破壊的イノベーションの行方「あれ? 水上おるやん」
誰もいないと思われた部屋の明かりをつけると、盛り上がった布団の中でミノムシになっていた水上がのっそりと顔を出した。
時刻は日付が変わる少し前、確かに明かりを消してベッドの中でくるまっている時間帯としては適していると言えるだろう。自分のベッドならば。しかしここは生駒の住む単身者向けアパートの、生駒が一人暮らしするタイミングで購入したシングルベッドが置かれた、生駒の城とも呼べる空間だ。その城の天守閣、生駒のベッドの中には長い身体を器用に折り畳んだ水上が我が物顔で枕に頭を預けながら「おかえりなさい」と返す。と言っても、生駒としても水上が己の家に居座っているのはさして珍しい光景でも無いので上着をハンガーにかけると水上のもっさりとした頭をひと撫でした。
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