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    エース

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    atsv ミゲピタ 用意周到にオジサンが孤立するのを待つミゲルと、まんまと巣に絡め取られてしまったオジサンの話
    ⚠️オジサンとMJがまた離婚してる

    #ミゲピタ

    巣に囲う パタ……、パタ……と力ない足音が聞こえて来る。
     普段アイツの足音は〝仕事〟でない時はもっと元気で軽快な音をしている。最も、その元気な足音もここの所随分と耳にしていない。
     それも当然の事だろう。何せアイツは自業自得によって再び妻を失い、今度は愛娘も失ったのだ。
     
     亡くした訳では無い。ただアイツが、今まで通り問題を問題と思わず、気が付いても先送りにしたせいだ。家族との時間の取り方、娘を此処に連れて来る事、危ない、金にもならない〝仕事〟について。まともな大人ならばパートナーと一度は真剣に話し合った事だろう。
     だがピーター・B・パーカーという男が、ただの一度でもそう出来ていたのなら、この結末はやって来なかったに違いない。或いは、結末がもう少し先だったか。
     ピーターの善良な友人達は、皆一度は彼に「話し合うべき」と提言した。それに対してピーターは「また今度」「話し合おうとは思ってる」「いつか」と言って真面に取り合わなかった。いや、取り合う気が無かったのでは無い。ただ、取り合ってしまえば結末が早まると勘違いしていたのだ。それか、問題を直視しなければ問題が勝手に消えてくれるとでも言わんばかりだった。
     
     だが当然、そんな事有ろう筈も無く二か月前ピーターとMJの離婚が調停された。ピーターはそれに対し大いに絶望し、落ち込んだ。それはMJと二度目の離婚であったし、最愛の娘と別れて暮らす事になるのだから自業自得とは言え落ち込むのは理解出来た。
     ピーターの善良な友人達はそれぞれ励ましたり、𠮟りつけたり、気分転換に誘ったり、或いは何もしなかったりをした。俺もピーターの善良な友人の一人として、離婚するまでは彼を諭し、妻子と別れてからは呆れた顔をしてピーターには何もしなかった。だからだろう。ピーターは人が気軽に入ってこない此処を逃げ場とした。
     
     モニタールームに入って来たピーターの足音が止まり、布ずれの音が聞こえる。どうも隅の方の暗がりにしゃがみ込んだらしかった。俺はそれには振り返る事はせず、ピーターが入ってくる前と同じように仕事を続けた。まだ振り返るには早すぎる。
     暫くそうして普段通りを続けていると、ぐず……と鼻を鳴らす音が聞こえて来た。始めは小さく、殺すようにして。だが次第にその音は大きくなり最後にはグズグズと絶え間なく聞こえてくるようになった。鼻を鳴らす音に嗚咽が混ざり始めた頃になり、俺は泣き声の主にまで聞こえるよう、態と大きく溜息を吐いた。溜息を聞いて、ヒグッと一度大きく嗚咽を漏らすとそれ以降ピタリと止んでしまった。
     ……態々此処を選んでおいて、その癖口で何かは要求してこない。出来れば優しく慰めて欲しいがしつこく言い寄って俺にまで嫌われたくは無い。甘ったれで計算高く、それでいて健気。俺はピーター・B・パーカーという男の、こういう所が堪らなく好きなのだ。
     そう、俺はピーターの事が好きだ。彼が妻子を持っていた頃から好きだし、何なら彼と出会う前、俺が彼を一方的に見知っていた時からずっとずっと好きだった。
     だから、待った。ピーターがこうなるのを。ずっとずっと、待っていた。

