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    RacoonFrogDX

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    RacoonFrogDX

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    『格納』を効率的に鍛える方法は…

    『異世界に召喚されたけど『適性:孫』ってなんだよ!?』(15)「お帰りなさいませ…あら? 随分早くお戻りになられましたね。」
    「ええ、依頼を全て達成したのでこの通り、報告に来たのですよ。」
    「やっぱり三件同時の受注は無謀だったみた…えっ、達成した??」
    「はい、確認願います。」

    ギルドへ戻って来たオレ達は、早々に依頼が完了した旨を伝えた。

    森を探索中、偶然マルビットの巣と薬草の群生地帯を発見したと
    説明しグラムが一連の収穫物を提出すると受付嬢は動揺しつつも
    それらを台車に載せて施設の奥へと運んでいった。

    「えー…
    提出頂いた薬草類とマルビットが
    依頼の達成条件を満たす品質であることを確認しました。
    こちらが三件分の報酬となります、どうぞご確認下さい。」

    受付嬢が持ってきた銅貨を数え、提示された報酬額通りか確認する。
    ハイレム王から渡された手切れ金と比較すると質素な額だが、むしろ
    件の手切れ金が路銀としては真っ当な額であったことにオレは驚いた。
    …最初から暗殺ありきだったため、全額回収するつもりで見てくれは
    まともにしただけだったのかもしれないが。

    数え終わった貨幣を麻袋に収納すると、オレ達はギルドを後にした。
    背中に受付嬢の視線をひしひしと感じつつ、二人旅初の依頼受注は
    無事達成という形で終了した。



    「あれ? もう戻ってこられたんですか?」

    虎風庵に戻ると、リミカが不思議そうな表情で出迎えてくれた。

    「受注した依頼が思いのほか早く終わってしまいましてな…
    時間も半端なので、今日はもう切り上げることにしたのです。」
    「そうだったんですか、それは幸運でしたね。」

    エプロンと三角巾を身に着けたリミカは、
    受付の机や壁に掛けた絵の額縁などを丁寧に拭いていた。

    「…もしかして、まだベッドメイクの途中でしたか?」
    「いえ、お部屋でしたらお二人が出掛けてからすぐに掃除を済ませたので大丈夫ですよ。
    夕食の準備が整ったら、またお声かけさせて頂きますね。」
    「ありがとうございます、では、部屋の方に戻りますので…」

    リミカと簡単な会話を交わした後、オレ達は部屋に戻った。
    荷物をおろすと、オレは改めてスキルの訓練を行うことにした。
    グラムは…というと、いつの間にかオレの横に陣取っていた。
    どうやら訓練の様子を間近で眺めることにしたらしい。

    「キラメキドロンの使役も済んだことだし、心置きなく『格納』の練習が出来るな。」

    『時効取得』や『換骨奪胎』などのスキルは『格納』と関連しているようなので
    変に『格納』を使ってキラメキドロンの実験に支障が出ても困る…という懸念もあった。
    故に、念のために件の実験が終わるまでは練習を『鑑定』スキルのみに留めていたのだ。

    オレは拾って帰った木の実を机に置くと『格納』を発動した。
    スキルの対象となった木の実は、音もなくその場から消失した。

    「おお…ちゃんと格納できるサイズが大きくなってる。」


    ―『分類別格納(果実)』を習得


    オレがスキルの成長に小さな感動を覚えていると『通知』が発動した。
    急いでステータスを確認すると『格納』の詳細に大きな変化があった。


    格納-格納中(魂) :
      -格納中(果実):ベンテンの実


    これまでは"魂"だけだった"格納中の物品"の表示数が増えていた。
    一つは魂、もう一つには果実と括弧書きがしてあるので、これが
    通知で表示された『分類別格納』というスキルなのだろう。
    そして、『格納』スキル自体の説明文にも変化があった。


       格納:1.1cm×1.1cm×1.1cm以内の大きさのモノを異空間に格納出来る。


    0.1cmだけではあったが、格納出来るアイテムのサイズ制限が緩和されていた。
    何故容量が増えたかに関しては『分類別格納』の方にその答えが書いてあった。


    分類別格納:アイテムの分類ごとに、異なる格納スペースを利用することが出来る。
          格納可能なアイテム数の増加に応じて格納スペースの容量も増加する。


