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    さいさい

    なんでもかんでも

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    さいさい

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    Undertaleとかいうゲームの二次創作

    リーンカーネーション(中/チョコレートは嘘)「だったら、一度も誰も傷つけず、何とも戦わず、みんなの期待に応えてみせたぼくという設定で話をしよう。これでぼくはもう僻んだり妬んだりできないし、ひとの言うことを言葉通りに受け取ることもできる。みんなと友達になれるかも」
    「そうは言ってもリセットする手段は手放さないんだね。それってやっぱりさ、きみに悪意があるからじゃないの? 手にしたその棒切れでぼくを叩くこともできた。愛すべききみのおともだちを塵にしてやることだってできた。まだ見ていない出来事を体験することだってできたし、もう一度その道程を歩くこともできた。やってみたいでしょ? やりたくなるでしょう? キミのソウルとポリシーとそれからおともだちからの信頼と引き換えに、味がしなくなるまで消費することもできたんだよ。その楽しみを本当に捨てられる?」
    「捨てられなかったんだ。だからちゃんと自分で持っている。いつでもリセットできるようにね。でもぼくはきみほど絶望しちゃいないし、楽しければ楽しいし、悲しいことは悲しいと感じるよ。それにぼくは冷蔵庫にチョコレートがあったら食べずに取っておくタイプなんだよね。いくらお腹が減っても冷蔵庫にはチョコレートがあることを知っているからそれで満足なんだ。問題は、ぼくが「チョコレートを食べたい」って思っているところなんだけど」
    「なかなか難しいことを言うね。つまりそれってさ、我慢しているだけじゃないの?」
    「我慢かもしれない。そうじゃないかもしれない。あのね、冷蔵庫に入っているのが実はチョコレートじゃなくバタースコッチシナモンパイだっていいんだ。夢想でも妄想でもその可能性に浸りながら、誰かの幸福と両手にいっぱいの傷とがあれば、同じ味を……つまり他のフリスクが手にしたであろう幸福と同じ気分を味わえるから、ここにはぼくしかいなくたっていいんだ。ぼくがいてみんながいるなら、最初に地下に落ちてからみんなで地上に出るまでとその後もきっと同じ味がするよ。極端な話、きみたちが板に描かれたただの張りぼてだったとしてもぼくは気づかない。気づく必要なんてない。……この話誰かにしたような気がする。」

    「じゃ、その話をした奴はキミにとって特別な存在ってこと?」
    「特別? その言葉の意味が一意の、という意味ならば、ぼく以外全員特別だよ。十把一絡げの有象無象じゃなくてさあ、全員がユニークな存在なんだ。ぼくがママに話したことがそっくりそのまま全部きみに伝わるわけじゃないでしょう? ああ、トリエルにはこんな話しないけどね。それはトリエルにとっての理想とは違うだろうから」
    自由に視点を変えられることこそ、ここには自分しかいないことの何よりの証明となる。

    水には沈むし日に当たれば足元に影ができる。生きているのだって同じ。
    例えば、ぼくを操る手を知ることができたなら、やったのはぼくじゃないと言い張ることができたかもしれない。ぼくの中に矛盾が一切なかったら、開き直ることができたかもしれない。そもそもぼくではなく他の誰かだったとしたら、責任を押し付けて一人で逃げることもできただろう。
    何の答えも信じない。ただ、ぼくを信じるみんなのことを信じている。突き詰めて考えるほどに不確かであいまいになっていくのだから、自分を信じるよりかはいくらかましだと思っている。

    「自分だけは違うんだ、って思ってるんじゃない? だから他の可能性を受け入れられないんでしょ? いつだって自分が特別他のみんなは凡庸である。だってそうじゃなければ主張なんてする必要がないんだからさ。右に倣えで自分もそう思うんだって適当に言っておけばよかったのに」
    「……そうだとしても、気持ちの強弱は別として、みんながそれぞれ自分は特別だって思いたいんじゃないかな。極端な話、みんな「自分しかここにいない」んだ。人間を、いや、鳥も獣も魚も水も緑も生きているものもそうでないものも大きく二つに分けるとしたら、「自分か、それ以外」にしかならないでしょう。考えることはできても、誰かの主観を自分の主観のように感じることはできないもの」
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    さいさい

    PAST初出時のものです。https://www.pixiv.net/artworks/33511860(現在非公開)のキャプションとして載せた文章。RZ1前捏造
    Scapegoat(初期版)ユグドラシルへは公務の合間を縫って一度だけ踏み入ったことがある。自分の「オリジナル」がどういうレプリロイドであったのかを確かめるために。ネオ・アルカディアの最深部にあるというそれは巨大な機械仕掛けの大樹だった。驚くほど簡単に目的のレプリロイドは見つかった。大樹の根本に埋められるようにして、そいつはひっそりと目を閉じていた。自分に瓜二つであった。部品も、装甲も、造形も何もかも全てが。なんだ、こんなものか、と思った。同じ言葉を声に出して言った。「なんだ、こんなものか。」「こんなって、それはひどいな。」どこからか声がする。ネオ・アルカディアに属する者でもここはほんの一部の者しか立ち入ることは出来ないはずの場所に、誰かが潜んでいることなど有り得ない。思わず周囲を見回すと、弱々しく今にも消えそうなエルフが一体居た。「返事をしたのはキミかい」まるでそうだ、とでも言いたげにエルフが体を揺らせた。「キミがエックスだね」なんだ、このなれなれしいエルフは。思わず顔をしかめると、エルフは悪びれもなく、まだこの世界に来てから間もなくて右も左も分からないんだと、そう言ってのけた。本当に自分が話している相手がどこの誰かもわからないようだ。仕方なしに名乗りを上げた。「ボクがこのネオ・アルカディアの統治者エックスだ。失礼な言動は謹んでもらおうか。さて、エルフ。キミは何者だい。返答次第ではただでは済まさないぞ」エルフはしばらく考えていたようだったが、やがてこう言った。「ボクに名前なんかないんだ。ずっとここにいたんだもの。エックスさまが来てくれたから、これでやっとボクは外に出られるよ」体を揺らし、あまりにも無邪気にそういうものだから、拍子抜けしてしまった。もしかしたらこのエルフはオリジナル・エックスが封印された時、巻き添えを食ってしまった哀れな者なのかもしれない。それ以上相手にする気は失せてしまい、捕まえて外に出してやることにした。敵対意志を持っていないエルフの一体くらい外に放しても問題はないだろう。「ありがとう、ボクを外に出してくれて。エックスさま、大変だろうけどそんなに気負わないでね。」エルフは言うだけ言ってふっと姿を消した。全く、変なエルフだった。それからずっと後になって気づいたが、あれが本物の「エックス」だったのではないだろうか。もし仮にそうだったとしても、あの言葉は今も理解できずにいる。
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