明ける年の瞬間にさくりさくりと雪の積もった道を歩く。ニューイヤーが近いのもあってか、ロスサントスの街中に人は少ない。この街にはジャパンから来た人が多く住んでいて、ジャパンではニューイヤーを迎える時は家で過ごす人が多いのだと誰かが言っていたのを聞いた。いつも一緒にいる救急隊のみんなも、今日ぐらいは家族や恋人、大切な人と過ごしているんだろう。
一瞬強い風が吹いて雪が吹き上げられた。あまりに強い勢いだったからぎゅうって目をつぶって腕で顔を守って冷たい風を遮った。プルプルと顔を振って、パーカーについた雪を払う。さっきまでと変わらない風景なはずなのに、街の中の家から漏れる明かりが、周囲を走力するライトが、なんだかとても幸せそうに見えて自分はその中に入れないような気がして、おなかの奥がきゅうとなって泣き出したくなる。
雪って綺麗だけど苦手。
冷たいし、寒いし、
雪の中にいると音が聞こえなくなることがあって、まぁ、まさに今なんだけど、世界から取り残された感じがして怖くて、泣きたくなる。一人っきり、独りぼっち
ママに会いたい。
そんなこと、あたしに言う権利はないの、分かってるけどどうしようもなく寂しくて、
歩けなくなって、その場にしゃがみこんだ。
触れた膝が冷たい。ぽたぽたと頬を涙が伝って膝に落ちて、
寒しい
悲しい
誰かあたしと一緒にいてよ
あたしを一人にしないでよ
蹲って、しゃくりあげていれば自分が座っているそこに影がかかって、肩に降っていた雪がなくなって
「…?」
不思議に思って顔を上げれば傘を持ってどこかを見るウィルがそこにいた。
「え、ウィル…?」
「あけましておめでとうございます。」
「ほえ?」
「こんなところで何してるんですか?」
「いや、特に…」
「そうですか。もしよかったらなんですけど暖かいものでも食べに行きませんか?」
「今から?」
「そうです。こんなところにいるから体も冷え切ってるでしょう」
差し出された手に手を重ねればそのまま引っ張り上げられてコートの中に抱き込まれた。コートの中は暖かくてさっきまで寒くて泣きそうになっていた気持ちが嘘みたいにするするほどけていく。よ、とウィルの方から声が聞こえたと思ったらそのまま抱き上げられてすたすたと歩きだした。
「すっかり冷えてますね」
「あ、うん」
「うちでいいですね?部屋、エアコンつけたままにしてありますから」
「ん…」
普段あたしがいくらねだっても抱っこもしてくれないのに何も言わなくても抱っこしてくれた。ぴったりくっついたウィルの体は暖かくてさっきまで出そうになってた涙とは違うものが溢れそうになった。ママには会えないけど、迎えに来てくれる人がいた。
「うぃるー…」
「どうしました?」
「今年もよろしくね」
「はい。よろしくお願いしますね」