「……お、れーお」
ハッとして、声がする方に視線を向ける。どうやらぼんやりしていたようで、凪が「おんぶして~」と腕を伸ばしながら潤んだ目で俺を見下ろしていた。レオも酔っちゃったの? なんて尋ねる凪の方がいつもよりポヤポヤとしていて、どことなく足取りも覚束ない。そんな俺も変わらず足元が危うくて、ふわふわと浮いているような心地だった。
数十分前まで飲んでいたアルコールがそうさせるのか、はたまた隣に凪がいる嬉しさで気持ちが弾んでいるのか。今の俺にはよく分からないが、気分は頗るいい。
そして、気分がいいのは凪も同じなのだろう。ふらふらと光源に吸い寄せられる羽虫のように凪が車道側を歩いていこうとするから、俺は慌てて凪の腕を引っ張った。飲み屋が連ねる駅前から少し離れた住宅街とはいえ、夜になってもそれなりに車通りがある。案の定、白い車が猛スピードで横を通り過ぎていった。
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