まるくて白くてもっちもち「よいしょ、よいしょ」
「うんしょ、うんしょ」
小さな掌で、二人がかりで玉を転がす。正確には玉ではなく、丸めた団子なのだが。
「シリル、もっといっぱい作る」
「そんなに作っても食べきれないだろう」
「そんなことないもん」
「ないもん」
「二人とも、張り切ってるなぁ~」
なぜわざわざ休みの日にこのようなことをしているのか、それはラウルが持たせた手土産にあった。
それはいつも通り、ローズバーグ家に立ち寄った帰りのこと。
「そうだ、シリル。これ持ってけよ」
「? なんだこれは」
「もうすぐお月見だろ? 試しに作ってみたら止まらなくてさ」
まぁせっかくもらったものを無下にするような薄情者ではないシリルは、それをきちんと持ち帰った。
「「おかえり」」
二つの声がシリルを出迎えた。小さな鼬はくるくるとシリルの行く手を阻む。
もう慣れたこととはいえ、シリルはほんの少し、口をむずむずさせた。
それを隠すように、そして器用に二匹を踏みつけないように、シリルはラウルの手土産を置いて上着を脱ぐ。
「シリル、これなに?」
「雪みたい。真っ白だね」
彼らの興味はすぐさま持ち帰った手土産に移り、もう開けている。
「それは、団子というものだ」
「食べてもいい?」
「いや待て、お前たちが食べるには大きすぎる」
一つの団子をナイフで四等分に切り分けて渡すと、仲良く揃って勢いよく齧り付く。
彼らの掌にはそのくらいがちょうど良いと思ったが、それでも大きかったようだ。
両手で頬を押さえて、一生懸命噛んでいる。
「美味いか?」
「雪みたいにほろほろじゃないね」
「同じ白なのにもちもちしてるね」
よほど気に入ったようで、切り分けた先から手に取って食べていく。
そしてしまいにはシリルがシャワーを浴びている間にも食べようとしたようで、一つの団子を両方から引っ張り合って二等分にして食べていた。
「食べすぎはだめだ」
そういって取り上げた団子は、一日二個と制限が付いた。
だが、もらった団子は有限ではない。
なくなってしまった空箱を前に二匹は悲しそうに項垂れた。
それは本当に悲しそうに。
でもすぐにひらめいた。
「また作ってもらえばいい!」
「もっとたくさん、たっくさん」
「おいおい、落ち着け」
「ラウルのところ早く行こ」
「行こ行こ」
そして、まぁそこからの展開は想像の通りだ。
ラウルは二つ返事でOKを出し、
「でも、みんなで作ったほうがもっと美味しいぞ」
その言葉に習い、こうしてシリルは巻き込まれる形で団子作りをすることになった。
「はぁ~なぜこんなことを……」
「シリル、ため息を吐くと幸せが逃げるって言うぞ」
「なんだそれは、聞いたことないぞ」
「ほら、早く吸い込めって」
まったく意味が分からないのだが、言われた通り、律儀に息を吸い込み、付き合わされてせっせと団子を丸めるシリルであった。