     俺はもう一度、今度は軽く溜息を吐いてコンソールから降りると隅の方でしゃがみ込むピーターに歩み寄った。柱の影に隠れるように小さく三角座りをしているピーターは、両腕で抱え込んだ膝に顔を埋めている。時折隙間からぐず……とピーターの啜り泣きが聞こえてきて、それに釣られて小さく肩が揺れている。
    「ピーター」
     俺が声を掛けるとその肩がビクンッと大きく跳ね、より体を小さく丸めた。きっと、怒られるとでも思ったのだろう。俺はそれに気づかない振りをして、そっとピーターに歩み寄った。ピーターまであと二歩、となった所で俺は足を止めた。
    「ピーター……。顔を上げろよ」
     俺がそう命令すると、ピーターはグズッと鼻を啜りそれからゆっくりと顔を上げた。上げられた顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
     そしてそんなピーターの事を、コンソールの明りで出来た俺の影が覆い隠している。ピーターの顔は情けなく、見れた物じゃない顔の筈なのに。俺は汚れたピーターの顔を見て、腰にゾクゾクとしたものが走ったのを感じた。

     これがずっと、欲しかったんだ。
     俺はうっかり、そううっかり勃起したり、厭らしい笑顔になったりしないよう特別穏やかな表情を心掛けながらゆっくりと腰を下ろし、ピーターの汚れた顔をそっと拭ってやった。
    「なぁピーター……、そんなに泣くなよ」
    「ぅ、グズッ……、ミゲ、ミゲルゥ……お、おれ、おれが、」
    「あぁほら、来いよ」
     俺は仕方ないなという振りをして両手をピーターに広げ、腕の中にピーターを誘う。ピーターは促されるまま俺の腕の中に飛び込んできて、俺の肩にそっと顔を埋めた。俺は飛び込んできたピーターの背中に両腕を回し、優しく囲い込んでやった。
    「おれ、おれが悪いんだ……わかっ、わかってる、分かってるんだ、で、でもっ」
     グズグズ泣いて、ピーターの目から零れ落ち続ける涙が俺の肩を濡らしていく。だが普通の布じゃないこのスーツはピーターの悲しみを受け止めはせず、ただ上っ面を滑り落ちていく。まるで一緒に悲しんでやっている振りをしている俺みたいだった。
    「ピーター、あんまり自分を責めるな」
    「うぅ、ひっぐ、っ……」
    「あぁもう、仕方ない奴だな……」
     甘く優しく慰めてやっても、ピーターは泣き止もうとしない。俺はピーターを抱く腕に力を込め、ギュウ!とキツく抱きしめた。泣き暮らしているせいで少し痩せただろうか? いやきっとこの後は自堕落な生活になって、放っておけば前回みたいにまたブクブク太り出すんだ。でも、今度はそうはさせない。俺はピーターの耳元に唇を寄せ、そおっと囁いた。
    「ピーター……、俺が居るだろう?」
    「っ、ひっぐ、う、うぅ……」
    「俺がずっと、お前の傍に居てやるから」
    「……ゲ、ル……ミゲル……」
     そろりと顔を上げたピーターは、優しく微笑む俺に気が抜けたのかほぅと息を吐きまたポロポロと泣き出した。
     その泣き顔があんまりにも可愛かったものだから、俺は。
    「ピーター」
    「……え、」
     薄っすらと開いていたその唇に思わずキスを落としていた。ちぅ、と唇と唇を合わせるだけの、可愛らしいやつ。ケアも何もされていない荒れた唇に触れただけなのに、俺は堪らぬ満足感と高揚感を覚えた。瞬きの間程ピーターの呼吸を奪って、俺は舌を入れたくなる衝動を堪え何とか唇を開放した。
    「え、あ……ミ、ミゲル……?」
     キョトンとして、一体何をされたのか全く分かっていない顔を見て俺は思わずクスリと笑ってしまった。
    「悪い、思わず……。……嫌だったか?」
    「あ、え、い、いや……それは別に……。……でも、何もキスまでしなくても……」
     どうもピーターは俺が励ます為にピーターにキスをしたのだと勘違いしたらしい。本当は、全くそんな事無いのだが。
    「でも元気出ただろう?」
    「う、うん、まぁ……それはそう……かな? ……ありがとう、ミゲル」
     そうしてへちゃり、と笑ったピーターを俺はもう一度抱きしめ、仄暗い独占欲が漸く少し満たされるのを感じた。
      