    説明文を読む限り、格納出来るアイテムの種類が
    増えればそれに応じて格納スぺ―スも大きくなっていくようだ。
    これは積極的に『格納』を使って種類を増やしていく他ないだろう。

    初期段階の1立法ミリメートルの壁を突破するのが異様に難しいだけで
    そこを乗り越えさえすれば『格納』も使い勝手が良くなるのかもしれない。
    …まあ、そもそも最初の格納物が"魂"というのがハードル高過ぎるのだが。

    「さて、そういう話であれば次は…」

    続けてオレは、森で捕まえた小虫を机に載せてそれを格納してみた。


    ―『分類別格納(虫)』を習得


    予想通り、今度は『分類別収納(虫)』の習得を告げる通知が表示された。
    格納中のアイテム欄にも "格納中(虫):マルツブコガネ(0%)" という
    表示が増えており格納サイズも"1.2cm×1.2cm×1.2cm以内"に増えていた。

    「名前の横に%表示があるってことは…
    やっぱり魂を持つ生き物が『時効取得』の対象になる感じか。」

    確かに、このスキルのお陰でオレは生きながらえることが出来たが…格納したら最後、
    何でもかんでも強制的に『時効取得』する仕様なのはあまり嬉しくないかもしれない。
    虫やモンスターはともかく、うっかり人間を格納してそのまんま…なんて事態だけは
    避けないといけないだろう。

    …ともあれ、不便な点も確かにあるが、今行っている訓練の結果次第では
    ハイレム五世に下された"『格納』=ゴミ"という評価を覆えせるかもしれない。

    「…爺ちゃん、何か小さいもの持ってない?」
    「ふむ…カバンをひっくり返してみるかのう。」

    オレたちはお互いのカバンを漁り、部屋の中を眺め、果ては
    街に繰り出して落ちている枝葉や端切れ、何かのカケラなど
    格納出来そうなサイズの物を片っ端から格納していった。

    ―『分類別格納(布)』を習得
    ―『分類別格納(石)』を習得
    ―『分類別格納(骨)』を習得
    ―『分類別格納(水)』を習得
    ―『分類別格納(肉)』を習得
    ―『分類別格納(花)』を習得
    ―『分類別格納(種)』を習得
    ―『分類別格納…

    しばらくして、自分でもどうかと思ったのだが…最終的に残飯や廃棄物といった
    ゴミの塊に向かって『格納』を連発すると、格納可能なアイテムの種類が一気に
    増えるのではないか、という発想に思い至りゴミ捨て場へと向かうことになった。
    正直正攻法ではない気がするし、結局"ゴミ"かよ! とは心の中で叫んだのだが。

    「というか、思ってたよりもこぢんまりとしてるな…ゴミ捨て場。」
    「基本的に、最後まで何でも無駄なく使うのが当たり前じゃからな。
    治安の悪い国や資源が豊かな国ならもう少しゴミもあるじゃろうが。」

    古着や古道具をはじめ、排泄物まで何でも再利用していた江戸時代みたいな感じか。
    元いた世界で見たようなゴミの山みたいな場所を想像していたので驚いてしまった。

    「よし、それじゃあやってみよう…『格納』!」

    気を取り直してゴミの大盛り…否、中盛り程度の山にスキルを発動すると
    視界の端にものすごい勢いでスキル取得の通知が出現しては消えていった。
    ハッキリ言って目で追えない速度だった。

    「なんか、すごい早さと量の通知が流れてくる…」
    「ゴミの塊も結構な速度で削れていっておるのう。」

    見るとゴミの塊は少しずつ小さくなっていっており、しばらく『格納』を
    発動し続けていたところ程なくしてゴミ捨て場からゴミは消えてしまった。

    「確か、ここ以外にも何ヶ所かあるんだっけ?」
    「うむ、この調子であれば全てのゴミ捨て場を回れそうじゃな。」

    スキルのためとはいえ、まさか異世界転移して初めての訓練がゴミ漁りになるとは。
    森や川で採取するとか、もう少し真っ当な方法でスキルを鍛えた方が良かったかな
    …と、キラキラした異世界ライフも頭をよぎったものの一応拠点を構えたとはいえ
    恐らくは追われる身、なりふり構っていては死んでしまうかもしれないと思い直し
    無心でゴミを収集することになった。

