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    stgr救急隊で全員が出勤してます。
    個人の妄想です。
    口調に違和感があっても許してください。
    二次創作です。

    ウィル・ナイアー誘拐事件/鳥野視点ももみパイセンがずっと泣いてる。

    いつもいつも元気でニコニコ笑って、時には大人顔負けの鋭さで誤りを指摘して、救急隊のムードメーカー的な存在である、ももみパイセン。治パイセンからの無線でウィルさんの名前が出た途端に跳ねるように病院から出ていった背中を追いかける。一歩遅れて病院から出たら、目の前を走り去っていくモンスターカーにたたらを踏んで、雪道の中を猛スピードで走り去っていってしまった後姿に踵を返して自分のヘリを止めてある駐車場に向かって走り出す。静かに雪が降り出した街の中、自分の改造した車で追いかけるのもありだったけどこの雪道でスリップするよりはヘリの方が圧倒的に早いのは目に見えてる。
    GPSを確認しながら何度呼びかけても無線に応答してくれなくて歯がゆい思いをしながら高速の上を飛んでいれば続けて鳴ったダウンの通知とデッドの通知に一瞬ももみパイセンからの無線で小さく悲鳴が上がった。GPSの向かう先にちょうど通知が出て、それがウィルパイセンと神崎だってことに気づいた。
    山を越えて漸くももみパイセンの車が見えた。向かう先には開けた場所があって救急車とヘリが止まっているのが見えた。ももみパイセンの車はそこにつっ込むように進んでいってそのまま通り過ぎていった。広場に視線を向ければ地面に倒れてる神崎とそれを治療している隊長の姿。そこにウィルさんの姿はなくてももみパイセンよくあのスピード出して見えたなと感心して後に続く。犯人の車らしきものが見えたかと思ったらいきなり方向を変えてこちら側に向かって走ってきた。ももみパイセンの車とすれ違ったのを見てヘリもクイックターンして後を追おうとしたらちょうど来た方角に車をせき止めている青い車を見つけてその中の人が白衣を着ているのが見えてあれが医局長だって気づいた。
    犯人の車がさらに切り返してももみパイセンの車にちょっとぶつかってまた北方面に向かって車が走る。ぷぁーーーーーーーーーとクラクションの音が高くなって音の出どころを目で追えばももみパイセンがハンドルに顔を埋めていた。多分、イライラしてクラクション叩いたんだろうな。俺もよくやるからその気持ちはわかるよ。
    かと思えば急発進した車に慌てて自分もその後を追いかける。途中で隊長から声をかけられたけど、ももみパイセンが返事してくれないってそれだけ言ってそのピンクの車体に視線を戻した瞬間の事だった。
    どうにかヘリで追いかけていた車がブレーキ痕を残しながらガードレールのない場所に向かって滑って行って、そのまままっすぐに谷の方に落ちた。
    ひゅ、と息をのんで車を追いかける。ヘリの下についたライトで車の位置を探して少しホバリングする。高速道路から谷底まで3,4階建てのビルが一棟くらい入りそうな高さだ。もしこれでももみパイセンまで大けがをしたら、ウィルさん、きっと悲しむ。入らない通知にゆっくりヘリを下ろして谷底にひっくり返った車を覗き込めば中には誰もいなかった。いったいどこに行ったんだって背筋を冷たい汗が伝い落ちる。もう一度ヘリに戻って車が落ちた軌道上の雪山を睨むようにももみパイセンの姿を探す。真っ白な雪に、高い木が生えているせいで見えにくくて見つからなかったらどうしようって焦って探しているうち、ちょうどヘリが入れないところでももみパイセンが木に引っかかっているのを見つけた。自力で谷底に落ちる車から抜け出したらしいその体が雪の中でぐったりとしている。急斜面だったけど何とか止められる場所を見つけて駆け寄った彼女は額から血を流して体はかすり傷だらけでキットを使って治療しようと鞄に手を伸ばした時にうっすらと目を開いて俺の名前を呼んだ。
    「とり、の、くん」
    「ももみぱいせん!!!!!」
    「ぅ、あぅ…」
    気を失っていただけらしいももみパイセンを助け起こしたら震える手で鞄からいつも持っている包帯を出して巻いて自己治療を済ませた。一応、ファーストエイドキットも持ってきてあったのに彼女は俺の方を見てウィルパイセンを助けに行かなきゃって言う。自分だってあちこち痛いだろうに薬で誤魔化して。
    「ももみぱいせん、病院戻ります?」
