めぐる綺羅箱1*クッキー缶の出会い
仕事終わり。
無性に甘いものが食べたくなり、適当に寄ったお菓子屋さん。
閉店が近づくこの時間に、たくさんのお菓子が並んでいるお店だった。
ショーケースの中のケーキがキラキラと輝いていて、適当に買って帰ろうと思っていた自分がバカらしく思えてきた。
「いらっしゃいませ」
奥のキッチンから出てきたのは、体つきのしっかりとした美男だった。
「……どうも」
疲れ切った自分に残った微かな何かが、彼に持っていかれそうな気がした。
「何をお探しですか?」
昼間の暖かな日差しのような、疲れ切った体を癒すようなそんな笑顔で聞かれた。
「あ、なにか、簡単に食べれるものありますか」
選ぶのもめんどくさくなって、店員さんのおすすめならハズレがないだろうと投げかける。
904