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    お題 手錠 香りもの 縁台
     
    現パロエース視点です、お題で手錠を引いてしまうあたりやっぱりエースはエースなんだな…

    #サボエー
    savoie

    エアブラスト にょきっと雪から顔を出した縁台に腰掛け、吹き抜けの室内庭園から空を眺める。
     患者とナースの叫び声が遠く聞こえて、ここにサボが入院するのかと思うとこの世の終わりくらいに感じたけど、たった3ヶ月閉鎖病棟行ってアルコール抜いて身も心もマシになるならそれでいいのかもしれないと思いはじめてきた。
     だって、出会いから全部間違ってたんだ。
     サボが死ぬほど優しいからおれとルフィはあの家に置かせてもらってただけで、ほんとだったら出会ったその日にもうさよならが当たり前というか。
     やさしさに漬け込んで壊しちまったのはおれというか。
     手に持ったスマホから元気な声が聞こえてネガティヴから浮上する。

    「おいエース聞いてんのかよ!」
    「聞いてねえや」
    「聞こえてるだろ!帰り大丈夫か?サボ朝酒飲んでねえから気ぃつけろよ、部屋出た瞬間絶対走ってコンビニ行くからちゃんとバイク乗せてやらねえと」
    「大丈夫だルッチせんせに言ってっから」
    「ハトのやつ…おれあんま好きくねんだよな。くるっぽーだし。でも他の病院じゃ精神科ねえもんな」

     そもそも病院自体が少ない。
     高速乗って来てようやく小さな病院が数件見つかるような、娯楽がパチンコと酒とタバコしかないような、そんな田舎。
     ルッチせんせのあやしい噂はいろいろ聞くが、痴呆と鬱は甘えとかいう時代錯誤なやつばかりが闊歩してる街じゃここしか。

    「また豚汁作ってくれよな」
    「また?おいしかねえだろ」
    「おいしいぞ!おれの豚汁はあれだけだ」

     人でごった返した待合室の受付には長蛇の列。
     2週間先まで予約が埋まってましてと繰り返すおねえさんにキレ散らかすじいさんが若い男に引かれて出ていく、押しのけてロリータを来た男が泣き喚いていつ診察してくれるんですかと叫ぶとおねえさんはやっぱり2週間先まで予約が埋まってましてと言う。
     私見てました火傷顔で金髪の人が受付なしで診察入ったのって声もちらほら聞こえる。
     この狭い田舎であいつは王様だから。
     王様じゃなかったらおれはあんなことしなかった。
     風にくすぐられながら長蛇の列を潜り抜け、大きな男が受付にたち、おねえさんになにかの手帳を見せるのを見守る。

    「エース?」

     もう一度四角く切り取られた空を見上げると少し太陽が傾いていた。

    「やっぱりおれが悪かったんだ」
    「なんの話だよ」
    「サボは忘れちまったけど」
    「おれも忘れちまったな」
    「忘れたくらいでごまかせんのかな」
    「ごまかすもなにも、なかったことだろあんなのは。だってサボが忘れてんだ。大したことじゃねえよ忘れてんだから。エース」

     大男はスーツを着ていておねえさんの案内で待合室を通り抜けてきた。
     おれはパーカーのフードを被り、縁台から立ち上がって雪をはらい室内庭園を出てすぐのカウンセリング室の前まで歩く。
     
    「なあエース、おれら兄弟だよな」

     スマホの電源を切ってポケットに入れると同時に、担架にのせられベルトで拘束されたサボがカウンセリング室から出てきた。
     遠いいつかをうつす目と口からだらりと液体が漏れてる。
     扉が閉まる部屋の中でルッチせんせが袋を折りたたんでるのが一瞬見えた、吸う鎮静剤なんて聞いたことねえけど、まあサインしたのはおれだし…。
     思ったよりもとけてかわいくなったサボの頬に触れてやると徐々に光と熱が宿り、焦点が定まる。
     おれと、おれの後ろに立って肩に手を添える大男を交互に見て。
     
    「ほんとにひでえ」
    「わかるのか。間に合ったなサボ」
    「嫌だ、嫌だエース、こんなの間に合ってねえ」
    「最後に会えてうれしい。3ヶ月ちゃんとメシ食って頑張れよ」
    「嫌だ!エース嫌だ!!なんでエースがそうなるんだおれだろ!!おっさん聞いてくれ、エースはただおれんちに来ただけで」

     とけた顔であーあーうなりながらベルトをがちゃがちゃ鳴らしはじめたサボの顔におもしろいにおいのするタオルを被せナースが早足で運んでく。
     抱きしめてやりゃあよかったかもしれねえ。

    「彼、今なんて?」
    「さあ。あいつあたま変で、今から閉鎖病棟なんです。最近じゃ全然喋れてねえし、何聞いたって全部ああで。…だから」

     待合室の大きな窓の外にパトカーが停まってるのが見える。
     どんどん遠ざかってく怒号を聞きながらおれは大男に振り返り、頭を下げて両手を差し出すとすぐに手錠がかけられた。

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    tontorotoror0

    DOODLEお題 愛するもの ラブレター 何度でも 
    L視点現パロです、Aと再会します。この一連の話は3人にひどいことが起きているのではなく、3人それぞれに奇跡を科していてマタイの福音書4章の悪魔の要求をいいだけ皮肉ったものです。たとえばAは石をパンに変えろというのを科してまして、原作軸で土の中でメシになり、現パロで無償で肉まんやら豚汁やらばらまくしチーズケーキ買いかけるし酒を配りました。素直に叶えてます。
    嘘つき 公園に戻るとホームレスたちが手押し車に群がって暴言を浴びせていた。
     手押し車を押してるひとをよく見ると昔エースとボロアパートに住んでた時にチーズケーキ売りにきた男と女だ、宗教の勧誘の。
     そいつらに群がるホームレスたちは、カートに手を突っ込んでチーズケーキの箱を服の下にいれたり、高すぎるって暴言吐いたり、天使と市議会議員が描いてある冊子をやぶいたり踏みつけたり唾はいたり。
     そういや選挙カーの音がうるせえな…おれは選挙ポスターが貼ってある壁際のベンチに座ってその一部始終をぼーっと眺めていた。
     夕方になりカートの中のものを段ボールハウスまで運び終わったホームレスたちは公衆トイレ付近の拠点に戻っていった。
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