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    monarda07

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    monarda07

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    青エク×fgoクロスオーバーその④
    この話、実はぐだ男だと書けない内容だったんだよね……

    イミテーション・パンドラピトス④【第三幕】
    何がどうなっているのか、そしてこの女性はいったい魔王と何の関係があるのか。疑問は尽きないが、長居するのはよくない。先ほど撤退した騎士團の團員が、援軍を連れて戻ってきたようだ。

    茫然自失となった女性の手を引いて、立香は走る。
    そして町外れの廃屋までやって来て、そこでようやく一息吐いた二人は互いの素性を語り合った。
    立香が助けた女性は朴朔子と名乗り、今までの経緯と騎士團の実情を事細かに話す。立香も自身について話し、あまり理解していないながらも朴は立香を信じて全てを話してくれた。

    曰く、今の正十字騎士團はおかしい。
    未成年の強制徴用、團員に対する過剰なまでの監視。そして気が付いたら徹底した管理社会となっていたこの国の現状。誰もそれに異を唱えないまま、騎士團を礼賛する空気一色に染まって行く異常な社会。
    なにより朴はある時見てしまったのだ。騎士團が寸分違わず同じ顔をした“人間”の死体を何体も“廃棄”している瞬間を。

    そこでふと疑問に思った立香は朴に聞いた。

    「今はってことは、昔は違ったの?」

    朴は2年前にほんの2ヶ月ほど祓魔塾という祓魔師養成塾にいただけだったが、それでも今の騎士團は明らかにおかしいのだと涙ながらに口にする。悪魔が見えない世界だったときは、騎士團が政治的な介入をすることはありえない行為だった。彼らはあくまで防人としての領分を守り、日陰の存在であることを遵守していたのだと。

    それが劇的に変化してしまったのは2年前。魔神サタンが復活し、騎士團が多数の犠牲を出しながらも封じることに成功した後からだと言う。
    覚えた違和感を口にすることもできず、ただただ精神を削られ続ける毎日。番号で呼ばれ、人間としての尊厳を奪い取られて道具のように扱われる日々。
    味方ひとりいない過酷な状況下にすっかり参っていた朴は、とうとう声を上げて泣き出してしまった。
    肩を震わせて踞る彼女を慰めながら、立香はひとり静かにこれからのことを考える。

    ……とにかくまずは、朴を匿える安全な拠点を手に入れないといけない。
    そのための算段を立て始めた、その瞬間だった。
    コロンと足元に落ちた空き缶を見て、それがフラッシュバンだと気付いたときにはもう遅い。
    凄まじい光と音で視界を阻まれ、あっという間に拘束された二人は、そのまま騎士團の地下監禁塔に監禁されることとなった。
    なんとか脱出しようにも、両手は魔封枷(マジックキャンセラー)で拘束されていて簡易召喚ができない。カルデアからの支援も望めない中、立香は少しでも朴を励まそうと話を続ける。
    だが朴は意外にも冷静で、今はむしろあの魔王の方が気になるらしい。

    「奥村くんは、あんなこと絶対にしない人だった。とても優しくて、友達思いで、いつだって明るく笑っている……本当に……どこにでもいるような、普通の男の子だったもの」

    ……その一言は。思いの外、立香の胸に刺さったらしい。
    だが朴のおかげで、立香は自分がやるべきことを定められた。ならば後は、それに向かって一直線に走るだけ。なに、いつものことだ。
    だからさっさと、ここから脱出せねば。と、スパルタクス式縄抜け術を行使しようと両手に力を込めた、そのとき。

    「やれやれ……道を歩いていただけで厄介事に巻き込まれる所は、男性でも女性でも変わらないのですねぇ。巻き込まれ体質は“藤丸立香”という存在の宿命なのでしょうか?」

    突如聞こえた第三者、それも男性の声。
    ひゅっと変な声が喉から絞り出され、心臓が縮みあがった。今まさに脱出しようとしたところだったのだ。まさか、悟られたのかと臨戦態勢に入るのも無理はない。
    だが警戒したのはほんの僅かな間だけ。壁に開いた隙間からトコトコと、ピンクに白い水玉模様のスカーフを巻いた白いカラスが現れる。ご丁寧に白いシルクハットまで被ったそのカラスを除いて、近くには誰もいない。