     俺はこの日の為にピーターの善良な友人の振りをしてきた。そう、全部〝振り〟だ。
     まるで巣を張る蜘蛛みたいに、絶好の狩場を作り、獲物が来るのを唯ひたすらジッと待った。
     ピーターは、気づいていないのかそれとも気が付きたくないのか分からないが、MJが一体全体どうやって“メイデイを危険な場所に連れ回すピーター”の証拠を集めたと思っているのだろうか? どうして自分でなくても良いような小さな事件にさえ、俺に呼び出されていたと思っているのだらろうか?
     どれもこれも全部、俺が張った罠だった。獲物を狩るための、絡め取るための立派な巣。
     肝心の獲物の方と言えば、ただ待てば向こうから来るのは分かっていたのでこれ程簡単な事は無かった。だがそれは楽とは言えなかった。なにせ獲物が逃げきれない場所に来るまで待ち続けなければならず、それは俺に多大なる忍耐を要求した。
     だが、俺は耐えきった。
     獲物は巣の中心で力尽きた。そして俺は無事思惑通り獲物の傍にスルリと滑り込むことに成功した。後はこの自慢の牙で毒を流し込み、二度と動けなくしてやれば良い。巣から逃がさず、ただ俺に食われるだけの哀れな獲物。ピーター・B・パーカーはこの手に落ちた。待ち望んだこの獲物を、俺は二度と手放す気は無かった。
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    エース

    DOODLEムンナ マク♀ステ 仮面舞踏会パロ
    あめさんとのお喋りで盛り上がったやつ。何かちょっと書きたかったのと違うんだけど、一旦これで。
    この後無事二人は再会し、お喋りに興じるがジェがマクの仮面を借りてステに会いに行きジェステも始まる。三人が顔見知りに(顔は知らない)になった頃漸く名乗り合うマクステと、出会って速攻名乗るジェイク。
    マスカレード! 仮面舞踏会。それは一時身分やしがらみを忘れ、享楽に耽ける場。表向きは日々の憂さ晴らしや拙い秘密の遊戯と言った所だがその実、密通や淫行が蔓延る会もそれなりにあった。
     俺はそもそも舞踏会というものに興味が無く、それは仮面を被っていても同じ事だった。寧ろ相手が誰か分からない分厄介な事も多い。そしてそんな俺がこの仮面舞踏会に参加している理由は、単に兄弟のお目付け役だった。いや、半分がお目付け役、半分が兄弟に無理矢理引き摺られて来たせいだ。
     俺の双子の兄弟であるジェイクはこういった華やかな場が好きで、好んで顔を出す。そして俺なんかより遥かに上手に様々な思惑に満ちた、この見掛けばかり豪華な生け簀を泳ぐ。今日も俺を連れ出すだけ連れ出して、自分はサッサと舞台の中央に躍り出てしまっている。
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    エース

    DONEムンナ マクステTOS天使疾患パロ。三人の誰でパロディするか悩みに悩んで、結局マクステだなとなりました。理由としては、TOSの公式CPはロイコレだと思っているので、それならば三つ子でやるならマクステしかなかろう、と。
    配役の方は〝何かと契約して人で無くなる〟ならそれはマークだし、〝普段は抜けてるのに大事な人の事はちゃんと見てる〟のはステだろう、と思ったから。なのでロイコレからのマクステ解釈です。
    消えた涙 ぼんやりとベッドボードに背を預け窓の外を眺める。明るすぎる都会の空ではろくに星も見えないが、こうして朝まで時間を潰すのにも随分と慣れた。ただ静かに息をして、隣で眠るスティーヴンを起こさない様に気を付けていれば良いだけだ。
     窓の外を眺めるのに飽きたら今度は隣のスティーヴンを見る。それを繰り返していれば、朝までそう時間も掛からない。
     今日もやっと日付が変わった所だ。朝までのあと六時間くらいを、いつものように窓の外とスティーヴンとを往復しながら過ごそうかと思った時、隣の塊がゴソリと動いた。
    「マァク……、眠れないの?」
    「スティーヴン……悪い、起こしたか」
     窓から振り返るとスティーヴンが眠たそうにしながら目を擦っていた。静かにしていたつもりだったが、やはり隣で体を起こしているべきでは無かったのだろう。いっそベッドから離れて、そのままソファで過ごすべきだったと後悔した。
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