初詣に行く話(気が向いたら完成させるかもしれない) 年末年始の空気は騒がしくも静かだ。
そんなことを日渡ハルキは考えている。
冬の張り付くような冷たさは、この時だけは神聖な空気みたいだと思わされる。
身が引き締まる思い、と言ったらいいのだろうか。
「かすみちゃん、まだかな~」
十年来の付き合いの幼馴染の少女を思いながら、彼は待っていた。
待ち合わせ場所は幼馴染の家の前。
冷たい空気を鼻から取り込んで、口から吐き出してみたり暇を持て余す。
かわいくて愛おしい彼女を待つのは、まったく苦痛ではなくむしろ喜びに近い。
「お、おまたせ~……ハル君?」
「……アッ」
隣の家から出てきた振袖の少女。
ハルキは彼女に魅入られた。
赤メインの生地に黒袴に装飾された花の意匠は華やかな印象を与える。
花の白椿の髪飾りもアクセサリーとしてより彼女を可憐に見せて。
しかし、彼女自身の美しい二人静の長髪と、吸い込まれそうな青い瞳が、落ち着きを与えている。
脇に作られたシニヨンが可愛らしさを演出していた。
端的に換言するならそれは──
「完璧…………」
「完璧?」
キョトンとした少女──幼馴染である霧原かすみは彼の言葉にすぐ顔を赤らめさせた。
振袖のカスミを見ていたいが、視線を感じたのでその方向を見れば、かすみの母親がドアの隙間から覗いていた。
ハルキの目に気が付いた彼女は親指で答える。
「ありがとうございます──」
「なんの感謝なの……?」
「まあまあ……かすみちゃん、いこっか」
冷静さを取り戻したハルキ。
振袖の中の細い彼女の指に触れて、それに気づいたかすみは絡ませて。
彼らはゆっくりと歩き出すのだった。
「毎年人の数すごいね~」
「……うん」
ここは椿ケ丘にある神社である。