或る朝 カーテンを閉める間も無く、お互いを貪り求めてベットに縺れ込んだ翌朝。いつも通り身体はバキバキで、身じろぎするだけで痛いし怠い。
口を開けて、気持ち良さそうに寝ながら、身体に巻きついているデカい身体が恨めしい。
「……えーじぃ」
捻り出した声は酷く掠れていて、誰が聞いても喉を酷使したことが丸分かりだ。
この男の腕の中から逃れようと懸命に身を捩っても背中にかかる寝息は少しも乱れることなく、最近さらに逞しくなった腕は動く獲物を逃すまいとぎゅうと強く締め上げてくる。
こちらに来て体格のアドバンテージが日本にいた時と比べて活きない、むしろディスアドバンテージとなっている現実に直面しメニューの増えた筋トレは当たり前に生活の一部として取り入れられており、着々と逞しく育っている身体は俺だけじゃなく、色んな人をも魅了しているんだろう。
…生意気だ
上半身だけ振り返り高く整った鼻を抓ると、息苦しそうに眉間に皺を寄せ、いやいやとゆるく顔を振っている。
「んふ」
「…」
機嫌悪そうな声と幼いような仕草がちぐはぐで、胸がきゅうと締め付けられる。こんなアホ面のくせに、強敵となりうる人間にかち合った笑顔は見る者の意思とは別に視線を惹き寄せられてしまう。そしてきっと、誰よりもバスケの事を考えてきた。(ま、うちの流川も負けてないケド)
思いの外幼く、当たり前の人間らしいことで苦しむこいつはとても綺麗で、きっと誰もが思わず手を差し伸べずにはいられなくなってしまうのだ。
「っあ…?」
ぼーっと考えていると、沢北がもぞもぞ動く度に脈打つ違和感を感じる。
何とか腕を外して、抜け出そうと身体に力を込めると
「は?!こいつ…!ほんっと最悪!」
「ん、…リョータぁ」
「ばか!ちょ、あ、っだめ!」
腹の中でムクムクと大きくなるそれに、渇ききらない欲が煮え凝る。昨夜から納まったままのそれが存在を示すようにゆると揺すられ、ぎゅうと沢北が抱き締めてくる度、柔く開けた最奥にぐりと先端が擦り付けられるのが分かった。
「…リョータの中あったかい」
「っ起きてたのかよ…!」
ぴくと跳ねる褐色の肩と、ぽてりと色付いた胸の飾りを主張するように反らされた柳腰。その初心さと耽美さが沢北の脳みそを跡形もなく掻き回す。
「リョータ、お願い。だめ?」
「〜〜お前ほんとにさぁ!!」
頑固で愚直なバカなバスケ人間。そんな男を可愛いと思って甘やかしてしまう俺も、大概の馬鹿なのかもしれない。
結局その日は夕方までベッドから動くことができず、ドーナツ型のクッションを敷いて生活する羽目になった。