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    あさい(ぼらけLABO)

    @AsaiKmt

    成人済・腐/邪まな目で見て気ままに文字を書きます。

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    POIPOI 6

    現パロ尾月:ただれた連休が似合いすぎるふたりの話。

    ただしい休日 ゴールデンウィークなんて、所詮はただの連休だ、と数年前までずっとそう思っていた。シルバーウィークもそうだし、年末年始もそうだ。帰るべき実家だとか、サービスすべき家族だとか。そういった繋がりとずっと無縁で生きてきた。羨ましいとか寂しいとか、そういう感情すらも湧かなくなってしばらくが経った頃、どういうわけだか「ただの連休」を共に過ごす相手ができた。
     恋人というやつだ。俺と同じく、暦上で赤く色づいた日々をただの休みの連続としてしかとらえていなかったのだろうその男は、ひどく老成していて、超越しているように思えた。
    「家族なんて煩わしいでしょう。ひとりきりは楽で、いいです」
     そう、あっけらかんと言い放つような男だった。俺よりよほど人間というものに冷めていて、人生というものを投げているように見えた、年下の男──尾形は、いざ付き合ってみれば、案外と普通の男だった。
     年相応に子どもっぽくてわがままだったし、わりと嫉妬深くもあった。ひとりが楽だと言ったその口で、ひとりは嫌だと俺に縋った。ふたりでいたいと臆面もなく俺の手を掴み、俺の身体に抱きついた。そういう、妙なかわいげのある男だった。
     
     休日の尾形は俺と同じぐらいには堕落している。ふたりしてとてもだらしい。そんな俺たちの休日に、出掛ける予定が組み込まれないのは、ある意味で当然のことだった。
     共に過ごす相手ができた後のゴールデンウィークも、俺たちにとっては、結局ただの連休だった。早起きをして髭を剃り、糊のきいたシャツを着て職場に行く、という行為をしなくてよい、一日の連続。
     目覚ましを掛けずに寝たいだけ眠る。昼に近い時間になってようやく布団から這い出る。寝癖を付けた尾形が豆を挽いて、珈琲を入れる。香ばしい匂いを肺いっぱいに吸い込んでいるとき、ほんの一瞬だけ、「丁寧な暮らし」をしているような気分を味わう。
     丁寧さがあるのは、ほんの一瞬だ。冷蔵庫に残った適当なものを腹に入れた後は、丁寧さのかけらもない。歯磨きをするのもサボって、ベッドの上に縺れ込む。洗濯もサボる。湿ったシーツが気持ち悪いと思う。けれど、すぐに、自分の身体から汗やら何やらが零れ出していって、どうでもよくなる。シーツの汚れも、シャワーを浴び忘れた身体にこびりつく汗と精の匂いも、時間の経過も。好きなだけ相手を貪って、その合間にまどろんで、夢を見て、起きて、またセックスをする。窓の外がすっかり暗くなったあたりで、腹が鳴ってようやく、夕飯の心配をする。
     連休中、俺たちはほとんど外には出ない。連休前に食べ物も、酒も、馬鹿みたいに買い込んでおく。
     だから、今日、俺は、いつもより早めに退社をして、駅前のスーパーに寄った。普段は手に持つ買い物かごを、カートに入れてガラガラと動かす瞬間、ふわりと心が躍る。遠足のお菓子を見繕う子どものような気分になる。
     連休前──正確に言えば、ゴールデンウィークはもうスタートしていて、連休の狭間の出勤日だ─のスーパーの総菜コーナーは、家族向けなのか子供向けなのか、パーティメニューが多く並んでいた。端午の節句。いわゆる、子どもの日。俺たちには無縁の日だなとつくづく思う。けれど、どうでもいい。大人の休日は、子どものそれよりもよほど自由で、愉快だ。
     総菜コーナーをさっさと過ぎて、六本パックのビールを二つ、下のかごに積み入れた。五日分には足りない気もする。けれど、きっと尾形も同じように酒を買い込んでいるからと、カートを転がし精肉コーナーへと向かった。 
     普段の俺たちは、まともに料理もしない。米を炊き、味噌汁を作るのがせいぜいで、哀しいかな、家で飯を食うより、会社で飯を食うほうが圧倒的に多い社畜生活である。
     だから、時間だけはたっぷりとあるこういう連休のときだけ、料理をする。あまりに珍しい「作業」だから、料理というより、調理実習という感じがする。こういうときのためだけに買い込んだスパイスをあれこれ混ぜ込んでカレーを作る尾形の姿は料理中というより何かを錬成しているように見えなくもない。
     餃子を作ろうと思って、合いびき肉と餃子の皮をカゴの中に入れた。餃子は、俺でも作れる数少ない料理の一つだ。とはいえ、連休のときぐらいしか作らないから、いつまでたっても手際はすこぶる悪い。上達の兆しもない。ひだがずれ、皮がのびて、ずんぐりとした餃子ができる。俺のへたくそさに呆れた尾形が途中から包む作業に加わる。尾形が作る餃子は、几帳面にひだが整い、小粒でぴしりとうつくしい。
     不揃いな餃子をビールとともに胃に納める食卓は、休日の腑抜けた空気と相まって、えらく幸福を感じる。本格的な香り漂うカレーも一緒だ。お互い、うまいうまいと言い合いながらそれを食べ、食器の片付けもそこそこにまたベッドの上へと雪崩れ込むとき、満腹感と多幸感とで笑いが止まらなくなる。
     
