いつわたの進捗 ピピピ……ピピピ……カチッ。
枕元で鳴り響く目覚まし時計を止め、布団の中で何かが動き出す。
「んん……眩し……」
差し込む朝日に耐え切れず、ベッドの上で一人の少女が起き上がった。大きな欠伸を一つし、鮮血のように真っ赤な左目を擦る。
細く整った指が左目にかかる眼帯をはじいてしまった。白い眼帯には緑の髪が絡まっているようで、それを直す少女は若干不機嫌そうだ。
「痛っ……ようやく取れた……ふあぁ……」
けだるげな少女はふと、左に視線を落とす。ベッドが面する壁際には、色あせたうさぎのぬいぐるみが倒れていた。
「おはよう、リータ」
穏やかな表情を浮かべた少女は、リータと呼ぶぬいぐるみを座り直させ、その頭を優しく撫でた。桃色の体はくすんでしまい、大きな耳もすっかり垂れきってしまっているが、ほつれや目立つ汚れは見当たらない。よほど大切なものなのだろう。
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