煙草はあまり好まないが、状況に応じて吸いはする。
例えば、目の前で部下に拷問紛いの暴行をされている男が居る時。
椅子の背凭れを抱えながら座り、指で煙草を挟み紫煙を吐き出す。
片手で部下を制止させて、煙草を咥え直して貰った原稿に目を通した。
「すっごい三文小説だけど、今流行りのネット小説かな?え?違うの?週刊誌に?へぇ、よくこれを週刊誌に売ろうと思えたね」
バサバサと男の目の前に原稿を投げ付けて、煙草を咥えたまま立ち上がる。
ひっと小さく悲鳴を上げる男の前にしゃがんで、煙草を指に持って目の前でちらつかせた。
動かす度に、紫煙がゆらゆらと揺れる。
男は何をされるのか分かっていないらしく、怯えた目で私を見て居るだけだった。
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