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    chunpepyun

    @chunpepyun

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    chunpepyun

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    ヘルメスの手の話。カプ要素薄いけどややヘル光♀。

    優しい手「あなたの手、好きだなぁ」

     唐突にそんな事を言うものだから、キョトンと目を見開いて思わず自分の掌を見つめる。

    「この手が?」

     聞き返せばまじまじと手を観察するように見られる。乾燥していて、ささくれもあって、到底綺麗とは言えない。植物にも触れるものだから、爪の端に土だってついている。何をもって好きだなんて言ってくれたのか、全く思い当たる部分がなかった。

    「大きくて優しそうだなってメーティオンを撫でている時、思った。温かそうな手をしている」

     彼女の白い指が自分の濃い色をした指先に触れる。小さな手だった。
     脆いエーテルの、少しでも目を離したならばすぐにほどけてしまいそうな、何処かへいなくなりそうな生き物の持つ視点はとても斬新で面白くて、新しい風が吹いたかのようだった。
     当たり前に存在してきたものすらも彼女の視点を教えて貰えば真新しい側面を知り、探求と発見に満ちていた。

    「優しい手だね」

     そう言ってくれたのに、自分は最後、手を伸ばす事もしなかったのだ。
     そうして彼女が伸ばしたのは、自分ではない。それなのにあの男は彼女の手を取ることはなく、いっそ満足げな表情で見送るのだ。

    『あなたの手、好きだなぁ』

     手離したのは自分だ。
     それでも、この痛みだけは、せめても永劫に。
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    Replies from the creator

    chunpepyun

    MOURNING87ID光死亡IF(支部に上げてるやつ)の続き
    めちゃくちゃ短い
    使い魔の遺骸を引き取りに来たアゼとヘル
    ヘル光のつもり
    プロットレベルよ

    「やぁ、先日ぶりだね、ヘルメス」

     強く真っ直ぐに、焼き尽くしそうな瞳だといつも思う。

    「忙しい所すまない、アゼム」
    「いや、いいんだ。早速だが私の使い魔の元へ案内してくれるだろうか」

     ヒュペルボレア造物院内で見つかった使い魔の遺体。その使い魔はアゼムの使い魔を名乗っていたが為に他の魔法生物達と同じ様に土塊に還す事もできず本人を呼ぶ事となった。

    「そう、この子が、」

     小さな獣人型の女の子。その肉はもう固くなり色はない。

    「ありがとう。この子は私の方で引き取らせてもらう」
    「…本当に、すまない、誰も記憶がない為に詳細はわからないのだが、おそらくあの日の事故でその子は」

     エルピスの職員達が口々に語ってくれた使い魔。よく手伝い、聡明で、不思議な生き物。きっとあの日も共にいた。メーティオンとも、ヘルメスとも親しかった。それなのにその記憶は焼け爛れて、真っ白い光の中で、何も、何も思い出す事はできない。ただ心に残るのは痛みと後悔や苦しさだけで、その生き物を見る事すら苦しくなる程で。
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