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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    愛の受け取り方が分からない髙とちゃんとくそ重感情向けてるのに気付いて貰えてない羂の羂髙
    続くかもしれん羂髙だけど、続くなら支部に移行させる

    「史彦、もっと頑張らないと誰にも見向きもされなくなるわよ」
    持ち帰ったテストの点数を見た母親は、溜め息混じりにそう言ったのだ。
    頑張らないと、愛されない。
    母親に愛されるには、テストでいい点数を取る事で愛される。
    愛とは、ギブアンドテイクなのだと幼い俺はそう学んだ。
    誰かに愛を欲するには、自分が何かを渡さないといけない。
    だから渡すものの無い俺は、誰にも愛を貰う事が出来ないのだ。
    親からも友人からも、愛を欲して頑張ってみたけど返ってこなかった。
    笑いを渡しても、相方からの愛は返ってこない。
    どうすれば愛を貰えるのかさえ、もう俺には分からなかった。
    「愛は呪いだよ」
    呪術師になってから、皆が口を揃えて愛についてそう答えていた。
    愛は呪いなら、その呪いすら貰えなかった俺は何なのだろうか。
    「愛が欲しい」
    自分の声で目を開けると、目の前には見慣れた自分の部屋だった。
    嫌な夢を見ていたと思いながら起き上がると、炬燵の向かいで俺をじっと見ている羂索と視線が合った。
    俺が動くとその動きに合わせて、羂索の視線も一緒に動く。
    何より無言で居る羂索が、無駄に怖くて恐る恐る口を開いた。
    「羂索さん、何時来られたんでしょうか」
    「君が寝ている間だよ」
    「だから何時ぅ!?俺、何時寝たの!?」
    炬燵は魔物だから、気付くと意識が飛ばされている事がある。
    自分のスマホで時間を確認したが、何時寝たのかも分からなくて意味がなかった。
    はぁと言う溜め息と共に、羂索から俺が寝ていた時間について教えられた。
    「君から連絡が途絶えたのが、二時間前だから大体二時間くらいじゃない?」
    「あ、本当だ。起こしてくれても良かったんだけど」
    「魘されてる君を見るのが楽しかったから、起こすのが勿体無くて」
    「それなら起こしてぇ!」
    魘されていたのなら起こして欲しかったけど、羂索なら見ている言われて頷ける。
    固まった体を伸ばして、炬燵の机に顎を乗せると羂索が顔を近付けてきた。
    何だろうかと思いつつ視線を向けると、羂索に額を叩かれる。
    「いたっ」
    「愛が欲しいって、どういう事?」
    「え?あー、何か俺言ってた?多分、寝惚けてただけだから忘れて?そうだ、羂ちゃん新しいネタが出来てさー」
    「髙羽。君って、触れて欲しくない部分の話になると話を逸らす癖あるよね」
    突然突かれた痛い所に、ピタッと動きが止まる。
    話を逸らす癖は自覚していたが、今それを指摘されるとは思わなかった。
    どうして今何だろうかと考えながら、視線を左右に揺らすと鼻を摘ままれた。
    「もう一度聞くけど、愛が欲しいって何?」
    具体的にどう説明すればいいか分からなくて、語源化出来ないもどかしさに言葉に詰まった。
    「ピン芸人の時に、愛が欲しいってネタを披露してた時の夢を見ただけだって」
    だから、どうにか誤魔化そうとお笑いに持っていこうとした。
    簡単に言えば、俺だけを見てくれる人が欲しかった。
    俺が笑いのネタを提供するから、笑ってくれるだけでいい。
    出来たら、俺を必要としてくれたら嬉しい。
    こんな子供染みた恥ずかしい事を、三十後半のおっさんが言っていい訳がない。
    「何時でも一人で愛が欲しいわぁって言うネタでさ。あんまりウケなかったし、今思うといいネタではなかったって気付いたんだよ」
    子供の頃から、欲しかった愛をくれた人は居なかった。
    況してやそんな俺を誰も見てくれないから、傷付かない様に本心を隠すのだけは上手くなった。
    本音は隠して、顔だけ笑っていればみんなスルーしてくれる。
    羂索だって、きっとそうだと思っていた。
    「ふーん、髙羽はさ。私と言う呪いに愛されてるのに、まだ愛を欲しがるの?」
    いつの間にか鼻を摘まんでいた手が離れて、炬燵の中に入れていた手が掴まれていた。
    突然の告白染みた言葉に、どぎまぎしながら愛想笑いを浮かべる。
    きっと聞き間違えだし、ここで喜んだら絶対後で傷付くのは自分だ。
    「もう羂ちゃんはさぁ、イケメンなの自覚してそれ言うの?女の子、いや男でも勘違いしちゃうからさ!やっぱりイケメンが言うと、様になって格好いいね」
    憎いねーと言って笑ったけど、羂索の表情は笑ったまま変わらない。
    いや、細められていた目がスッと開いて俺を射貫く。
    「君が私の愛を疑うと言うなら、今ここで君を殺して永遠を作り上げるつもりなんだけど?」
    「赤だけはやめてって言ったよね!?いや、待ってそれより愛って!?羂索の愛って何!?」
    「言わなかったかい?千年生きてきた呪詛師である私が、君に恋に堕ちたって」
    「聞いてないです。今知りました」
    「鈍すぎじゃない?良く今まで生きて来れたね」
    炬燵の中の手が離れたと同時に、羂索が立ち上がって俺の後ろに座る。
    狭くないかなと思っている間に、腕を回されて後ろから羂索に抱き締められた。
    すると腹に回された腕に力が入って、何も食べていない胃袋から何かが込み上げてくる。
    「羂ちゃん、お腹苦しい、です」
    「君が人からの愛にも呪いにも鈍いから、与えられてた事に気付かなかっただけでしょ。だから、私はちゃんと君に伝えるよ」
    首筋に吐息が掛かって擽ったさに肩を竦めようとして、ガブリと歯を立てられる。
    痛みに小さく声をあげると、噛まれた部分を舌で舐められてぞわりとした感覚に震えた。
    「そこ、絶対見える場所だよね?」
    「そうかもね?それで、髙羽。ちゃんと君の事は愛してるよ」
    腹に回されていた手が下腹部に移動して、俺は初めて自分が危機的状況である事に気付いた。



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