Lip monster…………
「なに、してるのっ…」
「なにって趙の手にキス···」
「いいっ、それ以上言わなくていいから!」
「そうか」
「そうだ、お腹すいたよね。朝ご飯作るから、手、離してよ」
「趙、その前に俺になんか言うことねえか?」
「えっ、別に、今は、ないよ、離して?」
「今は?」
「そう、今はご飯作らなきゃだし、洗濯物も干さなきゃだし」
「じゃあそれが終わったら?」
「あの…ごめん……」
「どうした?」
「俺···気持ちが整理できてないから、少し時間くれないかな?」
***
あの日の俺の見え見えの裏工作は、とっくに彼にバレてしまっているのだろう。俺が春日君の寝込みを襲ってしまった日から、彼の俺への態度が露骨に積極的になった。隙あらば手を繋いでくるし、この間なんて皆のいる前で後ろから抱きつかれそうになったから、間一髪、素早く身を躱して阻止をした。彼のそういった一連の行動にどう反応したらよいかがわからなくて、最近はなんだか彼から逃げてしまってばかりいる。
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