     パンパンのビニール袋を手に持って、スーパーを後にした。足早に家へと向かう道中、週末によくお世話になる中華屋の入り口が閉まっているのが目に付いた。
     連休中、家の近所の飲食店はほとんどが休みになる。中華屋もラーメン屋も、定食屋も。それを知らずに夕飯を求めた数年前のお盆休み、暑さにやられた俺たちは結局、駅前まで足を延ばして、チェーンの牛丼屋で黙々と牛丼を平らげることになった。
    「結局、チェーン店とコンビニが強いんですよね。こういうときって」
     日が暮れてもなおじっとりと暑い真夏の帰り道、牛丼屋のクーラーで冷えたはずの汗がまた肌の上に浮かんでいた。尾形は、Tシャツでそれを拭いながら忌々しげに言った。
     それ以来、俺たちは食べ物を買い込んで、連休中引き籠る準備を遺漏なく整えるようにしている。
     宅配や出前は、あまり取らない。というか、今となっては取ることはほとんどないと言っていい。注文をして、頼んだ食べ物が届くまで、俺たちは待てない。ただ戯れに手を繋いだり、ハグをしたり、キスをしたりしているうちに、たまらなくなって結局、セックスをし出してしまうのだ。 
     俺たちの連休は、セックスの合間に日常がある。いい年をして随分とただれていると思うが、仕方がなかった。そして、宅配やら出前はその「日常」のタイミングでやって来てはくれない。
     俺の上で腰を振っていた尾形が、間延びしたチャイムを聞いて、チッと鋭く舌を打つ。そういうとき、尾形は何の躊躇もなく、チャイムを無視すると決める。そのまま動きを再開しようとする尾形の頭を叩いて、彼を止めるのは俺の役目だ。尾形はわかりやすく顔を顰め、もう一度舌を打つ。ほんとうに嫌そうに、じりじりと腰を引き、性器が抜ける寸前で、なおも往生際悪く、中を穿とうとする尾形をどうにか引き剥がすのは、とてつもなく骨が折れることだった。
     だから、出前も宅配もいつしかしなくなっていた。好きなときに好きなだけ繋がって、腹が減ったら、好きなものを食べ、また、繋がる。そういう過ごしかたが一番適している。そういう具合だから、休みの間、俺たちは服を着ている時間が異様なまでに短い。
     せっかくの休日だからと録りためたドラマやら映画やらでも見ようかと、ベタにポップコーンとコーラなんかを用意して、きちんと服を着てソファーに並んで座ったところで、途中からじゃれ合いが始まって、ソファーやらラグの上で、本格的にセックスが始まる。コーラの味とポップコーンの塩味が舌の上で交じり合う。酒の味もする。その奥に、さっき舐め合った相手の唾液と精液の味がする。

