新しい年からじゃあ、片付けも終わったし、俺等は帰るわ。
あと数分で今年が終わるという時間になって、酔って赤くなって炬燵天板に頬をつけて眠りこけていた白石を揺すって腕を掴み、脇腹に自分の肩を入れながら房太郎がそう云って立ち上がり、えっ、帰んの? と杉元が驚いた顔をして立ち上がって、何となく自分も立たなきゃいけないような気がして立ち上がった。ぞろぞろと全員で玄関に向かう。
来年も皆で愉しく呑もうなあ。
白石を無理矢理歩かせて房太郎が帰って行くのを上がり框の上から見送る杉元を見つめる。ふいにこちらを向かれて変に気まずくなった。俺から、お前は帰らないのか、と訊いた方が良いのだろうか。
二人きりになっちゃったな。
首に手を当てて杉元がそう云う。
そうだな。
相槌を打って俯く。帰らないと解り、寒いし戻るか、と言って先に居間に戻ると、施錠音がして杉元も居間の炬燵の中に戻ってきた。十九時半頃からずっと点けっぱなしになっているテレビ画面の方を見るとなく見て、想定外の二人きりにどう接すればいいのか戸惑う。
尾形好きだと云っては何度かキスをされたが、本当に俺達の関係は何なのだろう。会う時もいつもさっき帰った房太郎と白石と俺と杉元の四人で会うし、デートに行ったこともない。誘われたことも、ない。間が持たず、自分で自分の頭頂をひたすら撫でる。
お前、今、困ってる?
え。
いや、それ、その癖、落ち着きたい時とかにもするだろ。
指摘されて手を下ろして、杉元の顔を改めて見る。直ぐ様見つめ返されて、また困りながらも訊きたいの方が勝って口を開いた。
お前、俺のどこが好きなんだ。
そうやって頭撫でるところも好きだし、猫舌なところとか、ちょっと無理するところとか、見ると決めたら真っ直ぐ俺の目見てきてくれるところとか、意外と拗ねやすいところとか、仕草とか喋り方とか。
列挙されてまた頭頂を撫でそうになり、意地で炬燵布団の中に手を仕舞った。
まだあるけど、そういうところが好き。
そう云われて鼓動が身体の中で響く程速くなった。今胸の中を占めている感情の名前が解れば、いくらか管理出来そうなのにそれが解らない。浮かんできた名前で合っているのか自信が持てず、頭頂を撫でたくなる。
俺もお前のことが好きなのか。
それを一緒に確かめる年にしないか。日付け変わったな。今年もよろしく、尾形。
杉元がそう云って笑って、自然と身体が動いて、よろしく、と伝えて初めて自分の方からキスをした。