    「やだ」
    「でも、怪我しましたよね?」
    「平気。巻き巻きしたもん」
    「ほんとに?ほんとにへいき?」
    「わたしより、ウィルの方がずっと痛いし」
    「でも」
    「いいの!!!!!」
    小さくため息を吐いて彼女のいうままヘリを飛ばす。今、隊長たちの位置は北所の前からもう少し南の方に向かったところ。そろそろ街につこうかというあたりだった。街に近い場所に他の救急隊員がいるのと、北所の少し上あたりにもう一つ救急隊のGPSがついていて同じ方向に向かっているのが分かる。
    「ももみパイセン」
    「どうしたの、鳥野君」
    「ほんとに、大丈夫なんですね?」
    「平気。私たちが、私が、ウィルを助けなきゃ」
    「……」
    その目は真剣で、普段からお仕事に対して真面目な人だけれど俺も同じくらいウィルさんの事心配だったし、そろそろ誤魔化すのやめて、腹をくくろう。

    救急隊に入った頃、まさか自分がこんなにもこの居場所に執着するなんて、思っても見なかった。
    街には割と前からいてそれこそ自分が楽しければ何でもよかった。犯罪者をやってる奴もいたし、警察をやってる奴も、タクシー運転手をやってた奴も。享楽的に、自分の楽しいを優先させて、それが結果的に犯罪だったことだって少なくない。でも、気づけばどんどん人が周りから消えていって、あれっ?て思ったときにはひとりになって。
    このままじゃいけないなって思って犯罪を辞めてちょっとの間大人しくして。救急隊か警察、どっちかに入れたらいいかなって思いながら、まぁ自分の得意な航空技術を活かせそうだったからって理由で救急隊の面接を受けた。
    ロビーで彷徨く俺を気にして声をかけてくれたのはウィルさんだった。ウィルさんとはその時初めて会ったような気がする。俺の過去を知らない人。面接も一緒にいてくれて、隊長と話す間もそばにいてくれた。
    忙しい人みたいであまり病院には来ないんだけどももみパイセンがずっとウィルさんのことすごいって優秀なんだよっていうから怖い人だと思ってたけどいざ話をしてみれば結構話があって。それこそヘリとか航空バイトとか、自分の興味のあることを話せるのが嬉しかった。
    航空機のアクロバット飛行とかも誘ってみたらチャレンジしてくれたり、ふざけてみたら乗ってくれたり。
    そうしているうちにみんなと打ち解けて、ふざけてウィルさんにわがまま言ってももみパイセンをからかってみたり。救急の仕事は忙しいけど、自分の時間も取れるし、穏やかで優しいみんながいてくれたからずっとここにいたいって、いつのまにか俺の居場所になってた。
    だからさ、正直俺、結構怒ってるんだよ。ウィルさんを誘拐した犯人のこと、ちょっと許す気になれないくらい。
    犯罪を色々やってた頃、それこそ今みたいに気軽にガンライセンスなんて手に入らなかったから大枚を叩いてブラックマーケットで色々買い込んだ。
    コレも、その中の一つ。
    ももみパイセンが工事現場の奥にある穴の中に落ちていってしまった車の中に残ったウィルさんを助けに走り出した後ろでヘリのストレージにしまってあったスナイパーライフルにサイレンサーをつける。
    流石にさ、この辺お巡りさんいるみたいだし。俺は別に捕まっちゃってもいいんだけどみんなが心配しそうだから、だからできるだけ証拠を残さないように。
    サイレンサーにスコープ、硝煙反応を残さないように手袋もしっかりつけて。
    救急隊のヘリじゃなくてよかった。あれちょっとホバリング大変なんだよね。
    覗いたスコープの先、隊長が犯人を捕まえようと必死になってる。
    マグナムさんも、あっちこっち怪我だらけで。
    犯人の車にぶつかって行った真っ青な車の中で、かげまる医局長が気を失ってる。
    俺の大切で大好きな人達に、こんな事をした犯人なんて死んでもいいんじゃない?って思ったんだけど、それじゃなんかやだなぁって思ってピンクの髪のアニメキャラみたいなお面をつけた犯人の膝を狙って銃を打ち込んだ。

