吐く息は甘く「う……?」
ギシギシと痛む関節を動かして、薄く目を開ける。視界は暗いが、それがむしろちょうどいい。棺の蓋を開け、外に出るのに若干苦労しながら原因を探す。
目を開けたのは、鼻先に匂いを感じ取ったからだ。吐息を吐かねば、その匂いを感じ取ることは出来ないはずの鼻先に、人間の気配を感じとったその理由は、他でもなく誰かが呼吸をしているということ。
寝床、というより封印に近い状態の自分がいるこの場所に足を踏み入れる存在などそうそう無いはずなのに、妙だと思いながらぼんやりと考え込む。
(甘い…)
しかし、その匂いは今まで嗅いだことの無い類のものだった。認識できるということは人であることに間違いなさそうだが、そうだとしてもこの匂いはおかしい。
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