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    RacoonFrogDX

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    RacoonFrogDX

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    異世界に召喚されたと思ったら変な職業適性がついてきた

    『異世界に召喚されたけど『適性:孫』ってなんだよ!?』(1)急に目の前が真っ白になったのは夜勤が終わって家に帰る途中のことだった。

    …まさか、この年で白内障…?

    オレが現実的な推測をして勝手にショックを受けていると
    身体が真下に引っ張られ、落ちていく様な感覚に襲われた。

    時間にしたら一瞬だったのだろうが、妙に長く感じられた。
    焦っているうちに視界が戻ると、オレは見知らぬ場所に大の字で倒れていた。

    体を起こして周囲の様子を確認する。
    白くて冷たいタイル、太い円柱、薄暗い室内の壁際には松明。

    地下室か何かだろうか…今の今まで、車の中にいたはずだが。

    「あ、やっと起きた。」

    不意に聞こえた声に反応し振り返ると、そこには5人の人物がいた。

    服装からして学生だろうか…一様に同じデザインの
    制服を着た彼らは、全員がコチラに視線を向けていた。
    オレは少し居心地が悪くなり、思わず後ろ頭を掻いた。

    「ねえ、全員目が覚めたけど?説明してくれるんだったわよね?」

    セミロングの黒髪で大きなバレッタを付けた少女が、誰かに話しかけた。
    視線を追ってみると、オレ達の前方に二人の人物がいることに気付いた。

    ゆっくりとコチラに近寄って来る男女…しかしその服装には違和を感じた。

    「アナスタシア、説明してやれ。」

    大きな王冠と錫杖、赤いマントを羽織った男が女性に話しかけた。

    白地に金色の刺繍が入ったローブ、複雑な文様が彫られた
    アクセサリーを身に着けた女は男に目配せすると、更にオレ達へ歩み寄った。

    「私はアナスタシア、当ハイレム王国で神官を務める者。
    そしてこの御方はハイレム王国第五代国王"ベルゾーン・ハイレム様"でございます。」

    アナスタシアという神官が国王と呼んだ男は、
    こちらを品定めするかのように目線を右から左に動かしていた。

    「異界の皆さま…このたびは
    我がハイレム王国の"召喚の儀"に応えて頂き、感謝致します!」

    女性が何を言っているのか、オレはその意味を一瞬理解しかねた。

    「"異界の皆さま"?
    まるでここが"異世界"とでも言いたげな言い回しだけど。」

    バレッタを着けた少女が、呆れたような声をあげた。

    「その通り…ここは"異世界"でございます。
    もちろん、アナタ方にとっての…ですが。」

    穏やかな表情でそう続ける女性を見て、少女はぎょっと目を見開いた。

    「なあ…コレってもしかして、"勇者召喚"ってヤツじゃないか?」

    これまで押し黙っていた少年の一人が、誰に言うでもなくそう呟いた。

    「勇者召喚って、アニメとか小説なんかでよくあるヤツだっけ?
    勝手に人を召喚してのうのと『アナタは勇者です!』…っていう。」

    「召喚の儀をご存知なのですね!
    話が滞りなく進められるのは、私共としても喜ばしいことです!」

    神官の女性がそう返したことに対して、少年は驚いたようだった。

    「えっ、本当に!?」
    「バカ、そんなワケないでしょ?!」
    「でもさ…この人たち、いかにもな格好じゃん。」

    非現実的な出来事に巻き込まれたのかもしれないという
    不安からか、学生たちが一斉に声を上げて室内はにわかにザワつき始めた。

    「…証拠はありますか?」

    そんな中、凛とした声が室内に響きその場は再び静まり返った。

    先程のバレッタ女子とは違う、お団子ヘアの少女が神官の方を見て問いかけた。

    「この儀式で呼び出される方は"魔法"と縁遠い世界からお越しになられることが
    多いと伝わっておりますから、"魔法"をお見せするのが一番早いかと思われます。
    …早速ですが、皆様の"ステータス"を『鑑定』させて頂きたいと思います。」

