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    さいさい

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    さいさい

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    Undertaleとかいうゲームの二次創作

    リーンカーネーション(再終/砂場)「こんな山の中で土木作業とはな。お砂場遊びには飽きたのか?」
    人間は手に持ったシャベルを適当に地面に刺して立ち上がる。土まみれの手を掃ったが、そんなに汚れは落ちなかった。
    「これは二度とぼくがここから落ちないようにするための祈りのようなものなんだ。ぼくにかけられた呪いのように、このぼくが忘れないためのマーカーとして。だからぼくのソウルと同じ色、決意じゃなくて、なくしたものの形」
    赤いバターカップが風にそよぐ。けれどずっと無風のままだ。
    「このぼくが見たぼくをサンドボックスに閉じ込めておくためでもある。家の中から鍵をかけるみたいにね。リセットしたなら何が起きるか、きみにだって解るでしょう? ぼくは始まってしまったからどのおしまいにも辿り着けない。けれどもう一度始まることはできる、今度はこのぼくを誰もいない地下へ突き落とすんだ。手の両方には杭を打って、言葉は使えないように喉を裂いて」
    それでいいのか、と尋ねたかった。何もしない選択が最善なのだ。質問は飲み込んで、黙って人間の様子を見ていた。その目の代わりに円い月が煌々と照る。あの目で見下ろしている。決意の輝きに染まった月の光が人間を照らしている。揺らぐ可能性は一つの観測結果へ収束する。
    「ぼくは――少なくともこのぼくはひとつ残らず躱せるようになった。流した血と命の分だけ上手くできるようになったんだ。ちゃんとそこで見ていて。全部避けられたら褒めて。一番邪悪でそれでも純粋な気持ちだけになるなら、それがぼくの心のすべてだ」
    「遊んでやろうか、お前さんが満足するまで」
    「罪を重ねないタイプのやつならね。でもぼくが飽きるなんてないよ。どうするつもりなの」
    「だからうんざりさせてやるのさ。もうたくさんだってぐらいにな」
    人間は意外そうな顔をして、それから少しだけ笑った。自分以外の生き物を初めて見つけたのが嬉しくてたまらないように。
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    さいさい

    CAN’T MAKEUndertaleとかいうゲームの二次創作
    リーンカーネーション(再終/「二度目」)「今度こそ自分の口を噤んでおくためのものだからね。放っておけないからぼくは見て、忘れられないから声を聞いている。そして話し損ねたことを少しだけ残して後何年何十年と反芻し、このぼくの中だけにきっちり納得して収まるように様々な可能性を検討している。でも、ぼくにとってはあり得たかもしれないけれど、このぼくに起こったことじゃない。きみはさ、将来の夢とか考えたことある? ぼくはあるよ。お花屋さんになりたい。学校の先生になりたい。やさしくて頼れるみんなのリーダーになりたい。かっこいい正義の味方、ヒーローになりたい。誰もがあこがれる、世紀の天才的科学者になりたい。やさしくありたい。幸福である可能性を持っていたい。それよりなにより自由でいたい。ついでにもう一つ、このぼくの結論に辿り着きたい。ね? 普通でしょう? なにか悪いことが起きたときに「かみさま助けて」って祈るのと同じぐらい無意味でしょう? だけどどうか、どうにかこの停滞から抜け出したくてぼくはいつも考えているよ。ぼくが得たであろう日々を。このぼくが語り言い聞かせるための可能性を。ぼくができるのは選ぶことだけ、選んでしまえば何かが変わる。きみたちが選んだ結末かぼくが選んだ結末か、選べるのはどちらか一つだけ。いずれにしろきみたちが不可説不可説転の分岐から選んだたったひとつを選ぶか、きみたちがたったひとつを選ぶまで涅槃寂静の確率を振り直すか、ただその違いでしかないんだ。そしてそうしなかった方のぼくには決してなることはできない。だからこそすべての選択肢は十分に吟味し精査し注意深く検討されなくてはならない。今まさにこの瞬間も最良を選んでいる真っ最中で何も決まっていやしないんだ。最善を尽くすためにね」
    1937

    さいさい

    PAST初出時のものです。https://www.pixiv.net/artworks/33511860(現在非公開)のキャプションとして載せた文章。RZ1前捏造
    Scapegoat(初期版)ユグドラシルへは公務の合間を縫って一度だけ踏み入ったことがある。自分の「オリジナル」がどういうレプリロイドであったのかを確かめるために。ネオ・アルカディアの最深部にあるというそれは巨大な機械仕掛けの大樹だった。驚くほど簡単に目的のレプリロイドは見つかった。大樹の根本に埋められるようにして、そいつはひっそりと目を閉じていた。自分に瓜二つであった。部品も、装甲も、造形も何もかも全てが。なんだ、こんなものか、と思った。同じ言葉を声に出して言った。「なんだ、こんなものか。」「こんなって、それはひどいな。」どこからか声がする。ネオ・アルカディアに属する者でもここはほんの一部の者しか立ち入ることは出来ないはずの場所に、誰かが潜んでいることなど有り得ない。思わず周囲を見回すと、弱々しく今にも消えそうなエルフが一体居た。「返事をしたのはキミかい」まるでそうだ、とでも言いたげにエルフが体を揺らせた。「キミがエックスだね」なんだ、このなれなれしいエルフは。思わず顔をしかめると、エルフは悪びれもなく、まだこの世界に来てから間もなくて右も左も分からないんだと、そう言ってのけた。本当に自分が話している相手がどこの誰かもわからないようだ。仕方なしに名乗りを上げた。「ボクがこのネオ・アルカディアの統治者エックスだ。失礼な言動は謹んでもらおうか。さて、エルフ。キミは何者だい。返答次第ではただでは済まさないぞ」エルフはしばらく考えていたようだったが、やがてこう言った。「ボクに名前なんかないんだ。ずっとここにいたんだもの。エックスさまが来てくれたから、これでやっとボクは外に出られるよ」体を揺らし、あまりにも無邪気にそういうものだから、拍子抜けしてしまった。もしかしたらこのエルフはオリジナル・エックスが封印された時、巻き添えを食ってしまった哀れな者なのかもしれない。それ以上相手にする気は失せてしまい、捕まえて外に出してやることにした。敵対意志を持っていないエルフの一体くらい外に放しても問題はないだろう。「ありがとう、ボクを外に出してくれて。エックスさま、大変だろうけどそんなに気負わないでね。」エルフは言うだけ言ってふっと姿を消した。全く、変なエルフだった。それからずっと後になって気づいたが、あれが本物の「エックス」だったのではないだろうか。もし仮にそうだったとしても、あの言葉は今も理解できずにいる。
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