おとうさんたち、演技上手だねって話「ああ、なぜこんなにも愛しておるのにワシのものにならぬのじゃ。なぜワシを受け入れてくれぬのじゃ。
ワシではない者を映す瞳などいっそくり抜いてしまおうか。ワシではない者と愛の言葉を交わす唇など縫い付けてしまおうか。ワシではない者に触れようとするその手など切り取ってしまおうか。ワシではない者と共に歩もうとするその足など折り曲げてしまおうか。
そうじゃ。そうすればあやつはワシ以外とは添い遂げられぬ。ワシにしかあやつを最期まで愛することなど出来はせぬ。」
そうじゃろう?●●よ。
男がうっそりと微笑み一枚の写真に口づけを落とした。
その写真にはかつて友として接していた頃の男と●●の二人が写し出されていて、男の心の拠り所となっているモノであった。
「ああ、神様。彼があんなに変わってしまったのは僕のせいなのでしょうか。清らかで優しく愛に溢れた彼があんなふうになってしまったのは、僕が彼の愛を拒絶してしまったからなのでしょうか。でも僕は彼とは大切な友達でいたかったのです。唯一無二のその関係を壊すことなどしたくはなかったのです。」
その男はとある屋敷の地下にある座敷牢に縄で繋がれていた。
いつからここに閉じ込められているのか分からない。助けを請う声も壁を叩く音も地上までは聞こえない。
男がここに閉じ込められていることは、この屋敷の主人以外は誰も知らない。
―知ってはいけない。
そして今日も地下に向かう下駄の音がカランコロンと響いている。
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「おとうさんたち、すごいです。この迫真の演技。」(拍手)
「なぁ、鬼太郎。これって本当に小学生のやる劇の内容なのか?」
「そうですよ?今度の学芸会で発表する演劇の内容で合ってます。」
「…そうか。もっとこう子どもらしい桃太郎とか浦島太郎とかでいいんじゃないか?これはちょっと大人向けというかドロドロし過ぎだろう。」
「今の子どもは随分とおませさんなんじゃのう。」