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    umi_scr

    @umi_scr

    どこにも行けなかったSS置き場 GKとMP100のみ(たぶん)

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    umi_scr

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    某バンドの有名曲を無理矢理芹霊変換したやつです。書いたのは2017年頃。歌詞の落とし込み方が強引すぎてボツにしたんですが、それは置いておいても、この関係性の芹霊がすごく好きです。霊幻さんが振り回されるやつ。
    ※霊幻さんの過去捏造注意

    #MP100
    #芹霊
    Serirei

    JAM 仕事を辞めた理由は、腐るほどあった。下戸なのを知っていながら浴びるほど飲まされたこと、クソ威張り散らした取引先に罵られながら笑って頭を下げたこと、ずっと付き合っていた彼女を抱けなくなったこと。
     そんなに性欲が強くない方だとは思っていたが、いざ勃たなくなったときの絶望はとてつもなかった。人生、終わった、と思った。駆け込んだ医者には「ストレス」ですね、と予想通りの診断をされ、副作用が怖すぎる薬を飲んでは見たもののまるで効かなくて、結局最低な別れ方をした。「ごめん、他に好きな人ができた」と嘘をついての。
     そんなとき、同期の人間が不幸な事故にあったのが決定的なトリガーになった。俺が行くはずの出張は訳あってそいつが行くことになり、そしてその飛行機が、墜ちた。
     そのとき「いやあ、霊幻くんラッキーだったねえ」と嬉しそうに口にした上司を許せなかった。それが酒の席だとしてもだ。俺とその同期は仲が悪くて、そこを踏まえてついそんなことを言っちまったんだろう。それにしても。
     俺は人間が嫌いになった。人間だけじゃない、全て何もかもが。めのまえがさあっと暗くなり、次の瞬間俺の視界は全て一面の真っ赤な世界になった。
     血の雨が降った。現実じゃない、もちろん幻覚だ。だけどそれは俺の未来を暗示しているようにしか思えなくて、だからその前に会社を辞めた。
     ニートになってからは時間があまりすぎて、新聞や雑誌を隅から隅まで読んだ。怪しげな広告、そのなかでも極め付きのパワーストーンの紹介文を貪るように読んでいたとき、ふと俺は思ったのだ。
     人間なんて、どうしようもなく愚かだ。立派になろうとするから苦しむし、綻びが生じる。俺みたいな至極普通の人間だってそうなんだ、世の中にはこういうものにすがりたい人間はいくらだっているだろう。そう考えると、指は勝手に事務所設立の概要を検索していた。
     認可が下りるまでの条件を調べながら、俺はとてつもなくワクワクしていた。こういうのは出来る限りバカバカしいのがいい。俺は今まで使っていた名刺を見ながらまたひらめく。
     霊幻だから、霊…とかでいいんじゃね? 子供の頃から霊媒師みたいな名前だって言われ続けてたし。どうせ俺の人生これから自由なんだ。もういちいちケチをつける上司も些細なことで拗ねる彼女も、何もかもいないんだし。

