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    ピョッ

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    ピョッ

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    プトオク誕生日話

    【誕生日のお話】(呟きから途中で小説に変わります)付き合ってないけど距離感が近い設定で、プトんちで暮らしてるオク前提なんだけど、前日深夜からは配信で画面やらゲーム実況やらで引っ付きぱなしで、プトさん後で言おうかって後回しにするんですね。

    でもその配信が夜中まで続いて、プトさんその間も自分の作業しながら待ってたんですよ。その内に朝になってオクの部屋覗いたらオクちゃんゲームチェアに寄りかかって寝ちゃってるのね。プトさん仕方ないなって思いながらそんなオクちゃんに毛布敷いてあげて、また後でにしようってなるんです。

    んでプトさん知らずのうちに寝ちゃってて、起きた時には今度はオクちゃんもう家にいないんですよ。代わりに置きメモがあって『今日は派手なスタントのステージがあるから行ってくるぜ!見に来いよ!』って書いてあるんですよ。

    言われた通りにスタントのステージ見に行くんですけど、案の定オクタンはメディアからファンから関係者からお誕生日おめでとうって祝福されてるんですよ。しかも大きなケーキが用意までされてて、それを嬉しそうに食べてるオクタンを見てプトさいたたまれない気持ちになってそのステージを後にする。

    先に家に帰って待つことにするんだけど、今度は夜になっても帰ってこない。きっとステージの後に打ち上げでもしてるのかって思ってた矢先にオクタンから電話がくるんですよ。『いまレジェンドたちが俺の誕生日会してくれてるからお前も来いよ』って、
    そこでプトさん、もうどうでも良くなっちゃって「俺はいい。楽しんでこい」って一方的に電話切るんですよ。

    勝手に1人で疲れてしまったな、とか思いながら冷蔵庫開けて、実は用意してたケーキを出して1人で食べ始めるプトさん。その間もひっきりなしに電話が掛かってくるのも無視して頬張って


    あいつは俺のものでは無いし、俺はあいつとは付き合ってない。そうだこんなのは無意味だったんだ。柄にもないことするからこうなる。ああ全く、馬鹿みたいだな

    鳴り止まない端末の電源をoffにして、〖誕生日おめでとう、オクタビオ〗なんて書いてもらってしまったチョコレートカードもバリバリ口に運び込んで、飲み込んで、途中で嫌気が指すほどの甘さに顔が渋くなる。
    そうして食べ切った後に残ったのはただの胃の圧迫感と甘ったるさの嫌悪感、買ってしまった後悔とともにプレゼントと現した小さな箱も捨てて、彼にとっては些細なものだ、必要ないっと一息つく。そうして嫌でも食べ切ったケーキで満腹にはなったものの、次に来るのは強烈な睡魔だ
    瞼が重くなり、意識も徐々に遠のいていく。これではいけないと、ゆっくりと立ち上がり俺は寝室へと向かう。眠気でぼうっとした意識の中、今日は朝方に寝たんだっけな…とうつらうつらと今日の事を思い返す。

    真っ先に彼の部屋に向かえば配信で夢中で笑いが絶えなくて。目が覚めてスタントを見れば大勢に祝福され、煌びやかな贈り物も花束も受け取って、絶え間なく輝くフラッシュの中で嬉しそうにご馳走を食べてる彼。

    帰って待てば、通話越しから聞こえるレジェンドたちの楽しそうな声たち。なにがおかしい事があるか。オクタンは誰にでも分け隔てのなく祝福されて当然の人物なんだ。
    「(俺が用意なんてしなくても良かったんだ。)」
    ただ一言、祝いの言葉でも言って終わらせれば良かったものの、それすら言わずとも誰かが、沢山の人が言うのであれば、俺の祝福の言葉なんて必要ないだろう。

    寝室へと着いて、ぼやけてきた意識のままに俺はベットを身を投げるように預けた。年甲斐もなくホールを1人で食うものでは無いな。
    無理して口の奥に追いやったケーキの余韻が、腹底で重みともたれが嫌悪感として身体から剥がれない。何度か深呼吸して気を紛らわす位しか出来ないのが歯痒い。布団を雑に被り、直ぐに瞼を閉じる。それでも真っ暗の中で出てくるのはオクタンの笑顔と声だ。
    「…なんでアイツは、俺と一緒にいるんだろうな…」
    特別な関係でもない、恋人でも何でもない。ただの同居人の筈なのに。それでも彼に対して形容し難い感情が自分の中で強くなっていくのが酷く滑稽で、酷く醜くて、酷く気持ち悪い。まるで今俺の腹の中にあるケーキのようだ。
    そんな自分に対して嫌悪感を抱きながら、瞼の裏で何度も過ぎるオクタンの姿をかき消して、ゆっくりとクリプトは眠りに落ちた。


