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    monarda07

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    monarda07

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    魔法少年シリーズ最終回()にて出した「もしも」の話が実現した場合のクロスオーバーカップリング。
    (どっちが右か左か全然決められない)
    奥村(藤本)燐と藤丸立香の話。

    ##クロスオーバーカップリング

    出会いは奔星不良。一匹狼。乱暴者。
    それが藤本燐という少年に付けられたラベルである。
    別にそれでも構わない。なぜならそれらのラベルは今までの行いを端的に示している物であって、謂れのない流言飛語というわけではないのだから。
    東京からほど近い地方都市。中学からの持ち上がりが多い地元の高校に進学したがゆえ、中学時代に荒れていた彼を知る者は大勢いる。
    他校から進学した者であっても噂を聞いて「そうなんだ」と対して疑問にも思わず飲み込み、ろくに知ろうともしない内から遠巻きに眺めるだけだ。要は何がきっかけで爆発するのか分からない時限爆弾。対処方法は一つ、できるだけ関わりを持たない。そういう扱いなのである。
    不本意だと思えたら良いのだろうか。しかし残念ながら燐はそれで傷付くことができる段階はとうに超えてしまっていた。
    つまるところ、慣れた、というやつである。自分が遠巻きにされるなんて日常の一角だ。そういうものだと割り切り、せめて高校では一人静かに穏やかに暮らそうと思っていた矢先。

    「……いや、廊下で寝てんじゃねーよ!」

    燐が偶然目に入った光景に硬直した後、しばし時間を置いて思わず突っ込んでしまったのは無理もない話だろう。
    なぜか廊下、それもど真ん中で堂々と居眠りしているような奴を目撃して流せる方が稀である。

    放課後、なんとなく家に帰りたくなくて。しかし教室は既に出来上がったいくつかのグループがたむろしている最中。そこに留まるほどメンタルは強くない。終業と同時にさっさと教室を後にした燐だったが、しかし校外に出ればトラブルが向こうから勝手にやって来るのは学習済み。校内に留まって暇を潰す方が遥かにマシだ。さりとて部活に入るつもりもなく、おまけに図書室で勉強するような質でも無い。そうなれば持て余した時間をどう使うかいつも苦労する。
    今のうちにサボれる場所でも開拓するかと思い立ち、人気の無い特別教室がある棟に足が向かったのは自然な流れだったのだろう。
    その結果がこれである。うっかり事件の目撃者になってしまったのかと悲鳴を上げそうになったではないか。

    「…………ぐぅ」

    ピキッ、とこめかみの血管が盛り上がる気配。
    警察やら救急車やらという単語が脳内をグルグル回転して半ばパニックになりかけていたところ、当の本人は呑気な寝息を立てる始末。
    さすがにこれは怒っても許されるだろう。と、燐はスッと片足を上げて涅槃の真似事をしている少年の臀部辺りを蹴り上げた。

    「……起きろ、このクソバカ!」
    「ぎゃぁっ!?ナニゴト!?」

    加減はしていたのだが喧嘩慣れした燐の足から放たれた蹴りは想定以上の威力となったらしい。少なくとも熟睡していた少年が世界の終わりか何かかと慌てて目を覚ますくらいには。

    「ふざけた寝相しやがって!心臓止まるかと思ったじゃねえかよ!!クソが!!そのまま永遠に眠らせてやろうか!?」
    「なにそれ理不尽!ちょっと居眠りしただけじゃん!何も蹴ることはないだろ!?」
    「場所くらい考えてから寝落ちしろ!!どこだと思ってんだ!!」
    「え?学校」
    「うるせえよ!」
    「ちゃんと答えたのになんで!?」

