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    nnym_blackstar

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    nnym_blackstar

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    R/E/D見てて思いついた、敵対するスパイ同士の恋的なやつをジェイドで。
    書きたいとこだけ書いてみたけど、ほんとにこういうのがっつり読んでみたい。

    #twst夢
    #ジェイド
    jade
    #パロ
    parody

    「ごめんね、ジェイド」
    綺麗な笑顔だった。
    次の瞬間走った痛みに咄嗟に視線を下げて、自分の胸に突き立てられた銀色を見つけなければ。
    それを握っていたのが、彼女の嫋やかな手でなければ。
    きっと、惹かれてやまなかった美しい表情だったのに。

    わかっていたのだ、いつかこういう日が来ることは。
    自分も、彼女も、掌の上で他者の命を弄ぶ存在で。
    その対象がいつお互いになるともしれないと承知の上で、それでも触れずにはいられなかったのだから。
    よろり、と一歩下がる。
    胸に深く突き立ったナイフをよく見れば、鈍く輝く銀にうっすらと紫色がまとわりついていた。
    ――毒、か。
    さすが、用意周到なことだ。
    単に胸を刺しただけでは飽き足らず、確実に命を奪うよう念を入れているとは。
    じわりと胸に沁みだした液体はそのままに、顔を上げる。
    ほんの数秒前まで、離れたくないとばかりに強く自分の首に腕を絡めて、想いの深さを刻むように蕩けた瞳で唇を重ねていた彼女は、今やその顔から一切の表情を消してこちらを見つめていた。
    ――嗚呼。
    視界が滲む。
    身体の末端から徐々に力が入らなくなって、更によろけた身体は欄干にぶつかった。
    背後には、深い海。
    「――さよなら」
    いつの間にか間近に迫っていた彼女に、肩を押されて。
    腰ほどまでしか高さのない手すりでは受け止めきれずに、両足が宙をかいた。
    背中に衝撃が、どぽん、という水音と共に波に飲み込まれる。
    冬の海の指すような冷たさを感じながら、徐々に遠くなる水面の光に手を伸ばした。
    ――本当に、好きだったのに。
    ――愛して、いたのに。
    最後の瞬間に見た、彼女の瞳。
    そこに期待した感情の一欠片さえなかったことが、おそらくこのまま自分の命が絶えるだろうことより何より、胸を抉った。




    潮風の心地いいテラス。
    シーズンオフの観光地らしく閑散としたカフェは、波音と時々少ない客のたてる微かな音しかしなかった。
    その静寂を損ねないようそっと足を運びながら、テーブルに近づいていく。
    「――お待たせいたしました」
    静かにそう言って淹れたての紅茶のカップをサーブすると、ふう、と微かな溜息が返ってきた。
    海岸線に向けた目をこちらへ向けることさえせず、細い指先がカップの縁をなぞる。
    「…遅いのよ」
    やがて囁くように落とされた呟きに、ジェイドは堪えきれずに小さく笑みを零した。
    「すみません。随分と深くまで刺さっていたものですから」
    一分の隙なく纏ったウェイターの制服の上から、そっと胸を抑える。
    そこにはあの日、彼女が付けた傷跡が刻まれていた。
    心臓目掛けて、深く深く突き立てられたナイフ。
    あれは確かに、命を奪うべく向けられた毒刃だった。
    けれど、それは僅かに急所を外れていて。
    かつ、塗られていた毒が特殊な神経毒だったのが功を奏した。
    人間ならば即死だが、生まれつき耐性のある人魚ならば運が良ければ仮死状態になるなんて珍しい毒だったから。
    異変に気付いた兄弟が自分を回収して医者の元に運ぶまでなんとか生きながらえたのだ。
    ふふ、と笑いながら向かいの席に腰かければ、ようやく彼女がこちらを見た。
    あのときと同じ、表情のない顔。
    しかし、その瞳には、前とは違う色が浮かんでいた。
    「すみません」
    「…何が?」
    カップの横に置かれたままの彼女の手に腕を伸ばして指先を絡めながら言えば、表情は変えないまま彼女が少し首を傾げた。
    「あのとき――一瞬でも、あなたを疑いました」
    懺悔するような呟きに、こちらを見つめる眼が僅かに細められる。
    それに眉を下げながら自分より一回り小さい手を引き寄せて、指先に唇を落とした。
    「本気で殺す気なら、額でも首でも、胸より狙うべき場所はあったのに」
    諦めて意識を手放して、再び目を開くまで。あなたの愛の深さに気付かなかった。
    指先から、てのひら、手首へと順にキスを落として、そっと顔を上げて様子を窺う。
    じっとこちらを見ていた彼女は、ふむ、と考えるように頷いたあと。
    やがてあの日と同じように、至極美しい微笑みを浮かべた。
    「次は、胸を一突きじゃゆるさないから」
    「…ええ」
    「それから、こんなに待たせた分の責任もとって」
    「ええ、もちろん」
    「しばらくは静かなところでのんびり過ごしたいわ」
    「そうですね、そのように」
    「あとは――」
    あれこれと並べ立てる彼女の言葉全てに頷いていけば、ふと視線が絡み合って。
    引き寄せられるように顔を寄せれば、彼女がふ、と口元をほころばせた。
    「…とりあえず、キスして」
    「仰せのままに」
    ふわりと吹き付けた海の風が、重なるふたつの影を撫でていった。
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    nnym_blackstar

    REHABILIR/E/D見てて思いついた、敵対するスパイ同士の恋的なやつをジェイドで。
    書きたいとこだけ書いてみたけど、ほんとにこういうのがっつり読んでみたい。
    「ごめんね、ジェイド」
    綺麗な笑顔だった。
    次の瞬間走った痛みに咄嗟に視線を下げて、自分の胸に突き立てられた銀色を見つけなければ。
    それを握っていたのが、彼女の嫋やかな手でなければ。
    きっと、惹かれてやまなかった美しい表情だったのに。

    わかっていたのだ、いつかこういう日が来ることは。
    自分も、彼女も、掌の上で他者の命を弄ぶ存在で。
    その対象がいつお互いになるともしれないと承知の上で、それでも触れずにはいられなかったのだから。
    よろり、と一歩下がる。
    胸に深く突き立ったナイフをよく見れば、鈍く輝く銀にうっすらと紫色がまとわりついていた。
    ――毒、か。
    さすが、用意周到なことだ。
    単に胸を刺しただけでは飽き足らず、確実に命を奪うよう念を入れているとは。
    じわりと胸に沁みだした液体はそのままに、顔を上げる。
    ほんの数秒前まで、離れたくないとばかりに強く自分の首に腕を絡めて、想いの深さを刻むように蕩けた瞳で唇を重ねていた彼女は、今やその顔から一切の表情を消してこちらを見つめていた。
    ――嗚呼。
    視界が滲む。
    身体の末端から徐々に力が入らなくなって、更によろけた身体は欄干にぶつかった。
    背後に 1909

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