ただしい休日 ゴールデンウィークなんて、所詮はただの連休だ、と数年前までずっとそう思っていた。シルバーウィークもそうだし、年末年始もそうだ。帰るべき実家だとか、サービスすべき家族だとか。そういった繋がりとずっと無縁で生きてきた。羨ましいとか寂しいとか、そういう感情すらも湧かなくなってしばらくが経った頃、どういうわけだか「ただの連休」を共に過ごす相手ができた。
恋人というやつだ。俺と同じく、暦上で赤く色づいた日々をただの休みの連続としてしかとらえていなかったのだろうその男は、ひどく老成していて、超越しているように思えた。
「家族なんて煩わしいでしょう。ひとりきりは楽で、いいです」
そう、あっけらかんと言い放つような男だった。俺よりよほど人間というものに冷めていて、人生というものを投げているように見えた、年下の男──尾形は、いざ付き合ってみれば、案外と普通の男だった。
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