     週末まで休みだという貼り紙が掲げられた定食屋の前を過ぎたあたりで、スマホが鳴った。ビニール袋を持ち替えて、右手でスマホを取れば、画面から低い笑い声が聞こえた。
    「今どこです。月島さん」
     もうすぐ家に着く、と短く告げれば、相手はまた笑った。はしゃいだような声だ。電話口、雑音が少ないところを見ると、尾形はもう家に着いているのだろう。
     連休の前の日の夜が、始まる。家に帰ったら、たぶん、すぐにセックスが始まるだろう。そう思うだけで、腹の底がくつりと熱を孕んだ気がした。
    「買い物、終わった?」
    「ああ。酒も、飯も買ったぞ」
    「俺もいっぱい買いました。……でも、ひとつ、買い忘れちまって」
     尾形の声が一段低くなる。休日はもう始まっている。尾形の声は、セックスの最中、彼が俺をからかうときのそれとまったく同じ響きを持っていた。燻った熱が簡単に燃え上がりそうになって、つい唾を呑み込む。ごくんと大げさに喉が鳴った。
    『ねぇ、月島さん、』
     機械越しに聞いたところで、男臭く、色っぽい声に、耳に血が集まり、首筋が熱くなる。腹の奥で湧いた熱がゆっくりと背中全体に広がっていき、いつしか、上半身が全体的に火照っていた。まだ夜は肌寒い季節なのに、じわ、と汗ばむほどに、身体が熱に倦み始める。
    『ゴム、足りると思います?』
     じっとりと濡れ、かすかな吐息をまぶした声は的確に俺の中にある性感を抉った。
     思わず、はっ、と短く息を吐いた。ただの呼吸のつもりが、発情した犬の吐息に似ているような気がした。息が浅くなり、全力疾走でもしたように、肺が大袈裟に動く。慌てて深呼吸をした。
     時折肌の上を走るざわめきから意識を逸らして、家にどれだけゴムが残っているのだろうか、と考える。俺が使う分も含めて、いったいいくつあれば足りるのだろうか。
     こういう連休、ほとんど一日中セックスに没頭するとき、後始末が楽だからと、尾形は俺の性器にもゴムを被せる。そうしないと、俺はあらゆる液体を噴き上げてしまうし、あっという間にシーツが駄目になってしまうからだ。
     吐き出すものがすっかり透明になって、さらさらになった後、ゴムを付けることに苦労するぐらい、ふやふやになった俺の性器を弄りながら尾形は目を細める。ひどく愛おしいものに触れるようにそこを撫でて、それでも着せ替え人形で遊ぶ子どものような様子で、また俺の性器をゴムで包み込もうとする。
     まだ外だというのに、股座に血が集まりそうになった。首を振り、肩を上下させて深く息を吐き出し、大股で歩き出す。スマホに耳を当てたまま、早く家に帰ろうと脚を動かす。
    「……足りなかったら、買いに行けばいい」
     俺の声は無駄にきっぱりとしていた。力強い宣言みたいに聞こえた。スマホの向こうで尾形がふは、と吐息をたっぷり籠めた笑いを吐いた。
     コンビニもドラッグストアも。チェーン店は休日でも粛々と営業していて、ゴムの調達には支障をきたさないだろうと思う。
     それに、ただれた休日の連続の最中、セックスとセックスの合間にゴムを買いに散歩に出るというのは、なんだかひどくただしい、休日の過ごし方である気がした。 
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    あさい(ぼらけLABO)

    MOURNING一風変わったふーぞく店のキャストogtとその客のtksmさんの話。を、書こうとしていて尾月になるまで続かないのでそっと供養。
    寝たいから、声を聞かせて バイトの時給は一万円だった。普通に考えて、高い。そして、冷静に考えれば胡散臭い。Q2とかで有名なテレクラの「テレ」じゃないバージョン。と、入店面接に際して店長から胸を張って説明されたが、ジェネレーションギャップがえぐすぎて理解不能だった。神妙な顔で勤務条件についてやり取りをし、早々にシフトを埋めた帰りの電車で「テレクラ」をスマホで調べてなるほどな、と思った。
    「お待ちしてました。ご指名いただいた『百』です」
     要するに、俺のバイト先は、客に声だけを提供するニッチな風俗店なのである。
     プレイルームは店舗型のデリヘルと大きく変わるところはない。客が変わるごとにシーツと枕カバーを取り換えるだけのシングルベッドと、14インチの小さいテレビと折り畳み式の安っぽいローテーブル。そして、シャワールームがワンセットになった小部屋で客にサービスをする。普通のデリヘルと違うところと言えば、シングルベッドの頭側の壁一面がマジックミラーになっていて、その奥に俺たちキャストが適宜座って声をお届けするという、独特な仕様が取られていることくらいだろう。接触が不能であることを重視するなら、デリヘルよりも覗き部屋(これも、店長が言っていた。例えがいちいち古いのだ)と言うほうが形態としては近いのかもしれない。
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