いつか夢であたくしには婚約者がいる。
勉学だってあたくしには到底及ばないし、おまけにダンスも不得意で病弱だから運動神経も良くない。
何度目かの逢瀬でようやく顔を見て話せるようになったけど、それでも未だに口ごもったりよく噛む。
それにいつまで経っても縮こまってばっかりで背筋が伸びないから、隣に立ったら私の方が背が高く見えてしまう。
だからあたくしは踵の高い靴はしばらく履いてないのよ、気付いてらっしゃる?
夢見る乙女ではないけれど、彼はきっと白馬に乗ってあたくしを迎えに来ることもできやしない。
でもいいの。そんなこと期待してなんていないもの。
迎えなんていらない。
彼が来れないならあたくしが迎えにいけばいいだけ。
他人から見れば分不相応だと言われる第二王子。
そんなことはあたくしも知っている。
彼は王族には相応しくない。
でも相応しくなくたって構わない。
彼がもし一般的に皆が認める王子様だったらきっとあたくしは恋なんてしてなかった。
ブリジットが恋をした王子様は、自分のことよりも他人を思いやれるとびきり優しい人で、他の誰とも違う。
あたくしだけがそれを知っていればいい。
だから、彼はこのままでいい。
このままで居てほしい。
誰かが彼を至らないと言うのなら、あたくしがそのすべてを補えばいい。
貴方は気弱過ぎると言われるけど、あたくしは気丈すぎて可愛げないと言われるわ。
だからね、きっとあたくし達ってお似合いよ。