mtyと躁鬱【リクエスト】
東京校の服飾専門学校のmty、大阪校から転入してきた🌸ちゃんは転入早々に注目の的だった。身に付けるファッションセンスは勿論、制作する作品は大阪のコンテストでは総なめだった。転入してからのクラスに馴染むのも早く明るく大阪ならではのオチのついた話で人を楽しませる🌸ちゃんはクラスの中心だった。
海の生物をモチーフにデザイン画を描きなさいと宿題が出ればmtyと一緒に沖縄の美ら海水族館へ、中世の絵画をモチーフにデザイン画の宿題が出れば京都国立博物館へ、日本刀をモチーフにデザイン画の宿題が出れば東京国立博物館へ。どれもこれもスマホで検索すれば様々な海の生き物も中世の絵画も日本刀もスマホで検索すれば一発で見れる便利な世の中で🌸ちゃんは本物にこだわり全国あちこちへ向かっていた。
mtyはというと🌸ちゃんの制作する作品に惚れ込んでいた、派手過ぎずシンプル過ぎずランウェイを歩くためだけに作りましたと言わんばかりの🌸ちゃんの作品はmtyの感性には無いものばかりで🌸ちゃんに付いて回った。沖縄行ったり京都に行ったり付いて回るのは大変だったが🌸ちゃんが何を見て何を感じるのか知りたかった。
🌸ちゃんには🌸ちゃんカラーというデザイン画では必ずと言ってもいい程使用される色があった。赤茶色のシックな色でデザイン画はコピックで描かれるのが大多数だが🌸ちゃんは水彩でデザイン画を描いてた。
しかし明るく元気な🌸ちゃんだって体調崩す事もある、月に一度一週間程休むのだ、クラスメイトの女子は生理とか重いんじゃない?と女子トークを聞いて成程と思ってた。ルナマナで慣れているmtyはロキソニンを買って簡易で作れるスープのレトルトを持って🌸ちゃんの家へ行く。
ピーンポーン
ガタガタッと音がして扉が開けられる一週間ぶりに見た🌸ちゃんは寝癖がついてる割には目元の隈が酷く、もう秋だと言うのにLサイズのダボダボのTシャツ一枚で出て来た。あまりにも無防備で襲われそうな服装だった。そこにはファッションセンスが輝いて明るく面白いクラスの中心の🌸ちゃんは居なかった。
大丈夫か?とmtyが問うと、🌸ちゃんは表情筋が上手く動かないのかぎこちない笑顔で大丈夫大丈夫と返事をする。いや大丈夫じゃねえだろそう言うと🌸ちゃんの家へ押し入る。ちょっ!と焦る🌸ちゃんを無視して家へ入るとむわっと香る鉄の匂い、やっぱり生理なのか?いやでもルナもマナの時もこんなに血なまぐさくなかった。
ふとテーブルを見るとデザイン画と絵の具とパレットとカッター。ハッと気づいたmtyは🌸ちゃんの長袖を捲り腕を見る。古いものから新しいものはまだ瘡蓋にもなってもおらず血が腕を強く握るmtyの手に付着する。
「血は絵の具じゃねえよ。」
「うんそうだね。」
「毎月一週間休むのはこれか」
「うんでも大丈夫、だってこの一週間以外は元気でしょ。この一週間さえ乗り切ればまたいつも通り笑えるから……大丈夫。大丈夫。」
「今度から毎月一週間一緒に休まねえ?」
それから🌸ちゃんご自慢だった赤茶色のシックな🌸ちゃんカラーを使用されたデザイン画は見ることはなくなった。