    「霊幻さんもいろいろあったんですね……」
    「まあな」
     そして今に至る、と無理やりまとめた話を芹沢は神妙な顔して聞いた。俺は俺で、喋りすぎたな、と少し後悔してる。性的なこととか、飛行機が墜ちたこととか、とても朝食の話題にはふさわしくなかった。たとえ、ヒマに明かしての事務所でのゆっくりとした、ブレックファーストだとしてもだ。
     だけど喋りすぎてしまったきっかけははっきりしていた。芹沢がパンに塗った大量のジャムに、「おまえいつか糖尿になるぞ」と揶揄いながらも急に目眩を覚えたのだ。目眩を逃すように、俺は昔話を延々とした。
     あれ以来、赤い色に俺は弱くなってて、だから流血沙汰の事件とか来たら本格的に死ねると思う。パン一面にこってりと塗られたジャムですらダメなんだから。
    「なあ、それよりかそれ早く食って」
    「へ?」
    「その毒々しい色したパンだよ。つーか今度から俺、マーマレードにするわ」
    「はぁ……」
     意味を理解できない、という顔をしつつも芹沢は俺に従った。大きな口を開けて、一気にパンにかぶりつく。口元にべったりとついたジャムをぬぐいながら、また一口。全て口内に押し込まれてしまうと、俺の口から大きな大きな安堵のため息が漏れた。
    「俺もナイーブですけど、霊幻さんもそれなりですね」
    「まーな。いたわれよ、芹沢」
    「……はい。もし嫌なことがあったら、なんでも言ってください。俺が駆除しますから」
     真剣な眼差しで俺を見据え、芹沢は言った。決意はありがたかったが、それよりも口元にパンの切れ端がくっついてるのが気になってしまう。だめだ、真面目なシーンほどこういうのが気になるってのは俺の病気みたいなもんだ。
    「芹沢、ここ」
     指先で口の端を指し示し、つうっと顎を上げて指令する。しかし芹沢はキョトンとしたまま、まるで意味をわかってねえようだった。
    「おまえほんと察し悪いなあ」
     呆れながら、だけど可笑しくてつい笑ってしまうと、なぜだか芹沢はむっつりと押し黙った。すみません、俺頭悪くて、と小さな声で口にしながら、ずいっと顔が寄ってくる。俺が指差している口元をべとっと、舐め上げられる。
    「な、なんだよ。うわああああ!」
     舐めやがった! おまえばかか! 犬じゃねえんだから飼い主舐めるな!!! つうか頭おかしいだろ!!!
    「俺、また間違えましたか」
    「間違えすぎだっつーの」
     乾いた笑いが出る。すると何を思ったか、また芹沢は顔を寄せて来た。
    「な、なにしてるの芹沢くん……」
    「間違ってない気がします、霊幻さん笑ってるし」
     俺のこれは失笑ってやつだよほんと使えねえなうちの部下は! つうか近い、やめろ、これじゃスキンシップ通り越してキスだろ……。
     俺の予想を裏切ることなく、芹沢はむにっとくちびるを押し当てやがった。
    「な……んで」
    「霊幻さんのくちびる、すごく甘いです」
     なんども、なんども、くちびるが押し付けられる。俺が押し付けたリップクリームの匂いと、芹沢の雄臭い匂いに頭がくらくらする。いつの間にか角度を変えて顔を寄せられて、くちびるの密着度が高くなって来ていたが、俺は気づかないふりをした。
     なあ、これってどういう意味なの。慰めてくれてんの? やっさしいなあうちの部下は。ていうか芹沢克也って人間が優しいのか。
     だけどキスはちゃんと好きな子にしような? でないと相手を、傷つけちゃうんだぜ?
    「霊幻さん、泣いてる?」
    「うるっせえ……するんだったらちゃんとしろよ」
     肩が引き寄せられ、くちびるの角度がさらに変わる。わずかに開いた隙間からおずおずと舌先がノックして来たから、俺は観念してそれを舐め上げてやる。
    「霊幻さん、えっろ……」
    「仕掛けてきたのはおまえだろなに言ってんだてめー」
     芹沢のやりかたは慣れてないくせにばかに気持ちよかった。何度も何度も絡めて爽やかな朝にふさわしくない濃厚なキスをくりかえしてると、甘ったるいジャムが口移しにとろけていく。
     あっけなく消えていく味覚に、なんてことはなかったんだなと思う。
     俺は俺の呪縛から少しずつ解放されていくのを感じていた。
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    umi_scr

    DONE付き合って別れてまたすぐにくっつく芹霊のしょーもない話。
    性描写はないので年齢制限入れませんがわりに不穏です……。
    芹沢さんが女と付き合ったり倫理観がアレだったりするので何でも許せる方向けです。
    どうかご注意ください。

    バレンタインな話にするつもりがほぼ無関係などうしようもない話になりました。自分の性癖に忠実にごりごり書きました。こんなめでたい日にほんとすみません!
    別れても好きな人 何かの間違いで部下と付き合って別れて、もう半年になる。付き合った期間はもっと短く、たった四か月だった。けれど密度は数年にわたるお付き合いって程に濃ゆくて、しかしそれは別れたことの原因でもあった。

    「好きです……好き、みたいです……多分好きなんだと思うんです」
     始まりは飲みに行った帰り道だった。ずいぶん歯切れの悪い告白で、けれど「好き」という言葉を連呼しただけっていうのが実に芹沢らしいなと思いながら、俺はなぜかその告白を受け入れてしまったのだ。

    「ちょっと待て、あの夜は俺は酔っていたんだ……つうかお前酔って告白なんてベタなことやめろよ、ノーカンだからなノーカン」
    「霊幻さん往生際悪くないですか? 覚えていない、ってことはないんですよね? へにゃって笑って、『俺も好きだよ』って言ってくれたことを」
    6982

    umi_scr

    MOURNING支部にあげた「恋の話」(霊幻さんは芹沢と律どっちを選ぶのか?っていう話)
    プロット立てないで何も考えずに文章書いたらどうなるのか? っていう実験を芹沢一人称でやってみたら、導入で二万字行ったので驚愕したよね……
    このノリでやってたら永遠に終わらなかった。危なかった。

    勿体ないのでここに供養させてください。内容は支部に上げたものに近いので真新しいところは少ないです。導入なので中途半端に終わります!
    恋の話(リライト前) 影山君から家を出る、って聞いたとき俺は単純にすごいなあと思った。将来を定めた決然とした姿は、中学生当時の影山君とはまるで違っていた。あの頃から自分の考えをしっかり持った子供ではあったが、霊幻さんに選択肢をゆだねる頼りなさは年相応だった。いつの間にか成長していた姿を目の当たりにして、年月の重みをぐっと感じた。
    「芹沢さん、霊幻さんを頼みますね」
     はにかみながら俺にそう言った影山君もあの頃とはかけ離れて大人びていた。わかりました、と神妙に答えながら俺はふと霊幻さんのことを考えた。師匠と弟子、という単純な言葉では測れない絆みたいなものを日ごろから強く感じてはいるが、だとするとこの状況は彼にとってどうなのだろうか。まるで子供が巣立ったあとの母親のように、抜け殻になってしまうのではないだろうか? 俺だって影山君の姿に寂しさを感じなくはないのだから、霊幻さんならことさらだろう。
    21020

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