった。
オレの硬券を切った駅員は、ボサっとした黒髪の天パでいかにも冴えない外見から「年齢=彼女いない歴」の童貞丸出し野郎だった。
まぁ、都内にいたらオレの視界に入ることすら許されない塵以下の人種だということはまず明らかだった。
こんな最低最悪な一日なんて滅多にあるものじゃない。
ここでオレの今まで遭った悲劇を思い出して欲しい。
今日のオレは朝から散々な目にあって、目に映るもの全てに殺意が湧くほどまでにキレていた。
コイツの言う「良い一日を!」は乗車券を切ったヤツ全員にもれなくかけているであろう定型文丸出しフレーズだ。
──── ただ、オレの疲れてささくれ立った心には、そんな定型文でさえ十分に染み入る効果があった。
その効果は、オレが思っていた以上の効き目を発揮したらしく、その一言でなんとオレは恋に落ちていた。
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この如何にも童貞丸出しの冴えない天パ野郎の名前は花垣といった。
なぜ名前を知っているかというと、制服のポケットに名札がついていたのを確認したからだ。
日本最大の犯罪組織の幹部に席を置くオレが本気を出せば、花垣の地球の裏側にいる遠い親戚の存在でさえ探し出せるだろう。
でもオレは、あの組織に花垣の存在を知られてしまうことで生まれるリスクを考えると、そんなことしたくはなかった。
だからオレが花垣について知っていることと言えば、黒髪天パでよくよく見ると目が綺麗なヤツだと言うことと、仕事は駅員をしているということくらいだった。
今までのオレは、金と権力に物を言わせて、ある程度見た目が良くて立場を弁えた後腐れのない女を見つけては、金と引き換えに一夜だけの関係を得ていた。
花垣に抱くこの感情はきっと世間で言うところの”恋”と呼ばれるもので、責任や他人に振り回されることが大嫌いなオレとは一生縁のないものだと思っていた。
おたふく風邪や麻疹といった病気は子どもうちにかかっておいた方が大人になってかかるより軽症で済むというが、並列して「恋」も表記すべきだとオレは思う。
なぜならこの歳で初めての恋を経験したオレは、絶賛ポンコツ状態に成り下がっているからだ。
ノリが良くて、軽口を叩くことは朝飯前のオレが花垣に声をかけることはおろか、目を見ることすらも出来ず、何をしていても四六時中花垣のことを思っては一目会いたくて仕方がない「重度の恋煩い」に罹っていた。
ネットで調べたところ、花垣の働く鉄道会社はオレの読み通り、廃線間近の尻に火のついた超貧乏会社で、利用者数を少しでも増やそうとグッズを作ったり、ちょっとした子ども向けのイベントを行ったりとかなり足掻いていた。
その一環で記念定期券なるものを毎月決まった一日にだけ各駅で販売しており、その定期券は一般の定期券とは違って、一枚一枚が手作業で電車に因んだイラストが添えてあると知ったオレは早速、記念定期券を購入することにした。
購入した記念定期券には、下手くそな紫色の花と電車が描かれていて、センスのかけらもない、場合によっては子どもの描く落書きよりも出来の悪いこの絵を、もしかすると花垣が描いているかもしれないと想像するだけで、オレにとってはどこぞの名画よりも輝かしく胸躍らせる価値が十分にあった。
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空き時間や休日を利用して花垣に会いに行くうちに、花垣は木曜日から土曜日の固定シフトだということが分かり、その曜日になるといそいそと電車に乗って花垣の元へ通うことがオレの日課になっていた。
「二度と電車になんか乗るか!」と息巻いていたが、今では目を瞑ってでも花垣のいる駅まで行ける自信があるほどに電車に乗っていた。
そして今日は木曜日、今日も花垣に会いに行くために朝から出かける準備をしていると、珍しく朝の苦手な兄貴が既にリビングのソファーに座っていた。
「買い物にでも行かねぇ?」と兄貴から誘われたが、オレには今日も花垣に会うという大事な大事なミッションがあるため「用事あるから」と断った。
「会う」とひとくちに言っても、オレが一方的に花垣の姿を拝みに片道一時間半かけて行っているだけで、実際は声をかけれた試しもないので、花垣の記憶の中にオレという存在は一ミクロンも存在しないだろう。