    パスンって軽い音の後、糸が切れた操り人形みたいに、かくん、って犯人が地面に倒れた。それを横目にライフルをストレージに突っ込んでヘリを直進させる。ももみパイセン、穴の中で上に上がれなくなってたみたいだったからヘリで拾って、少し狭い場所だったけどどうにか外に抜けてピルボックス病院まで一直線に。屋上にヘリを止めたらももみパイセンはまっすぐに処置室に走っていった。俺も手伝おうかとも思ったけどウィルパイセンの処置を必死にするももみパパイセンの邪魔をする気になれなくて処置室の外から中の様子をうかがう。真剣な目で治療する姿は普段おふざけが大好きな姿とは似ても似つかない。ぴぴ、と音が鳴って無線にノイズが乗る。
    『隊長、犯人確保されたと警察から連絡がありました。』
    『あぁ、すまない。さっき警察に犯人を引き渡しておいた。』
    「あれ…治療したんですか」
    『いや、ちょうど警察に菓子谷君が来ていたようでな。向こうに任せたよ』
    「そうですか」
    『一応救急から抗議というかな。結局プリズンにおくっても最近は脱獄されてしまうことが多いだろう』
    『まぁあんまり言わないようにしてますけど』
    『だからすぐにプリズンにおくらず少しの間留置所で拘束してもらうことになった』
    「そういえばなんですけどこういうのって犯人から慰謝料とかふんだくれるんですかね」
    『あぁ、それも警察に織り込み済みだ。流石に今回のは私も看過できないしな』
    『一応警察から提示されているのは病院への立ち入り、ウィルさんへの接見禁止、あとは犯人の資産を9割没収し、半額を病院への寄付とウィルさんへの慰謝料にとのことですけど』
    『まぁ、そのあたりが落としどころだろうな』
    立っている後ろでガチャリと扉が開く。ウィルさんが車椅子に乗せられてゆっくり、病室の方に連れられて行った。ももみパイセンは泣き腫らした顔をしていてその痛ましさにまた胸が苦しくなった。
    ここに近づかない、ウィルさんに合うのも見るのも禁止、それだけじゃ足りないって感じるのは俺だけなのかな。俺達が感じたように、ウィルさんがやられたみたいに、とことんまで苦しめてもう二度と俺達に近寄りたくないって思わせるくらいにしなくていいのかな。
    『仕返しって、犯罪になるんですかね』
    『シソジ?』
    「目には目をって、やつですか?」
    『ぎん…』
    声が震えたけど仕方ない。震える体を押さえてどうにか息を吐いた。
    足音を鳴らさないようにそっとウィルさんの運ばれた病室に近づく。病室の前のソファに腰を下ろせば中からももみパイセンがウィルさんを呼びながら泣く声が聞こえた。
    「しませんよ、仕返しなんて」
    『…あぁ、』
    「ももみパイセンも、ウィルさんも、それを望みません」
    『そう、ですね…』
    「とりあえず、ウィルさんが全快したらみんなでパーティしませんか?」
    『いい考えだな。いい店探しとくよ』
    『いいですね。せっかくお金いっぱい入るみたいだし、貸し切っちゃいません?』
    『お、それもいいな!』
    皆の声に明るさが戻ってほっとした。ウィルさんも、早く起きてくれたらいいんだけど。
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    DONEウィルもも。月見酒の続き
    甘くて苦い「…?」
    なんだか見られている気がしてきょろきょろと辺りを見る。病院にいるとき、誰かと話をしているとき、アタシの首筋を刺すような明らかに敵意があります、みたいな視線。色々あって、そういうものには過敏になってるみたいでなんていうか気になってしまって。そうしたら鳥野君とらーどーに名前を呼ばれて、何でもないよって首を振る。
    「ももみさん?」
    「ももみパイセン?」
    「ほぇ?あ、ごめんごめん。なんでもない。何の話だっけ?」
    「もー、ちゃんと聞いててくださいよ。」
    「この後の話なんですけど、」
    病院の、テレビがある方のベンチのところでみんなで集まっていつものように話をしていた。話題は大体最近あったこととか、この3人だと牧場のこととか。鳥野君もらーどーも街にお友達が沢山いてアタシの知らないことを知っているから話してるだけでも楽しいし、そうじゃなくてもこの三人でいたずらするのとかも楽しくて。最近はちょっとらーどーをからかって遊ぶのが楽しいんだけどみんなで笑ってるのは楽しい。二人とも長い時間病院にいてくれるから一緒に行動することも多いし、遊びに誘ったらついてきてくれるの、すごくありがたい。
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