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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    たいぎさんが言ってた踊り子の髙な羂髙

    鍵穴の向こうに居たのは、一人の踊り子が居た。
    大方、父が気に入った踊り子を勝手に閨に招いたのだろう。
    踊り子はベールで顔の半分を隠して、父親の前で淫靡な躍りを披露していた。
    美しくも何処か艶を帯びた所作に、私は釘付けとなってしまった。
    父も同じだった様で、彼女の踊りから目を離せずに居るようだ。
    私も父親の様になれば、彼女を独り占め出来るのだろうか。
    そう思っていた矢先に、父親の首が転がり落ちていた。
    「任務、終了」
    その一言だけが、私の脳裏に焼き付いて離れなかった。


    父の亡き後、家業は私が引き継いだ。
    幼かった私より使えなかった親族達をさっさとクビにして、私は家督をすぐに引き継いだのだ。
    最近の市中では、大道芸として剣技を見せる者が多く居ると聞く。
    私は何となく、あの日の踊り子に会える気がして市中へと部下を連れて回っていた時だった。
    人集りの中で、剣技を披露している男が居た。
    激しさの中に美しさが含まれている男の剣技は、行き交う市民や行商達の目を奪う。
    男の剣技に、目を奪われた内の一人が私である。
    「彼に声を掛けておいてくれ。気になるんだ」
    「畏まりました」
    駱駝の上から、見下ろした男をもう一度だけ視線を向けた。
    その一瞬だけ目が合った気がして、私は見えるかも分からないのに笑みを浮かべる。
    彼が屋敷に来るとしたら、きっと夜になるだろう。
    その時は、またあの美しい剣技を披露して欲しい物だ。
    金には糸目は付ける気はなかったし、暫く滞在して貰ってもいいかもしれない。
    世界広しといえど、あそこまで見事な剣技を披露出来る人間は早々居ないだろう。
    「でも、あの剣技。何処かで見た記憶が」
    ギラリと光るシャムシールが、月明かりではなくろうそくの火に照らされて。
    美しい円舞を見せながら。
    『任務、完了』
    突如、脳裏に甦った声に、駱駝の手綱をきつく握る。
    まさかなと思いながら、私は部下が男に声を掛けているのを確認してから屋敷へと向かったのだった。
    暫くすると、部下が思ったよりも早くに彼を連れてきたのだ。
    剣技を終えた彼に話し掛けると、快く着いてきてくれたらしい。
    「どうも、初めまして。タカバと言います」
    「タカバさんね。私は羂索。あぁ、亡き父との血縁はないよ。私は、彼に拾われた養子だからね」
    するとタカバさんは、成る程と言うだけで深堀はしなかった。
    賢明な判断だと目を細めて笑い、彼に暫く屋敷に滞在して欲しい旨を伝える。
    するとタカバは、お金と滞在中の生活費等の工面をしてくれるのであれば滞在すると言ったのだ。
    「生活費も出してくれるならば考えます。これでも、俺は各国を回っている大道芸人なので」
    「そこは問題ないさ。客間の一番いい部屋を用意するよ」
    「ありがとうございます。何時、剣技をお見せすれば?」
    「そうだな。夕食時にでも如何かな?勿論、剣技が終わったら君も食べて構わない」
    「承知いたしました、羂索様」
    よろしくと言いながら、私は胸の奥で燻っている疑問をタカバへと投げ掛けた。
    「一つ聞きたいんだ」
    「はい、何でしょう」
    「君に妹は居るかい?君に良く似た」
    タカバの表情が本の少し固くなった気がするが、直ぐに笑みを浮かべて否定をされた。
    「居ませんよ。天涯孤独の身で、家族も持っていないので身軽に生きてます!それに、三人は似たような人が居るって言うじゃないですか」
    「そう……ならいいんだ」
    それはそれで、少しばかり残念だと思いつつも私は手を叩く。
    やってきた部下に、タカバを一等客を招く部屋に案内するようにと伝えた。
    タカバにも、何かあれば手を二回叩く様に伝えて私は夜を待った。


    ヒラヒラと舞うのは、薄い桃色のベール。
    艶かしく揺れていた腰付きは、女性にしては少しがっしりしていた気がする。
    血の滴っていたシャムシールを持つ手は確か、と考えた処で人の気配に私は寝ていたベッドの上から降りた。
    同時に突き立てられたシャムシールを握る相手に、思わず笑みが浮かんでしまった。
    「外したか」
    「やっぱり君だったんだね。あの踊り子は」
    そこに居たのは、昼間に屋敷に呼んだ男であるタカバ。
    私の閨に向かう為か、その身を包んでいるのはあの日の踊り子の衣装。
    胸の高鳴りが止まらず、自然と口角が上がっていく。
    「見られて居たのは、俺の油断だったから消しとかないとって思ったんだけど」
    「よくわかったね。あの時は私は子供だったのに」
    「観客の顔は覚えとくのが、大道芸人だから当たり前の事だよ。殺しは副業で、大道芸人が本職な!」
    「聞いてないけど。まぁ、いいや。どの道、君は逃げられないし」
    私の不穏な言葉に、タカバは警戒心を露にしているがもう遅い。
    タンっと足で地面を叩くと、無数のムカデがタカバを締め上げる。
    「妖術使い!?」
    「うん。だから、養子にされたんだよ。ねぇ、まだ夜は長いよ。付き合いなよ」
    顔を隠すベールを剥がして、私はタカバに口づけをした。
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