もしかすると「クラゲ頭のイカしたイケメンお兄さん」くらいには認知されているかもしれないが。
こんな冴えない童貞に、オレが手こずっていると普段のオレの言動を知る人間が聞いたら、泡吹いてぶっ倒れるか、冗談も大概にしろとキレられるかの二択だろう。
オレと花垣との感情の温度差を想像するだけで、その現実を受け入れることは辛いし、しんどい思いをするくらいならもう辞めて逃げてしまいたいと思うのに、四六時中考えていることは花垣のことで、「一目会いたい」という衝動が日が経つごとに飢えた猛獣のように貪欲さを増すばかりだった。
そして今日も花垣を一目見ようとオレは電車に乗り込んだ。
ただ、今日は最低最悪なクソみたいな日だった。
なぜなら大事にしてた定期券がどれだけ探しても見つからないからだ。
基本自宅だと、勘が鋭い兄貴に見られたら色々とめんどくさいことになるため出したことはないし、普段は財布の決まった場所に入れて花垣に会いに行く時にしかそこを触ることはないので、どこで失くしたのか全く検討もつかなかった。
「ほんとオレの人生ってツイてねぇよな…」と、一気にテンションがガタ落ちた中、オレは久しぶりに硬券を買った。
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花垣のいる駅に着いたオレは、花垣に硬券を切ってもらうべく、最後尾に並んだ。
なぜ最後尾かというと、出来るだけ長く花垣のことを拝んでいられるからだ。
アラサーのいい歳した男がこんな女々しいことをするなんて、我ながら気持ち悪いとは思うが、そんなことに構っていられないくらいにオレは花垣に夢中で、自分ではどうしようもないところまできていた。
いよいよオレの番になり、硬券を切られて「ご乗車ありがとうございました。どうぞお気をつけて。良い一日を!」といつもの定型文を言われるのかと待っていた。
──── しかし、今日は違ったのだ。
花垣はオレの顔を見るなり、
「あ!」
と声をあげ、
「少々お待ち下さい!!」
と焦った様子で奥の駅員室に消えていった。
数分してから戻ってきた花垣に
「これ、落とされましたよね?」
と手渡されたそれは、先程まで失くしたと意気消沈していたオレの名前が印字されている記念定期券だった。
「乗車駅の改札口に落ちていたみたいです。この定期券に載っているお名前を見て、きっとお客様のことだと思ったんです。定期券をご購入されるお客様自体珍しい上に、この辺りでは見かけない垢抜けた装いをされているので覚えていたんです。いつもご利用頂きありがとうございます!」
確か一番最後に花垣に会いに行ったのは三日前で帰り道、兄貴から怒涛の着信が入っていることに気が付いたオレは、「絶対に今出ねぇとオレの命はねぇなこれ」と本能的に察知し、かかってきた兄貴からの電話に焦って出た時のことを思い出した。
考えられるのはその時、気が動転して定期券を落としたという一択だ。
「てかオレが定期券落としたのって、兄貴のせいじゃね?」とカッチーンときたが、まぁ見つかったし内容はともかく花垣とこうして話が出来たため、百歩譲って良しとした。
花垣曰く、落し物の周知は各駅の駅員全員に連絡されるらしく、画像でオレの定期券を見た花垣はピン!ときて、またこの駅に来るであろうオレのことを待っていたそうだ。
「当鉄道は利用者の激減に伴って、少しでもご利用頂く機会を増やそうと電車に纏わるイラストを添えた記念定期券を販売しているんです。ただ、プロの方に依頼するお金を持ち合わせていないため、実は駅員が一つ一つ手作業で作っておりまして…。今月の記念定期券は自分が担当なんです。ただ絵心は全くなくて、学生時代も美術の評価は二と一を彷徨うような始末で…」
花垣の言葉を聞いたオレの心臓は、ドクンッと大きな音を立てた。
「なので、またこうしてご乗車頂けて良かったです」
そういった花垣は、「念の為、ご本人様確認してもいいですか?」と言い、オレは免許証を出した。
すると花垣は免許証を見て「あっ!」と言い、「ちょっと待ってて下さいね!」と徐にポケットを探り始めた。
グシャグシャになったメモや飴の袋、何度か洗濯機で回した形跡のあるレシートなどが出てきてだらしない性格が垣間見えたところで、
「あった!!」
といきなり声をあげたかと思えば、
「お誕生日おめでとうございます!!!」
