果実と駆け引き目の前には、山盛りの果実が乗せられたボウルが一つ。
「……えっと、なにこれ?」
「おやおや☆ あなた、サクランボもわからないので?」
「いや、それは判るんだけどさ……なに? 急に呼び出したと思って来てみたら……」
呆れたようにジト目になってメフィストを見る燐。ボウルの中にこれでもかと詰め込まれたサクランボとこの後見人との関連性が判らずに困惑していたのだ。確かにそろそろシーズンだが、この悪魔がまさか自慢のためにわざわざ呼ぶはずない。いや、あるかもと思ってしまった。
艶を纏った瑞々しい果実。つるりと舌触りが良さそうだ。見ただけでも果汁をたっぷり身の内に抱えていそうで、かなりの品だということは判る。
「こちらは山形県産のサクランボです。大変高品質な部分ばかりを集めた、大変高価な品です」
3359