    そうして街を散策すること数時間…流れる通知の数も
    徐々に少なくなっていき、遂に最後のゴミ捨て場も制覇した。
    格納可能なサイズは"30立方センチメートル以内"へと拡大し
    収納ボックスくらいの容量は確保出来たのではないかと思われる。

    「塵芥ですら最大限活用するとは…やっぱり樹ちゃんは天才じゃ!」
    「あんまりキレイなやり方じゃないけどね…まあ、スキルは成長したからいいや。」
    「訓練はそういうもんじゃよ、地味な作業の積み重ねが未来への糧となるのじゃ。」

    さすがのグラムもこのやり方には苦言を呈してくるかと思ったが、普通に褒められてしまった。

    「ところで樹ちゃん、集めたゴミはどうするんじゃ?」
    「それなんだけど…んー…今回は量が多いから『返却』かな…?」

    いくらスキルの創り出した異空間とはいえゴミを格納し続けるというのは
    嫌だったので、スキルで集めたゴミは、やはりスキルで元の場所に戻すことにした。

    「『返却』って、"元々あった場所に返す"っていう説明しかなくて、明言されてない
    制限が何がしかありそうなんだよね…距離が離れ過ぎてると元の場所に戻せないとか。
    『出庫』は格納物が少なくても練習出来るから…うん、やっぱり『返却』でいこう。」

    オレは膨大な数に膨れ上がった『分類別格納』に納められたゴミを一種類ずつ返却していった。
    すべてのゴミを返し終ってもグラムの様にスキルに★マークが付いたりすることはなかったが
    内部的には少しは成長していると思いたい。



    こうして『格納』の訓練を終えて再び部屋に戻って来たオレは、
    最後にグラムに頼んでカバンからキラメキドロンを取り出してもらった。
    このレアモンスターを無事使役出来たことで、路銀問題については殆ど
    解決したようなものだったが実際はどの程度まで貨幣を作り出せるのか
    その検証を行っておく必要があったのだ。

    「多分、この『ドロンシューター』ってスキルが貨幣を撃ちだす技能かな。」

    キラメキドロンに低速で貨幣を射出出来るか命令したところ
    ある程度は調整出来そうだったため、手持ちを増やしたい時は
    出来るだけ速度落とした状態で貨幣を射出してもらうことになった。

    加えて貨幣の種類も指定出来ず、10枚程射出した辺りで
    キラメキドロンが体を震わせ始めたため、オレは検証を中止して休息するよう命令した。
    とはいえ結果は金貨6枚、銀貨3枚、銅貨1枚と、ギルドで依頼を三件同時に達成した
    報奨金では足元にも及ばないほど高額なドロンを入手することが出来た。
    貨幣の種類が指定出来ないのは残念だが、依頼に奔走する必要がなくなったのは大きいだろう。

    「ふう…今日はこんなとこかな。」
    「樹ちゃんは日々成長しておるのう…お爺ちゃんは誇りに思うぞ!」

    制限付きではあるものの、毎日不労所得が得られるのはありがたいことだ。
    格納容量が大きくなったため、オレは手に入れた貨幣を格納してみることにした。


    ―『財布(小)』を習得


    「ん、財布…?」

    突如出現した通知に気付き、ステータス画面を開くと
    『分類別格納』に付随する形で『財布(小)』というスキルが増えていた。


    財布(小):貨幣を100枚まで格納出来る。


    アイテムボックス系の能力でよくある感じの能力だが、貨幣も枚数が
    増えるとかなりの重量になるためこうしたスキルは非常にありがたかった。
    ドロンを丁度10枚格納したタイミングで出現した…となると、ゴミ漁りを
    している時に目で追えなかった通知の中にもこの手のスキルがあったのかもしれない。

    この調子で能力を成長させて絶対に生き延びてやる。

    収穫の多い一日を終え、今夜は気持ちよく眠れそうだとオレは思った。
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