Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hisoku

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 56

    hisoku

    ☆quiet follow

    # sgo1000文字第14回のお題『◯◯しないと出られない部屋』をお借りして書きました。期間外なのでこっそりと。ぎり全年齢向け、尾語り、雪が降ると帰宅難民になる杉元を自分の部屋に泊める尾形の話です。

    #sgo1000文字
    sgo1000Characters
    #現パロ
    parodyingTheReality
    #杉尾
    sugio

    しないと帰れない部屋 この冬は積雪が多く、今夜も通勤で利用している鉄道が運転見合せとなり、駅構内で今後の運行について貼り出された紙の前に立ち尽くして溜め息をついている杉元をまた、家に連れて帰ってくることが出来た。不規則不揃いに落ちてくる雪片を見上げ、感謝する。



    だからぁ、俺は恋人としかしないんだって。

     部屋の中で半ば管を巻くような調子でそう云われても納得がいかず、首を傾げる。

    説明になっていない。

    だから恋人じゃないだろ。

     自分と俺の顔を人差し指で交互に差して、恋人という単語だけ小声で杉元が訴える。それを聞きながら炬燵天板の端にあったペンと付箋を掴む。

    言質取る気か?

    そうじゃないが。

     見えないように左手で囲いを作って書き込みながら、それで? と促す。

    それでって、だから抜きっこをしただけじゃ恋人って言えねえだろ。

    そうか。じゃあ、何をどこまですれば恋人になるんだ? キス以外で。

    そういうんじゃなくて、気持ちだろ、その好きとか。

     好きという単語の時にまた杉元が小声になる。ペン先でとんとんと付箋を叩いてそれを聞く。



     初めて杉元を部屋に泊めた時、明け方に疑似セックスをした。素股をさせてやった。今夜みたいに雪が降って帰宅難民になった杉元を泊めてやった翌朝のことで、俺も人肌を識りたかった。それが忘れられなくて、先日の雪の日にまたあれがしたいと誘って断られ、今日また誘って、恋人じゃないから駄目だ、と云われ、お前のいう恋人って? と訊けば、キスをする仲、と宣うのでキスしようとすると両手首を掴んで引き剥がされ、今、この問答をしている。

    キスをしたら、あの時のあれが出来るなら、キスさせろよ。

    だって、お前、俺と、

    恋人じゃないから? 解った、もう帰れ。

     立ち上がって杉元の腕を掴んで立ち上がらせる。仔犬みたいに、えっ? えっ? という顔をした杉元に鞄を持たせ、玄関へと引っ張り連れていく。玄関ドア前まで行って足下を見て靴を履くよう促し、杉元が靴を履いている間を仕込みを済ませる。靴を履き終えドアノブに手を掛け、開けようとして鍵が掛かっていることに気付いて、サムターンが抜かれていることにも気付いて、駅構内みたいに貼り出されていた付箋の文字を読み上げて杉元が苦笑する。

    『隣にいるお前のことを好いている人物とキスをしないと出られない部屋』

    帰れるもんなら帰れ。

     サムターンを見せつけながら告げると、俺が悪かった、帰れるけど帰らね、と云って杉元がやっとキスをしてくれた。  
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺☺❄❄☃☃💕💕🔒🔒💖💖💖💖💖💖💖💖💒💒😍🔓🔓❤😍❤💞💖❄❄❄☃☃☃😘😘💒💒🔓🔓🔓🔓🔓❤❤❤🍑🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    hisoku

    DOODLE過去作
    湯沸室で杉と尾がお茶を飲む話です
    前世記憶あり現パロ
    尾語り
    湯沸室 喫煙をする習慣はないので、就業中の休憩といえば緑茶だ。あるいは珈琲。それと少しの甘いものかしょっぱいものを一口頬張るのが日課で、デスクワークに根が詰まり、肩も凝りそうだったので仕事の効率が落ちる前に気分を変えようとひとり湯沸室に向かった。買い置きのドリップコーヒーを淹れるために湯を沸かそうと薬缶のことを思い、買い置きのミネラルウォーターはまだ残っていたっけと思い起こしながら廊下を行く。
     スタッフルームのあるフロアの一角、廊下奥の角の階段と廊下を挟んだ少し離れた斜向かいにトイレが、その対角線上の奥まった場所にひっそり湯沸室はあった。そこは小会議室の並びでコの字に壁と壁と窓に挟まれた造りになっていて、二畳半程の広さがあり、冷蔵庫と棚、その棚の上に電子レンジ、隣に小さな流し台があった。流し台にはガス台が二口と壁にガス給湯器が備えつけてある。どうってことはない必要最低限が備え付けられている極普通の湯沸室だが、流し台が木目調の引き出しのついた懐かしい感じのする流し台で、ばあちゃん家の台所を彷彿とさせて、そこを緑茶を飲みながら眺めているだけでも癒しを覚えた。面積の狭さも落ち着く。
    6580

    related works