Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    さいさい

    なんでもかんでも

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 25

    さいさい

    ☆quiet follow

    あまり内容がないおまけ

    Integrator(後日譚)サンプル■おおむね終始こんな感じ。



    丘の上にもクローバーが広がっていた。誰かが踏み入ったような形跡はなく、放っておいたら勝手に伸びていたといった体でほとんど草むらに近い状態だ。エルフに誘導されるまま、緑の葉を押し分け進んでいく。
    頂上らしき地点でふとエルフは止まり、前方を指さす。
    「思った通りだ。やっぱりここからならよく見える」
    指の先には見慣れた建物。何とか廃材をかき集めてきて建てた家屋。人間用の食糧生産プラント、間に合わせの大型発電機に車輪の外れたトレーラー。自分の足元と同じようにその一帯には緑が広がっている。
    「なんだ、帰ってきたのか」
    朝方出発してきたばかりだというのにもう戻ってきてしまったのか。呆れてエルフの方を見ると病み上がりのエックスさまには無理させられないとはぐらかされる。今はむしろ修理を終えたばかりで一番調子がいい状態だと言ってもいい。
    「他に帰る場所なんてボク達にはないだろう? それに、今のところボクにとってのアルカディアはあそこなんだ。ゼロがいて、シエルもいて、そしてキミもいてくれて、これ以上の地は他にないよ。……ボクはね、ヒトとレプリロイドが共に暮らせる場所にしたかった。誰もイレギュラーとして処分されなくていい、そういう理想郷であってほしかった。戦わなくてもボク達は十分にやっていけるはずだから」
    「お前は本当に足元を見ない奴だな」
    「キミは全然前を向かないんだね。……でも、ボクはキミにはなれない。昔々のネオ・アルカディアは、キミがいた頃より楽園はずっとずっと遠かった。まあ、悩むことがボクの取り柄であるせいもあるんだけどね。ボクがエックス様になるには、正義を成すための力が足りなかった。正義ばかりじゃ何も救えないことをキミは教えてくれた。けれどね、今の世界を見ているとそもそもそんなもの必要ないような気もするんだよ。これからはそんなものじゃなくて、もっと平和的な何か……例えば両手にいっぱいの花束なんかをさ。そういう世界であってほしいんだ。キミならできるだろう? だってエックスさまだもの」
    「それは少し買い被りすぎてやしないかい。ボクだって判断を誤ることくらいあるよ。……ボクが正しく裁くにはお前が要る。これからも要る。今までずっとボクはお前のために生かされてきた。エックスの名を消さないために、だ」
    そこで言葉を切り、改めて向き直った。穏やかに風が吹いている。手を伸ばせばきっと届く。その距離でいい。近過ぎれば見えるものも見えなくなる。だから言葉で伝えるのだ。
    いつか彼の名を貰い受けた時のように、エルフはただ静かに待っていた。冬明けの青い空が、傾きかけていく陽光が、一秒よりも狭い間隔で変わっていく。
    「だから、オリジナル。……お前はこのボクのために生きろ」
    返事など聞かなくても最初から決まっている。エックスの残していった青の形は今ここにしかない。それをどうして否定できるだろうか? 思った通り彼は笑って承服する。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    さいさい