    あれから何時間か経っただろうか。もう深い眠りに付いているクリプトの元へ、カシャりと独特な足音が近付いてくる。

    足音の主はクリプトの横向き寝の姿を一度見つめてから、彼を起こさぬようにゆっくりとその傍で腰を落とした。

    小さく軋むベットの上に二人の影。その内の一人はクリプトの顔を覗き込んでから、指の腹で柔く彼の頬を触れる。クリプトから小さな声が漏れるも気にせずに、今度は綺麗な黒髪に触れ、そのまま頭を撫でた。

    それでも起きる気配のなく深く眠っているクリプトの傍で、ゆっくりと、ゆっくりと、横になる。彼の背との距離はほぼ無く、逆にクリプトからの体温が触れなくとも空気で感じられる程だ。なのに、そんなクリプトの傍で横になった、とある人にとっては彼との距離の間にぽっかりと穴が出来たように感じた。

    恐る恐る後ろから彼の身体に腕をまわす。見た目よりも質量のある引き締まった身体は、自分の腕の中にはすっぽり収まるのに、置いてきぼりな気分はそのままだ。
    「…クリプト」
    呼吸で揺れる彼の背に額を付けては、オクタンはほんの少しだけ強く抱き締めて、小さく彼の名前を呼んだ。
    途端に目頭が熱くなって力強く瞼を閉じる。それに押し出される形でじわりと涙が彼の目元を濡らした
    「…う…」
    「…ん、?」
    自分の身体に力が加えられた窮屈さと、背中にじんわりと温かく湿った感触、そして小さな呻き声にぼんやりとだが瞼が動く。
    少しずつ意識が戻る中で、背にある自分以外の心地よい体温の存在に、ゆっくりと身体を動かした。
    「…っ、オクタン…?どうした」
    「…っ」
    寝ぼけ眼で自分の隣にいただろう人物と向き合う。するとこれはまた予想外で、何故か今日は笑顔も明るさも絶えなかったあのオクタンはボロボロと涙を流して泣いてるのだ。
    あまりの急な事に、慌てて彼の目頭を拭うも溢れ出すそれは未だに止まらなくて。
    涙で揺れて見える綺麗な黄緑色の瞳が俺を映す。
    「ケーキ…」
    「え?」
    「ケーキ、食べちゃったのか…?」
    彼から発せられた言葉に一瞬止まる。するとまた、上擦った声でその続きを紡ぐオクタン。
    ケーキ?俺の買っといたケーキの事か?
    「…知ってたのか?」
    「…ん」
    少し上体を起こし、ポロポロと目元から溢れてくる宝石のように輝く涙を何度か拭いながら、泣いている彼をちゃんと向き合う形で彼の顔を見つめてやる。
    俺を見つめるオクタンの姿は今日の面影を感じさせず、控え目に身体を縮こませ肩を竦める姿はまるで子供のようにあどけない。
    「ちゃんとオクタビオって、書いてくれたから」
    そんな彼からのか細い声と言われた言葉に、俺はハッと気が付いた。
    ここずっと、俺はオクタンと共にする事が多くはなった。ゲーム以外にも、食事や休息をとる時も。それでも変わらず俺が彼を呼ぶ時はレジェンドネームだ。
    何度か彼に名前で読んで欲しいという懇願を無視して、境界線として張った俺とオクタンの間の鉄網。
    当たり前のように振り払っていて、忘れていた。

    「…すまない、ケーキはもう食い飽きただろうと思ったんだ」
    「そんなことねぇよ…、だってクリプトがやっと俺の名前を書いてくれたケーキなんだ…」
    こんなに特別で最高なもんなんてあるものか、と顔をくしゃりと歪ませて、そんな顔を見せまいと彼は自分の腕で顔を覆う。
    ああ、俺が呼ぶ君の名はこんなにも大切なものだったのか…。俺は一緒にいたのにそんな事も汲み取れなかった…。

