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    abrt_akty

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    abrt_akty

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    声が出なくなってしまった。一時的なものだと医者には言われたが、こんなに出ないと歌は歌えないし、会話には毎回真奈美さんの通訳が必要だし、一時的だとしても不便だ。使いすぎで疲労が溜まってたと診断されたが、歌うたいにそれは酷な話だと思う。

    とにかく使い物にならないわいに代わって、真奈美さんが夕飯の買い出しに行ってくれた。帰ってくるまでに洗濯を済ませておこうと思ったが、久々すぎて異常に時間が掛かってしまった。自分がこれほど役立たずだったとは。本当にわいには歌しか無いんじゃないか?と思うと途端に不安になってくる。

    もしこのまま声が出なかったら?真奈美さんは何て言うだろうか。わいを、わいの歌を、好きにならなければ良かった、とか、そんなことを言われてしまうかも知れない。
    どうしよう、家事もまともに出来ないような男なんて要らないだろうな。真奈美さんはいい人だからすぐに次の相手が…………駄目だ。これ以上考えていると本当に駄目になってしまいそうだ。今すぐに叫んで思考を遮断したいのに、声が出ないせいでそれも叶わない。
    むしゃくしゃして頭を掻き毟ったら、棚に手がぶつかってボトルがいくつか床に落ちた音で我に返った。散らかった部屋を見て、今真奈美さんが帰ってきたら何て言おうかな、寂しかったなんて言ったらどう思われるだろうか、なんて考えながらそれを拾い上げた。
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    MOURNING幸せであれ
    ※しじみ食べたことないので食感は検索してみたけど実際のところ知りません
    「嶺二」
    ぼくの名前を呼ぶ声にゆっくり目を開けると、ベッドの端に腰をかけたランランの姿があった。
    「おはよう、嶺二。やっと起きたな」
    ランランはぼくの頬をそっと撫でてふわりと微笑む。少しくすぐったい。カーテンの隙間から射し込む陽の光が、ランランのまだセットしていないふわふわの髪の毛を明るく照らしてきらきらと輝いている。
    「いまなんじ?」
    身を起こしながら聞くと、7時だと教えてくれた。ちょうどいい時間だ。
    体を起こしたものの疲労の残る体はまだ少しだるくて、ベッドの上でぼうっとしてしまう。ランランの小さく笑うような声が聞こえたかと思うと、ぎしりとベッドの軋む音と唇に優しく触れる感触。それにうっとりとする間もなくランランはぼくから離れて、物足りなさを感じて見上げるぼくの髪を大きな手でくしゃくしゃとかき乱した。
    「ちょっとー!」
    「目ぇ覚めただろ?朝飯作ってあるから早く顔洗ってこい」
    「うん」


    着替えは後回しにして、顔を洗って歯を磨いてリビングに向かうと、美味しそうな匂いがぼくを待っていた。
    「わー!すっごい!和食だ…!」
    テーブルには、お味噌汁に焼き鮭に卵焼きが並んでいて、どれもまだ白い 2846