一筆啓上一筆啓上
ああ、あなたへ手紙をしたためるのは初めてかもしれない。
沢山話したいことはあるのに。
本当に伝えたい事は常に心の奥に押しとどめ、結局言えずじまいになってしまった事が多くある。
不惑を超え、知命の年を過ぎてもまだ私の心は落ち着かず。私の天命とは、生きる意味とはいかなるものか、どうあるべきなのか……その答えをくれるものはもういない。
尊敬と憧憬と親愛と……そして悔悟の思いが心に影を落とし消え去ることはなく、もう幾年の時が過ぎ去ったのだろうか。
心残りとしてある罪悪感からなのか、贖罪の気持ちなのか。それとも過去を振り返り己の生き様を誰かに聞いて欲しいだけなのかもしれない。一番伝えたい人はもうこの世には居ないというのに。
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