「呪いだよ、それは」
髙羽からの気持ちを聞いた時、咄嗟に出た言葉がそれだった。
上手い言い返しが浮かばなくて、センスのない返しをしてしまった。
そう思った後に、私を襲ってきたのは感じた事のない後悔。
「あ、あー、そうだよな。ごめんな、羂ちゃん。これからも相方としてよろしく」
私とは打って変わって、髙羽は何処かスッキリした様に笑っていた。
泣くとかしてくれたら、さっきのは冗談だって言えた。
でもこうして笑われると、それすらも言えなくてごめんとしか返せない。
それから髙羽の態度は変わる事なく、いつも通りだった。
「あ、羂索!お疲れ様ー。今日もすげー良かったし楽しかった」
屈託のない髙羽の笑顔に、胸の奥がムカムカして仕方がない。
私以外にも笑顔を向ける髙羽に、それは私だけと言う権利はない。
独占する権利を自分が放棄して、髙羽が了承しただけの事。
先輩にも後輩にも仲間の芸人にも笑顔を絶やさない髙羽に、プツンと来たのは収録現場。
思わず髙羽の襟を掴んで、私の方へと引き寄せる。
周りは何かのフリかと思って、囃し立てるが私の知った事ではない。
「君さぁ。私の事が好きなら諦めないでくれる?」
「け……羂索さーーーん!これ生放送だからー!!やめてーーー!!」
「何で、私だけが君の事で悩まないといけないわけ?君も悩めよ!!」
「え?あ、その、え??」
放送中止にせいと司会者が騒ぐのを聞きながら、髙羽にキスをしてやった。