と言って、この電車のロゴがデカデカとプリントされたメモ帳と、すぐにインクが切れそうないかにも安物のボールペンのセットを手渡された。
花垣からの言葉に、「あぁオレ、今日誕生日だったのか」と自分が今日誕生日だったことをすっかり忘れていたことに気が付いた。
毎年オレの誕生日は、兄貴と買い物に行ってプレゼントを買って貰うのがパターンになっている。
朝に弱い兄貴が、仕事でもないのにオレよりも早く起きて買い物に誘ってきた理由が、今分かった。
「その文房具セット、いつもはお子さんにお渡しするんです。こんな田舎で走る当社をご存知でよくご利用頂いているということは…乗り鉄さんとかですか?」
花垣目的以外で電車に乗ることはないし、電車には微塵も興味はない。
オレが子どもの時にこの文房具セットを貰ったとしてもきっと喜ばないだろうし、秒でゴミ箱行きだろう。
ただ、花垣がくれたモノとなればこのメモ帳とボールペンはオレにとってただの景品以上の大切な意味を持つ。
「ありがとうな、…大事にする」
「いえいえ、子ども騙しのただの景品しかなくてすみません。」
「…一つ聞いていいか?」
「はい!なんでもどうぞ」
「この定期券に描いた花って何の花なんだ?」
そう尋ねたオレの心臓は、もしかすると爆発するんじゃないかと思うほど早鐘を打っていた。
「あー!自分の絵だと伝わりづらいと思うんですけど、この定期券は一ヶ月分のみでしか販売していないので、お客様がどの月に買われたのか確認するためにもその月の花を描くように自分はしているんです。
その花は”リンドウ”という花で、今の時期山辺に多く咲く花なんです。ここら一帯は山が多いので身近な花でして」
そうじゃないかと、そうだといいなと、この定期券を買った時からオレは何度も思い描いていた。
この下手くそな花が、オレの名を冠する花であることを。
数多くある秋の草花の中で、”リンドウ”を選んだ花垣に、「もしかすると」を期待してしまうほどに、この時のオレは舞い上がった。
名は体を表すという言葉がある。
オレの兄貴は、「蘭」という名にふさわしく華やかで、誰もが羨む魅力的な人間である。
オレはそんな「灰谷蘭の弟」としてずっと生きてきた。
兄貴という存在が今のオレを形作り、二人でいるからこそオレの人生は楽しいんだと胸を張って言える。
だから生まれ変わってもまた、兄貴と兄弟でいる道をオレはきっと選ぶだろう。
ただ、兄貴の存在は俺にとって時に痛みを覚えるほどに眩しく、「オレは一体何者で、傍から見れば兄貴のおまけであるオレの人生って意味を持つものなのか」とふと思うことがある。
花垣は、あくまで花の”リンドウ”の話をしていただけで、それ以上でも以下でもないことは分かっている。
それでも「灰谷蘭の弟」としてのオレではなく、「灰谷竜胆」としてのオレを花垣に肯定して貰えた気がして、オレは初めて自分の名前が”竜胆”で良かったと思えた。
「長い時間、お引き留めして申し訳ありません。では良…」
花垣の口からいつもの定型文が出る前にオレは一世一代の行動に出た。
「いつも「良い一日を」って言ってるけど、オレにとっての「良い一日」がオマエにかかってるって言ったら…オマエはどうする…?」
この時のオレは、尋常じゃないほどの汗をかいており、その汗の量から自分がどれだけたったこの一文を絞り出すのに緊張しているのか、嫌でも思い知った。
「お客様の一日が自分にかかっているんですか…?」
オレの言葉の意味を全く理解出来ていないといった表情の花垣に、
「オマエが…オレの誕生日を最高の一日にしてくんねぇか?って…言って……んだ…よ」
言葉を紡いでいくに連れて、花垣からの反応がどんどん怖くなり、自信のなさの表れから声が尻窄んでいった。
マジでダサ過ぎて、誰でもいいから今すぐオレをこの世から消してくれと内心願った。
まぁ正直、花垣とこうして話せているだけでもオレにとってはとてつもなく「良い一日」なのだが、最後の最後でガマンが苦手で欲張りなオレは、もっと花垣のことが欲しくなったんだ。
⚫⚫⚫⚫
念願の花垣と一緒に食事に行って猛アピールするも、「鉄道のことが分かる友達が出来て嬉しいです!」と友達の烙印を押され、負けじとあの手この手で落とそうとするも、激ニブ無意識人たらし製造機こと花垣武道には全く通じず、悪戦苦闘の末、やっとの思いで思いが通じて結ばれるのはまた別の話。