    「オクタビオ」

    俺がまたオクタビオの名を呼べば、ぴくりと身体を跳ねさせる。
    普段とは考えられない元気はつらつとした雰囲気はない、触れたら壊れてしまいそうな繊細な姿の彼に恐る恐る手を手繰り寄せてみれば、小さく震えた身体は壊れることなく、ゆっくりと俺の胸に収まった。
    嗚咽を漏らしながらも、俺の胸に手を添えて目を赤くするオクタビオに、じんわり胸の奥が熱くなる。
    「…明日、一緒に買いに行こう」
    「…おう」
    柔く抱き締めれば、オクタビオの体温が胸を中心に俺に伝わってくる。感極まった彼の感情が流れてくるかのように、伝わってくる体温はとても熱く、俺の身体に溶け込んでいった。
    「…クリプト」
    「ん?」
    「今日はごめんな」
    弱々しく俺の首にオクタビオの腕が絡まる。そして身体を預ける形でこつんと俺の肩に頭を預けて、彼は小さく謝罪を吐いた。
    「なんで謝る?勝手にケーキ食ったのは俺だぞ?」
    「…そうじゃなくて」

    今日ずっとクリプトの傍にいれなかった。

    そう遠慮がちに言い出したオクタビオに、一瞬目が丸くなる。それでも彼は続けた。
    「ステージで呼びたかったけどお前もう居なくて…。誕生日会で二人で楽しくとも思ったけど、その時には…怒ってて」
    ぽつり、ぽつり、控えめに述べていく彼なりの思いやりを耳に入れながら、俺は少しだけ頬が緩んだ。
    その気持ちだけで充分だ、オクタビオ。

    「良いんだ、気にするな」
    「けどよ」
    「俺こそ大人気なかった。」
    傍観から願望だけを滲み出して、言いたいことも言わず飲み込み、ただ口を開き餌を待つ鯉のように待っていただけの俺が、お前を責めるなんて違うだろう?
    曖昧な境界線で過ごしていくうちに、分からなくなってしまって中途半端だったのは俺なのだから。
    「…オクタビオ」
    「なに?」
    胸に浸透していく彼の体温を噛み締めながら、自分に対してこんなにも愛しく甘えん坊なオクタビオに次々と、熱くなる感情が漏れて、溢れて、止まらない。
    酷く気持ち悪いと嫌っていたのに、彼を前にするとその感情が前線出て暴れ出てくる。
    勘違いしてもいいだろうか、独占してもいいだろうか、主張してもいいだろうか。
    …愛してもいいだろうか

    「お誕生日、おめでとう」

    やっと言えた、彼に渡す祝福の言葉。
    その言葉と共に内に漏れた〖好きだ〗〖愛している〗という、彼に対しての熱く煮えるほどの感情を、ほんの一瞬の口付けに乗せて…贈った。



    ▼おまけ

    朝目覚めて、俺は直ぐに顔を洗いに行く。いつもならまだ寝ているのだが、昨日は随分と睡眠を貪ったらしい、珍しい程の良い目覚めだ。
    「(今日はオクタビオと買い物と行って、確かあいつ彼処に行きたいとも言っていたな…。混み具合でも調べておこう。)」
    なんて今日の予定を脳内で反芻しながら、歯を磨き、ぼうっと鏡に映る自分を見つめる。

    やってしまった。遂にキスをしてしまった。
    あの時オクタビオは嬉しそうにしてそのまま寝てしまったが、本当に大丈夫だろうか。
    後になってそんなつもりはなかった、と来たら、俺だけ舞い上がった事になるだろう…そうなったら羞恥心でどうにかなりそうだ。もう腹を切るしない。ああ、大丈夫だろうか、くそ…。

    「なー!クリプト、見ろよ!!!」

    そんな俺の心配をよそに、昨日のしおらしさはどこかへ飛んで、いつも通りの元気はつらつなオクタビオが俺の元へ駆け寄ってくる。
    そんなオクタビオの顔に俺は目を丸くして固まった。
    「お前…!どうしてそれを!?」
    「ゴミ箱の中に入ってたぜ。ひでぇなクリプト、俺へのプレゼント捨てるなんてよ」
    そう、本来彼に渡す筈だった、彼用にオーダーしといたブルーライトカットの眼鏡。以前、俺が眼鏡を掛けてる時に驚いたオクタビオを見てからふと思い立って買ったものだ。
    そういや昨日ゴミ箱に捨てたまま取り忘れてたんだった…
    「なあ、似合うか?」
    「ん…、ああ。似合ってる」
    嬉しそうに眼鏡を掛けたまま、はにかむオクタビオの姿を見て、まあ良いか…。と逆に一安心する。気に入ってくれたなら何よりだ。
    「ありがとうな、クリプト」
    ホッと胸を撫で下ろすと、今度は勢いよく肩を引っ張られ、反射的に彼の方へ顔がむく。そして次に来たのはふっくらと柔らかい唇の感触。

    「愛してるぜハニー!」

    ………ああ、どうやらオクタビオにとって、あの口付けの意味は筒抜けだったようだ。



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