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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    脹虎と羂髙。再婚すると言った羂だったが

    「再婚しようと思っててさ」
    「ならさっさとしろ。そして、俺達と縁を切れ」
    クソ親父から話があると言われて呼び出されたのは、近所のファミレスだった。
    奢りと言われたが、クソ親父に奢られるのは癪だったからコーヒーだけを頼んでやり過ごす。
    「悠仁は遠慮無く頼むのに」
    「悠仁は成長期だからだ。俺はお前に貸しを作りたくないだけだ。それより再婚相手は、何時捨てるつもりなんだ」
    何を隠そう、このクソ親父は俺の母親を簡単に捨てていったのだ。
    養育費と慰謝料だけは支払ったが、母はそれで精神を病んで亡くなった。
    そして時を同じくして、俺の唯一の希望だった弟達も母親の後を追うように亡くなってしまったのだ。
    一人残された俺は自暴自棄になり掛けたが、このクソ親父はそのタイミングで悠仁を連れてきたのだ。
    「丁度いいから、君が面倒を見てやって」
    俺はその時、心底思ったのだ。
    妻の事も子供の事も、この男にとっては取るに足らないモノ。
    ならば、被害者が増える前に俺が先手を打ってもいいだろう。
    するとクソ親父は、心外だと言う表情を浮かべて料理を食べていた手を止めた。
    「今度は大丈夫だよ。やっと見付けたんだ、私の唯一を」
    「唯一?」
    俺はこの時、もっとこのクソ親父について問い詰めておくべきだった。
    そうやって俺はまた、一つの選択を間違えたのだ。


    クソ親父が再婚した事を悠仁に話すと、そうなんだと軽い返事で気にしている様子はなかった。
    幼い頃に自分を捨てた父親など、悠仁にとっては興味もないモノだろう。
    そう思っていた、ある時だった。
    珍しく悠仁が、クソ親父の話題を出してきたのだ。
    「脹相、父さんさ。再婚したんだっけ?」
    「そんな事は覚えていなくていい。悠仁、父さんではなくクソ親父だ」
    「それは流石に駄目だろ!?たまたま学校帰りに見付けたんだけどさ、奥さん?居なかったんよね」
    悠仁が言うには、四歳くらいの子供の手を引いて歩いているクソ親父を見掛けたらしい。
    そう言えば、再婚相手には子供が居ると言っていた気がする。
    興味もなかったから、今まで忘れていたがそんな事を言っていた。
    一二度なら母親は仕事だと思うが、ずっと二人で歩いているから不思議に思った様だった。
    だが昨今は、妻もバリバリ働く時代である。
    クソ親父の方が早く仕事が終わるから、子供の迎えはクソ親父なのではないかと悠仁に言った。
    しかし、悠仁は少し考えてから違うと言って首を横に振る。
    「違うとは?」
    「本当、一回も奥さん?見掛けてないんだよ。子供が、お母さんは?って聞いてたの聞いちゃってさ。だから、余計に気になったと言うか」
    その年齢ならば、母が恋しくなるだろう。
    毎回の迎えが、あのクソ親父なら嫌気がさしても仕方がない。
    見たこともない子供に同情しながら、まだ何か言いたげな悠仁に続きを促した。
    「まだ何かあるのか?俺はお兄ちゃんだからな、悠仁のモヤモヤを聞くぞ」
    すると悠仁は、うーんと唸りながら困ったように笑った。
    「何だろう、子供に向ける目?じゃないんだよ。こう、お前が俺を見る目?弟じゃない方の」
    「………あいつ、遂に子供に手を」
    それなら、やはり今世は俺が息の根を止めてやらなければ。
    そう思っていると、悠仁止められてしまった。
    「悠仁」
    「だから、最後まで話は聞けって!なんだろ、その子供も何か違うんだよ」
    最初は母親を恋しがっていたが、最近はクソ親父にべったりになった様だった。
    確かにそこまで変わると、クソ親父が何かをしているのは明白だ。
    悠仁の疑問を解決させる為にも、俺はクソ親父を呼び出す事にした。


    クソ親父を呼び出したのは、言うまでもなくあの日と同じファミレスだった。
    俺の就業時間もあって、会うのはどうしても夜になってしまう。
    この時間だから、もしかすると家族で来るかもしれない。
    そう思っていたが、時間にやって来たのはクソ親父と新しい妻の連れ子であろう子供だった。
    「君から呼び出すなんて珍しいね」
    「……その子は」
    俺が返事をせずに子供の方に視線を向けると、子供はサッとクソ親父の後ろに隠れてしまう。
    クソ親父に似た部分が無いから、きっとこの子供が件の連れ子だと確定した。
    「ほら、史彦君。脹相に挨拶して?」
    「……こんばんは」
    クソ親父に違和感を覚えつつも、挨拶をした連れ子に視線を合わせて俺からも挨拶をする。
    二つの大きな目が俺を射貫くように見つめ、くそ親父のスラックスを更にぎゅっと掴んでいた。
    「こんばんは。それから離れた方がいいぞ」
    すると史彦と呼ばれた子供は、キッと俺を睨み付ける。
    何か気に障る事を言ったかと思ったが、クソ親父が史彦を宥めていた。
    有り得ない光景に、これは夢なのかと自問自答する。
    このクソ親父には父性等無い筈だと思っていたが、史彦と言う子供に対してだけは特別らしい。
    ゾッとしつつも席に座らせると、メニューを史彦に見せているクソ親父を見てから自分もメニューへと視線を向けた。
    メニューを見ながらも、クソ親父と史彦の楽しそうな声が耳に届く。
    本題に入ろうと思って顔を上げると、やはり俺は史彦に睨まれてしまう。
    どうしてか分からずに、もう一度メニューに視線を向ける。
    すると俺が決めていない内に、クソ親父はタブレットを操作して注文していた。
    「史彦。ドリンクバーでお水を取ってきてくれるかな?」
    「うん、わかった」
    クソ親父に言われて、渋々頷いてドリンクバーへと向かって行った。
    俺へと視線を戻したクソ親父は、俺を冷めた目で見ながら声を掛けてきた。
    「それで、何かな?」
    「……再婚した女はどうした。悠仁がお前の嫁を見てないと言っていた」
    「あぁ、史彦を産んだだけの女の事か」
    「運命の相手だと言っていただろ。もう捨てたのか?」
    じろっとクソ親父を睨むと、その事かと呟いて至極面倒臭そうに俺の疑問に答え始める。
    「私の運命の相手は、史彦だよ。史彦を産み落とした女はおまけ程度って所かな。やっと会えたんだ、邪魔だけはしないで欲しいかな。まぁ、君も兄弟間でそうなんだから私の事を言えないだろ」
    何か言わなければいけないのに、俺は何も言い返す事が出来なかった。
    認めたくないが、俺はこの男の血を引いている事をまざまざと突き付けられていた。
    二つのコップを持って、戻ってきた史彦に視線を向ける。
    俺に対して向けていたのは、完全なる敵意。
    「邪魔しないでね、脹相」
    クソ親父の声を後ろに聞きながら、俺は一人ファミレスを後にしたのだった。
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