    CAN’T MAKEUndertaleとかいうゲームの二次創作
    リーンカーネーション(再終/「二度目」)「今度こそ自分の口を噤んでおくためのものだからね。放っておけないからぼくは見て、忘れられないから声を聞いている。そして話し損ねたことを少しだけ残して後何年何十年と反芻し、このぼくの中だけにきっちり納得して収まるように様々な可能性を検討している。でも、ぼくにとってはあり得たかもしれないけれど、このぼくに起こったことじゃない。きみはさ、将来の夢とか考えたことある? ぼくはあるよ。お花屋さんになりたい。学校の先生になりたい。やさしくて頼れるみんなのリーダーになりたい。かっこいい正義の味方、ヒーローになりたい。誰もがあこがれる、世紀の天才的科学者になりたい。やさしくありたい。幸福である可能性を持っていたい。それよりなにより自由でいたい。ついでにもう一つ、このぼくの結論に辿り着きたい。ね? 普通でしょう? なにか悪いことが起きたときに「かみさま助けて」って祈るのと同じぐらい無意味でしょう? だけどどうか、どうにかこの停滞から抜け出したくてぼくはいつも考えているよ。ぼくが得たであろう日々を。このぼくが語り言い聞かせるための可能性を。ぼくができるのは選ぶことだけ、選んでしまえば何かが変わる。きみたちが選んだ結末かぼくが選んだ結末か、選べるのはどちらか一つだけ。いずれにしろきみたちが不可説不可説転の分岐から選んだたったひとつを選ぶか、きみたちがたったひとつを選ぶまで涅槃寂静の確率を振り直すか、ただその違いでしかないんだ。そしてそうしなかった方のぼくには決してなることはできない。だからこそすべての選択肢は十分に吟味し精査し注意深く検討されなくてはならない。今まさにこの瞬間も最良を選んでいる真っ最中で何も決まっていやしないんだ。最善を尽くすためにね」
    1937

    さいさい

    PAST初出時のものです。https://www.pixiv.net/artworks/33511860(現在非公開)のキャプションとして載せた文章。RZ1前捏造
    Scapegoat(初期版)ユグドラシルへは公務の合間を縫って一度だけ踏み入ったことがある。自分の「オリジナル」がどういうレプリロイドであったのかを確かめるために。ネオ・アルカディアの最深部にあるというそれは巨大な機械仕掛けの大樹だった。驚くほど簡単に目的のレプリロイドは見つかった。大樹の根本に埋められるようにして、そいつはひっそりと目を閉じていた。自分に瓜二つであった。部品も、装甲も、造形も何もかも全てが。なんだ、こんなものか、と思った。同じ言葉を声に出して言った。「なんだ、こんなものか。」「こんなって、それはひどいな。」どこからか声がする。ネオ・アルカディアに属する者でもここはほんの一部の者しか立ち入ることは出来ないはずの場所に、誰かが潜んでいることなど有り得ない。思わず周囲を見回すと、弱々しく今にも消えそうなエルフが一体居た。「返事をしたのはキミかい」まるでそうだ、とでも言いたげにエルフが体を揺らせた。「キミがエックスだね」なんだ、このなれなれしいエルフは。思わず顔をしかめると、エルフは悪びれもなく、まだこの世界に来てから間もなくて右も左も分からないんだと、そう言ってのけた。本当に自分が話している相手がどこの誰かもわからないようだ。仕方なしに名乗りを上げた。「ボクがこのネオ・アルカディアの統治者エックスだ。失礼な言動は謹んでもらおうか。さて、エルフ。キミは何者だい。返答次第ではただでは済まさないぞ」エルフはしばらく考えていたようだったが、やがてこう言った。「ボクに名前なんかないんだ。ずっとここにいたんだもの。エックスさまが来てくれたから、これでやっとボクは外に出られるよ」体を揺らし、あまりにも無邪気にそういうものだから、拍子抜けしてしまった。もしかしたらこのエルフはオリジナル・エックスが封印された時、巻き添えを食ってしまった哀れな者なのかもしれない。それ以上相手にする気は失せてしまい、捕まえて外に出してやることにした。敵対意志を持っていないエルフの一体くらい外に放しても問題はないだろう。「ありがとう、ボクを外に出してくれて。エックスさま、大変だろうけどそんなに気負わないでね。」エルフは言うだけ言ってふっと姿を消した。全く、変なエルフだった。それからずっと後になって気づいたが、あれが本物の「エックス」だったのではないだろうか。もし仮にそうだったとしても、あの言葉は今も理解できずにいる。
    998

    recommended works