・
・
・
『貴方を心から大切に思ってる、
だからこの想いをどうか受け取って』
…そういう意味の言葉だ。
そんなのオレが言っていい筈がない。
オレの感情を背負わせたくない。
オレの身勝手で変わって欲しくない。
こんな気持ち伝えなくていい。
こんな願い伝わらなくていい。
こんなにもあったかくてしあわせなんだから。
充分、もう充分なはずなんだ。
これ以上を望むなんてことできない。
…できないくせに、
もう要らないとも言えない意気地無しなんだ。
こんなにも胸がいっぱいで苦しくて溺れそうなのに。オレにもどうしていいかわからなくて。
だから、
全部抱いて抱きしめて、
大事に大事に抱えてしまうんだ。
こんなオレでごめん。
わがはいが聞きたいのは着飾った建前でも聞こえのいい言い訳でもない。ワンちゃんに求めとるのはそんな無意味なもんやない。
ワンちゃんの気持ちを、
ちゃんと言葉で聞きたいだけなんや。
「変わる」のが嫌だと言う。それの今更何が怖いのか、わがはいにはこれっぽっちも解ってやれない。だってそこまで変化を怖がる割には、ここへ来てからワンちゃんが…ワンちゃん自身がとっくに「変わった」事に気付いてないからや。
初め…わがはいがここへやって来る前、わがはいと出会う少し前。初めて会ったぼん達に笑顔で取り繕っとったが、地べたに寝転がるばかりで何もせず、それどころか全く昼寝もせんかったって?
それにいくらハラが減ろうと、動きたくないのか食欲が無いのかそのままメシも食わんかったらしいやないか。10日も飲み食いせんとゴロゴロしとったなんて聞いたけども。でも10日は流石に盛っとるやろ?……え?
…まぁええわ。いや良くはないねんけど。
それより今。今はどうや。なぁ考えてみ?
心地良い場所を真っ先に見つけては満足そうに眠りについて。ハラが減れば誰かの傍で大人しく両手を出し、受け取るそばから口いっぱいに頬張って。
表情を取り繕わなくなった分、
本当に嬉しい時に溢れた笑顔が…眩しくて。
ほら、なぁんも怖いことないやん。みんなワンちゃんが変わって良かったって思うとるよ。……もちろん、わがはいもやで。
…それに。それで隠しとるつもりか知らんけど、ワンちゃんが本当はどう思っとるかくらい、態度からもう充分伝わってきとるんや。
…伝わっとるけども。
少しくらい、ワンちゃんがそのつもりで伝えてくれる「言葉」を求めたってバチは当たらんやろ?
だって、そんなにいっぱい抱えこんで
わがはいに渡す気ないくせに、
独り占めして離したがらないくせに、
言葉の端々から溢れてもうてるやないか。
渡したがらんくせに零すばっかりで。
今後もワンちゃんから渡してくれるつもりがないんやったら、いつか返してもらいに行ってまうよ。
だから、なぁ、早く、
わがはいが空っぽになる前に。
ちゃんと直接ワンちゃんの言葉で、
そのキモチわがはいにだけに渡しに来て。
ワンちゃんから渡してくれんと
何の意味も無いから。
少しずつ、少しずつ、
溢れんばかりのそのキモチの、
ほんのちょっとの雫からでも構わんから、
わがはいをその不器用な「愛」で満たしてや。