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    RacoonFrogDX

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    RacoonFrogDX

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    馬ッ!今ッ!熊ッ!

    『異世界に召喚されたけど『適性:孫』ってなんだよ!?』(34)町を出て適当な雑木林に向かう。
    グラムが『精霊馬』のスキルを発動させると、目の前に立派な見目の馬が出現した。

    「ほおお~、すごいスキルじゃの~!」

    精霊馬を見たモンストロは目を輝かせてはしゃいでいる。

    「このスキルは、今は亡き我が愛馬を再現するもの。
    効果の複雑さ故にスキルという枠組み無しでの習得は恐らく困難だったじゃろう。
    騎士という職業が影響したのか、その点でワシは幸運だったと言って良かろうよ。」
    「この馬、グラムの愛馬だったんだ…」
    「うむ…再現とはいえそこはスキルの産物、普通の馬とは異なり
    技能を極めるほど出せる速度は上がり、スキルの持続時間も上がる。
    生物ではないため給餌も休憩も不要で走り続けることすら可能じゃ。」
    「なんか、こうして詳細を聞くと結構強力な能力だな…」
    「ふふふ、そうじゃろう、そうじゃろう!」

    オレが感嘆したからか、グラムの機嫌は露骨に良くなった。
    確かに、魔法で水や火を出すだけでも一苦労なのに馬を創り出すとなると
    それに必要となる文様がどれほど複雑怪奇なものになるか考えただけでも
    頭が痛くなってくる。

    「さて、ただスキルの説明をするためにここへ来たわけではない。
    モンストロ、早速じゃが馬に乗ってみなさい。」
    「うむ、見事乗りこなして見せようぞ!」

    グラムに促されたモンストロは意気揚々と馬に近付いた。

    「えーっと、確かこの辺に手を置いて~…ほいっ!」

    モンストロは地面を力強く蹴り、その大きな体を
    馬の背に乗せた……勢いに任せて、まさに思いっきり。

    「…!? ほわーっ!?」

    勢いよく飛び乗ったせいか、馬が驚いて立ち上がると
    モンストロは地面に背中からドスンと落ちてしまった。

    「ちょっ…爺ちゃん、大丈夫!?」
    「ふーむ、やはり大丈夫ではなかったのう…」

    グラムが馬を消すのを尻目に、オレはモンストロに駆け寄った。

    「あたたたた…上手くいったと思ったんじゃがの~。」

    モンストロは体を起こすと頭をワシャワシャと掻きながら独りごちた。

    「うん、怪我はないみたい…背中とか、腕とか痛いところはない?」
    「おー! タッくーん! これしきのこと、へっちゃらじゃぞ~!」

    モンストロはオレを見るといつもの調子でニコニコと笑った。

    「こういう時は後から痛みや何かしらの症状が
    出始めることもあるから、変だと思ったらすぐ教えてね。」
    「タッくんは優しいのう…そういうところが祖父心をくすぐるんじゃ~。」

    ひとまず問題なさそうだと判断したオレは、苦笑しつつモンストロの側を離れた。

    「載積重量的には問題ないが、とにかく下手くそじゃな。
    『高齢者講習』は優秀なスキルじゃが、実践経験はやはり別に積まねばならぬか…」
    「むう…グラムよ、予想していたなら最初から指導してくれてもよいではないか!」

    遅れてやってきた祖父仲間にモンストロは右手を挙げて抗議した。
    というか乗り方の問題なのか…正直、馬がモンストロの重量に耐えかねたのだと
    思っていたのだが、あの巨体でも特に問題なく乗れるようだ。

    「冒険者登録の例もあるからな、アレは上手いことこなしてきたじゃろう。」
    「アレは受付嬢や職員の説明に従っておれば、誰でも登録出来るからのう…」

    当たり前ではあるが乗馬と事務手続きは全くの別物…モンストロではなく
    仮にオレが一人で騎乗に挑戦しても、モンストロ同様失敗していただろう。

    グラムも結果を予想していたとは思うが"祖父"という種族自体に未知の部分が
    多いため、自身のことも含めて色々と探り探りやっているのだろうなと感じた。

    「となればワシが指導してやるほかあるまいな。
    孫を待たせるようでは"祖父"失格…ビシバシいくつもりじゃから、覚悟せよ。」
    「ふふん…望むところじゃ! まあ、ベテラン騎士の指導であれば覚えも早かろう!」

    元居た世界では、元軍人がインストラクターを務めるシェイプアップビデオが
    流行ったことがあったが…その内容はかなりハードなものだったと記憶している。
    二人ともやる気になっているが、グラムがやり過ぎないか外野ながら少々心配だ。

    「王都に向かうのは急ぎじゃないし、ゆっくりで全然大丈夫だからね!
    モンストロ爺ちゃんは無理しないで、グラム爺ちゃんも程々にしてよ!」
    「む…孫にそう言われては…むう、そのようにするしかあるまい。」
    「タッくーん! お爺ちゃんは頑張るからの~!」

    グラムの反応を見るに、一声掛けておいて良かったかもしれない。
    後はグラムに任せて、オレは自分のステータスを確認してみることにした。

    「意識してないと、ステータスの存在って案外忘れがちなんだよなあ…」

    木の根元に腰かけて、ウインドウを呼び出してみる。


     
     【 氏 名 】 枕木樹

     【 種 族 】 ヒト

     【 年 齢 】 28

     【 適 性 】 孫■

     【 職 業 】 期待の孫■

     【 能 力 】 体力:☆☆
             知力:☆☆
             防御:☆
             俊敏:☆☆
             耐性:★★☆☆☆
     【 孫 ■ 】 適応 鑑定 通知 格納 出庫 返却 時効取得 換骨奪胎
                          
             爺たらし 改竄 財布(小) 輪奐一新 魅了 偽装 秘匿



    ステータス的には大きな変化はなく、相変わらず耐性だけ異様に数値が高く年齢はバグっている。
    新スキルを取得している様子もないため、オレは説明文に変化がないか一項目ずつ確認していった。

    「ん、『改竄』の説明が変更されてる?」


    改竄:指定した生物の記憶や性質を書き換える。
       特定の記憶の検索や、絞り込みも可能。

    確か以前は"対象の記憶を少しだけ書き換える"という何ともザックリした説明文
    だった気がするので、使い込んだことによって能力が強化されたということだろうか。
    オレは周辺を見回して、雑草にとまっている虫に『改竄』を使用してみた。
    生き物相手だが、書き換え自体は行わないので勘弁してもらおう。

    スキル発動と共に見慣れたウインドウが浮かび上がる。

    「…なるほど、文章記憶のウインドウに虫メガネの様なマークが追加されているな。」

    使い方として特に難しい手順はなさそうだ。
    先の襲撃のように直前の記憶であればすぐに辿れるが、古い記憶だと
    膨大な量の文章を遡る必要があるため、結構便利な機能が追加されたのではないだろうか。
    『改竄』を使う機会自体がないことを祈るが、必要に迫られた際は遠慮なく使わせてもらおう。
    他に特別変化は見られなかったため、オレはステータス画面を閉じた。
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