12/22:冷えた指先 触れた頬の温かさによって自分の指先の冷たさを思い知ったランスロットは、その手を急いで引っ込めた。
「す、すみません!冷たかったですよね……」
一連の動作を不思議そうに見守っていた視線に耐えきれず、観念したように謝るランスロットに対してジークフリートは、ああ、と腑に落ちたような表情へと変わっていた。
先程まで鍛錬をしていた身体は、冷気を駆使した技を放ち続けていたことですっかり体温が下がっていたらしい。魔力で氷を作り出すことに長けているランスロットは、その冷たさに慣れているからか、通常の体温より低い状態であることに気付かず過ごすことがあった。
だからこそ、触れる時はいつも細心の注意を払っていたというのに。今日は焦りが勝っていたと面伏せな気持ちでいるランスロットに、ジークフリートは声をかける。
「手を出してみろ、ランスロット」
唐突な指示に対して多少の動揺を見せつつも、ランスロットが素直に差し出すと、ジークフリートはその手を掴み、流れるような動作で自らの頬に掌が当たるように添えた。
「ジ、ジークフリートさん!?」
焦るランスロットを気にかける様子もなく、ジークフリートは言葉を紡ぐ。
「お前が思っているより、この手はそこまで冷たくはないぞ」
ほらな?と軽く頬を擦り寄せられた頃には、ランスロットは指先どころか身体の全ての体温が上がっているような感覚に襲われていた。
貴方の前だけです。
もう少しだけ熱が引いたら声に出して言ってしまおうかと、そう考えながらランスロットは得も言われぬ感情と静かに戦っていた。