    「あ、どうも☆ はじめましてカルデアのマスター。遠き果ての銀河で輝く、新星の貴女」

    カラスの口から男性の声で、妙に流暢な日本語が出てきたことで肩の力が抜けた。敵意も悪意も感じられない、少し間延びした単調な声。信じられないが、先ほどの声の主はこのカラスらしい。

    「え、あの……あなたは?」
    「私ですか? 私はメフィ──」

    得意気に胸を張りながら自己紹介をしようとして、カラスの動きが止まる。

    「……いえ、これだとややこしいですね。ではヨハ……も、止めておきましょう。余計にややこしくなる」
    「?」
    「私はただのトリックスター。アナタの人生に現れた一筋の流星。いわゆるお助けキャラというヤツです。まあ今は“ロキ”とでも名乗っておきましょう☆」

    ドゥムジを彷彿とさせる軽快な語り口のカラスは、自らを“ロキ”と名乗る。
    ロキ、その名は北欧神話に度々登場する神の名前だ。そして北欧神話と言えば、今までカルデアを何度も助けてきたオーディンが思い浮かぶ。それに神話上、ロキはそのオーディンと義兄弟の関係にある神だ。
    まさか今回もオーディン絡みなのだろうか?
    そう思った立香は、素朴な疑問をぶつけた。

    「ロキ……って、北欧神話の? もしかしたら、オーディンの差し金だったりします?」
    「しまった、関係者がいたか……」
    「え?」
    「いえ、なんでも☆」

    ……どうやらオーディンは特に関係ないらしい。そういえば、ロキと名乗る前に何度か違う名前を出そうとしていたので、諸事情により真名を名乗れないのだろうと結論付けた。

    「では時間も無いのでさっそく本題に。カルデアのマスター、アナタをこの世界から救出するための手筈を教えましょう」

    ロキ曰く、現在立香がいる世界はプロテクトがかかっているせいで、外部からの干渉は遮断されているそうだ。とっとと立香をこの“夢”から脱出させたいのは山々だが、まずはこのプロテクトをどうにかしないといけないと言われた。

    「……でも、どうやって?」
    「何てことはありません。この世界にかけられたプロテクトは、ある存在と繋がっているので……」

    ロキが何か言いかけたそのとき。監禁塔の入口がざわめきだした。
    何事か、と思っていたら、立香たちが監禁されていた部屋のドアが開けられる。騎士團の制服に身を包んだ数名の祓魔師が、立香を外に連れていく。
    せめて朴も一緒に、と言う暇もなく立香は連行されて行った。ちなみにロキは、部屋のドアが開けられた時点で立香の肩に乗り、何事も無かったように澄まし顔をしている。あまりにも堂々としているため、誰も何も言わなかった。
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    monarda07

    MAIKINGぐだキャストリア大正パロの出会い編前編
    契約結婚2(前編)────二年前、倫敦。


    (わあ……綺麗だなぁ……)

    高い塀で囲まれた大きな建物の中で、煌びやかな光がくるくると踊っている。それを遠目に見ながら、少女は──アルトリアは目を輝かせた。
    それは本当に偶然だった。今日の寝床を探すために倫敦の暗い影を歩いていたら、たまたま迷い込んでしまった人間の縄張り。聞きなれた言葉の中でも目立つ、聞きなれない独特な言葉。島国の宿命としていまだ濃い神秘が飛び交う大英帝国付近の国の言葉ではない。意味が分からないが、辛うじて言語だとわかる声が飛び交っているのに気付いて「そういえば」と思い出した。
    アルトリアが迷い込んだのは、遥か東の果てにある「二ホン」とかいう小国の「タイシカン」とやらだ。ほんの数十年前まで外国との親交をほとんど絶っていたからか、神秘がいまだに色濃く残っているらしいその国は。アルトリアたちのような人ならざる者──”隣人”にとって、とても居心地の良い場所に違いないだろう。あまりにも遠すぎるため、容易に移住できないのがなんとも残念だね、などと。彼女を遠巻きにしながら、これみよがしに仲間と楽しくおしゃべりしていた妖精たちの会話を思い出す。
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