    ぶんっと殴られそうになったのを避けながら、少年は慌てて燐から逃げようと立とうとした。それをねじ伏せるように馬乗りになって、再度殴ろうとする燐。

    「廊下で寝てんじゃねえよ、廊下で!死んでるのかと思ったじゃねえか、ビビらせんじゃねえよ!」
    「うるさいなぁ、眠気に勝てなかったんだよ!別に良いじゃん!」
    「よかねえよ!」
    「言いながら殴りかかろうとするのやめろ!」

    ネクタイの色は燐と同じ臙脂色。ということは同じ学年で同じ新入生だろう。だったら遠慮もしない。今までどこか心の中で澱んでいた鬱憤も一気に噴出した瞬間だった。何かのきっかけで容易く噴き出る程度には溜まっていたのだろう。
    理不尽への耐久とかままならない現状とか、そういう自分じゃどうしようもない事に対する不満への怒りが。

    「通行の邪魔したのなら謝るけどさあ!でも何も蹴ることはないでしょ!こういうときはちゃんと優しく起こすものなんだよ!!」
    「黙ってろよハゲ!」
    「ハゲじゃないもん!」
    「紛らわしいことやりやがってこの野郎!!」

    ところが燐の予想に反し、少年は欠片も臆さずに燐へ立ち向かう。燐に胸ぐらを掴まれたと察するやいなや自身も燐の胸ぐらに掴みかかってマウントを取ろうと互いに必死にもがく。

    「(なんだこいつ、全然押し切れねえ)」

    力ずくで抑え込もうとすれば逆にひっくりかえされそうになり、思いっきり引っ張られそうになったらこちらも足腰で踏ん張って勝負が付かない。どうやらこの少年、燐とほぼ同格の筋力の持ち主らしい。これでは決着が付かない。中学時代は喧嘩無敗を誇っていた燐が初めて焦った瞬間だったのだろう。

    「蹴って良いのは蹴られる覚悟がある奴だけなんだぞ !お返しだ!」
    「がっ……!?やったなこの野郎!歯ァ食い縛れ!」
    「望むところだ!」

    などと考え事をしたのがいけなかった。押し問答の最中だったため大した威力は無かったが、それでも無防備な腹への一撃は堪える。カッと頭に血が登って喧嘩開始。相手もやる気満々で拳を握り締めて顔を上げる。
    はた、と。世界から音が消えた。

    顔を上げた少年の前髪が払われ、現れた青い瞳が──まるで遥か彼方まで続く自由な青い空のようだったから。

    その日、彼は運命に出会った。
    正確にはこのときはまだ運命だとも思っていない。後々振り返って、その時のことを「奔星にぶつかって気絶した」と思っただけなのだが。
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    monarda07

    MAIKINGぐだキャストリア大正パロの出会い編前編
    契約結婚2(前編)────二年前、倫敦。


    (わあ……綺麗だなぁ……)

    高い塀で囲まれた大きな建物の中で、煌びやかな光がくるくると踊っている。それを遠目に見ながら、少女は──アルトリアは目を輝かせた。
    それは本当に偶然だった。今日の寝床を探すために倫敦の暗い影を歩いていたら、たまたま迷い込んでしまった人間の縄張り。聞きなれた言葉の中でも目立つ、聞きなれない独特な言葉。島国の宿命としていまだ濃い神秘が飛び交う大英帝国付近の国の言葉ではない。意味が分からないが、辛うじて言語だとわかる声が飛び交っているのに気付いて「そういえば」と思い出した。
    アルトリアが迷い込んだのは、遥か東の果てにある「二ホン」とかいう小国の「タイシカン」とやらだ。ほんの数十年前まで外国との親交をほとんど絶っていたからか、神秘がいまだに色濃く残っているらしいその国は。アルトリアたちのような人ならざる者──”隣人”にとって、とても居心地の良い場所に違いないだろう。あまりにも遠すぎるため、容易に移住できないのがなんとも残念だね、などと。彼女を遠巻きにしながら、これみよがしに仲間と楽しくおしゃべりしていた妖精たちの会話を思い出す。
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