深淵吐息「まったく、恨めしいほど嫌な陽光だな」
燦々と輝く太陽と青空の下、不釣り合いな紫色のローブが人目を避けて動く。
〈星詠みの魔女〉メアリー・ハーヴェイにどうしてもと言われたのでしぶしぶ王都にきて、用事をちゃっちゃと済ませた帰り道。
もし、俺にほんの少しでも未来を見据える力があったのなら、今すぐ馬車に乗り込め! 振り返るな!
そう助言していただろう。
「お~い」
声が聞こえて振り返るのは当然の反射だ。けれど、何故振り返ったのだと言いたい。
「レイがいるって聞いて、走ってきたんだ」
レイを引き止めたのは、レイと対照的に青空の下が似合うラウル・ローズバーグである。
こいつと俺の関係は信じられないけれど、友達らしい。
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