今日も明日もラウル・ローズバーグにとって、同じ日はない。
毎日が特別だ。
それに今は大切な友人も遊びに来ているから夜眠るのが残念で、朝目覚めるのが楽しい。
「うん。今日もいい朝だな」
まだ陽は昇りきっていないけど、空を見ればわかる。
今日はいい天気になるってことが。
トゥーレとピケも今日は静かな寝息を立てているシリルに寄り添うように眠っている。
昨日もかなり遅くまで禁書室で作業していたから少しでも寝かせてあげたほうがいい。
音を立てないよう細心の注意を払いながら、身支度を整えて部屋を出た。
清々しい風が頬を撫でる。
今日は鏡に映る自分を見て、ふと思い立って髪を縛ってみた。
だからいつもと顔に当たる空気も違って感じるのかも。
薔薇色の巻き毛と濃いグリーンの瞳は、いかにも茨の魔女である証って感じがする。
幼少期はとにかくそれが気掛かりだったけれど、今は違う。
麦わら帽子の下でラウルはにっかりと笑った。
「今日の朝ごはんは何にしようかな」
シリルは好き嫌いなく何でも食べてくれるし、誰かと一緒に食べるごはんはとても美味しい。
だからつい嬉しくなって野菜料理の説明を続けていたらシリルに「冷める前に食べろ!」と怒られた。
こんなふうにラウルに本音で話してくれる人は片手で数えるくらいしかいない。
シリルがあとどれだけこの屋敷にいるかは分からないけれど、また来たいと思ってもらう為には……
「やっぱり、大切なのはおもてなしだよな」
そうして、今日も山盛りの料理を前にシリルを困らせ、ほんのちょっぴり怒られるのを期待するラウルだった。