言葉の力■ボツネタ
「まあ、ボクはレプリロイドだけどね。外身がいくら似ていても、心臓の代わりに動力炉が積まれているしオイル代わりに血を流すことはできない。本当の意味ではヒトじゃないんだ」
「それでも人間と共にある存在として、いずれはレプリロイドもヒトの括りに入ってしまうだろ。シエル達研究チームが技術の進歩を推し進めているし、近い将来には本当にちょっとした違いでしかなくなってしまうかもしれない。それこそ生まれた日の差くらいに。ただ、そうなるにはまだ人間もレプリロイドも、それから環境も技術もなにもかも間に合っていない。間に合っていないからこそ不満が生まれる。積もった不満は魔法みたいに消えてくれる状況じゃないんだ。解っているだろう? ……そこでボク達ができることは一つしかない、と「ボクは」思っているんだけど」
「……説得か」
「ご名答。話し合うなんて言っても、結局は問題を先送りにするだけだからね。先送りにしたその先で時代が彼らに追いつくことを祈るばかりだよ。そうだね、差し当たって今生きている子どもたちが十分に大きくなるまでには。……納得させられるかなあ」
キミ、結構短気なところがあるんだもの。そう言ってエックスは横目でこちらを見遣る。解っている。こういう交渉はオリジナルエックスの方が向いている。自分が考えるより先に手が出るほど気が短いことも。だが、市井の人々にとってサイバーエルフの一体でしかない彼に言わせたところで説得力など皆無だろう。勿論そのようにしてきたのだから当然なのだが、今ばかりは交代してほしい気持ちは否めない。
「まあ、可能な範囲で努力してみよう。最悪の場合は……」
「大丈夫大丈夫。エックスさまはちゃあんと人間のこともレプリロイドのことも見ていらっしゃるから、問題なんて何もないよ。ねえ、エックスさま?」
そのように言われると万事がうまく回るように思えてくるのだった。無限に可能性が広がっていく気さえする。オリジナルエックスにそんな機能はないはずだが、それこそ魔法みたいに言葉の力が作用する。