    鑑定、ステータス…いわゆる異世界転移ものと呼ばれる
    ジャンルの作品では必ずと言っていいほど目にする単語。

    異世界にやって来た人間は、自身のスキルや能力値を鑑定され
    異能を身に着けたり転移したことに対して実感を持つのが定番である。

    異世界ものの作品は時折読んでいたが、まさか自分がその場に立つことになるとは。

    「失礼いたします…」

    もしも"アナタには勇者の適性がある"なんて言われたらどうしようか…
    オレが年甲斐もなく馬鹿な妄想をしているうちに『鑑定』は終わったようだった。

    「ハナモリ様、タナカ様、クジツグ様、フジムラ様、イシバシ様
    そしてマクラギ様…お名前はコチラの方で宜しかったでしょうか?」

    突然自分の名前が呼ばれ、六人全員が仰天した。

    「な、何で私の名前を…」
    「これが『鑑定』の力で御座います。」

    驚くオレ達をよそに、アナスタシアは鑑定結果の読み上げを続けた。

    「ハナモリ様は魔術師、タナカ様は剣士、クジツグ様は魔獣使い、
    フジムラ様は格闘家、イシバシ様は転送師の適正をお持ちですわ。」

    「…おお、素晴らしいではないか!
    莫大な費用と時間をかけて召喚を行った甲斐があったわい!」

    学生たちの能力を聞き、ハイレム五世と呼ばれた国王は満足そうに笑みを浮かべた。

    …先程から気になっていたのだが、恐らくオレはこの王様と相性が悪い。

    人間同士の相性というものは、少し話せばなんとなく察せられるものだ。

    言葉の端々から滲み出る傲慢な雰囲気、人を見下したようなふるまい。

    生来大人しく、身内以外とのコミュニケーションが下手くそなオレは
    この手のタイプの人間が好きではなかった。

    そしてハイレム王の次の発言で、それは確たるものとなった。

    「そこの貧相な男はどうだ?」

    なるほど、やっぱりこの王様とは仲良く出来ないな。

    「おい、"ステータス"って念じたら目の前になんか情報が出るぞ!」
    「マジ!?…マジだ、すっげぇ~!」
    「なあ、スキルっぽいトコ触ったら説明が読めるぜ!」
    「うっさい男子!はしゃいでんじゃないわよ!」

    オレが貧相とディスられた一方で、学生たちは
    ステータスの確認方法を自力で発見して盛り上がっていた。

    「…これは。」

    鑑定を行ったアナスタシアは、困ったような表情になった。
    オレが何か変なスキルでも持っていたのだろうか。

    オレは頭の中で『ステータス』と強く念じてみた。
    すると目の前にウインドウの様なものと文字の羅列が浮かび上がった。

    まさか本当にステータスウインドウが表示されるとは。

    ゲームでしか見たことのないものが現実的な存在として
    出現したことに驚きつつ、オレは自分のステータスを確認した。



     【 氏 名 】 枕木樹

     【 種 族 】 ヒト

     【 年 齢 】 30

     【 適 性 】 孫■

     【 職 業 】 介護士

     【 能 力 】 体力:☆☆
             知力:☆☆
             防御:☆
             俊敏:☆☆
             耐性:☆☆☆☆
     
     【 孫 ■ 】 適応 鑑定 格納 出庫



    まず氏名、種族、年齢と基本的な情報が並んでいた。
    職業も現在就いている仕事と相違ない、正確なものだ。
    能力の項目には星印がいくつか並んでいる…数が多いほど能力が高いということだろうか。
    自分のステータス画面を見るなんて人生で初めてだったため、感慨深く眺めていたのだが
    情報画面を呼び出した時から気になる項目が存在していた…それは【適性】の項目である。
    職業的な素養を示しているものと思われるが、そこには奇妙な言葉が表示されていた。


    「マクラギ様の素質は、ええと…『孫』でございます。」


    アナスタシアの一言で、室内はおかしな空気になった。
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