Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    こいと

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    こいと

    ☆quiet follow

    ※メポコビ
    ホワイトデーネタ。バレンタインの話と繋がっています。以前Twitterでアップしたものと同じです。

    #メポコビ
    mepokovi
    #コビめっぽう2

    HappyWhiteday「ヘルメッポさん。これ、バレンタインのお返しです」
    3月14日。ホワイトデー。コビーに綺麗にラッピングされた箱を差し出される。白と青で彩られた小ぶりな箱は、ちょうど一ヶ月前に渡された黒い箱を思い出させた。
    「おう、ありがとな。じゃあおれからもハッピーホワイトデー」
    差し出された箱を受け取り、代わりにヘルメッポからコビーへのプレゼントを取り出す。箱ではなく水色の袋と青いリボンでラッピングされているそれは、手のひらに乗るくらいの大きさの割に重量があった。
    一ヶ月前、バレンタインデーに互いにチョコレートを交換したため、ホワイトデーのお返しもそれぞれ用意した。ただ何を贈るかは相談していない。中身がわかっていても恋人からのプレゼントとあれば嬉しいが、やはり当日のお楽しみにとっておきたかった。
    チョコレート一択のバレンタインデーと違い、ホワイトデーは定番はあっても基本的に決まりがあるわけではない。何を贈れば喜んでくれるか、それを考えている時間も楽しいものだった。

    「ありがとうございます!開けていいですか?」
    「勿論」
    しゅるりと軽い音を立ててサテンの滑らかなリボンを解き、袋から中身を取り出す。現れたのは、厚いガラスの瓶に入れられた色とりどりのキャンディ。
    カラフルな彩りを邪魔しないよう、個別に包まれているフィルムは薄い透明なもので、部屋の明かりにかざすとキラキラと輝いて見えた。
    「わあ……綺麗……。相変わらずお洒落なもの見つけてくるんですねヘルメッポさん」
    「べっつに普通だろ、まあ、折角お前にやるならテキトーなもん渡したくないからそれなりの店で探してはいるけどよ」
    「えへへ……ありがとうございます」
    元々支部大佐の息子として贅沢な生活をしていたのもあり、上質なものを見る目はコビーよりも遥かに養われている。
    そういえば、入隊前からそれなりのスーツを着ていたし、好物はキャビアに豪華なステーキと、元来高級志向だったなあと思い出した。今ではすっかり庶民的な生活に慣れたように見えていたが、私服や身に着けるものはどれも洒落たものをきっちりと着こなしている。華美さは落ち着いたが、センスはそのままコビーへのプレゼント選びへの余念のなさにも表れていた。

    「ヘルメッポさんのを見た後だと、僕のがどうしても安っぽく思えてしまうんですよねえ……」
    「おれはお前がおれの為に用意してくれたもんなら何でもいいって言ったろ」
    「そうですけど……」
    先に開けなきゃ良かったとぼやくコビーに苦笑しつつ、渡された箱の包装を丁寧に解く。入っていたのは、クッキーの詰め合わせだった。
    ホワイトデーらしい白色で、上品な装飾が施された箱に、数種類のクッキーが綺麗に並べられている。コビーなりに、年上の恋人に合うように考えて買ったことが想像できた。
    しかしクッキー、クッキーか。と一瞬よぎる思い。コビーがそんなことを意図しているわけではないだろうことはわかりきっているが、少しだけ悪戯心が湧いてしまった。

    「美味そうだな。でもコビー、おれはお前の恋人だと思ってたんだがなあ」
    「え、恋人でしょ?何言ってるんですか」
    ことりと首を傾げ、心底意味がわからないといった顔をしてみせるコビーが可愛い。可愛いが、ここは甘やかすのはもう少し我慢する。
    にやりと悪い笑顔を浮かべながらクッキーの箱をテーブルに置く。
    「ホワイトデーに渡すプレゼントにはそれぞれ意味があるって俗説があってな。クッキーは『あなたとは友達でいましょう』ってことらしいぜ」
    「ええっ!?」
    「そうかそうかー。コビーはおれとは友達のままでいたかったのか。悪かったな付き合わせて」
    「ち、違う違う!違いますよ!!僕そんな意味知らなくて!!ただ箱がお洒落だし美味しそうだったから、ヘルメッポさんに喜んで欲しくて…!!」
    わたわたと必死に弁解するコビーの様子につい吹き出してしまう。まさかこのまま友達に戻ろうなどと言われるのではないかと慌てて不安そうに見上げる姿が可哀相で可愛くて、ぎゅっと抱き寄せてぽんぽんと頭を撫でてやる。
    「悪い悪い。知らずに買ったのなんてわかってるからよ。おれはお前とただの友達に戻るつもりなんてさらさらねえから安心しろ」
    「……ヘルメッポさんのいじわる」
    「悪かったって」
    すねた口調で責めるが、その手はヘルメッポの背に回され離さないとでも言うようにぎゅっとしがみついてくる。
    そんな恋人に愛しさが募る。自分と別れたくないと必死になる姿のなんといじらしいことか。肩にうずまった桃色の髪をかきわけ、バンダナ越しにこめかみにキスを贈る。
    「……飴はどういう意味なんですか?」
    「ん?『あなたが好きです』って意味」
    「……うぅ~……」
    意味を聞いてぐりぐりとヘルメッポの肩に額を擦りつけてくる。余程自分の失敗を悔いているのか、飴越しのヘルメッポからの告白が嬉しいのか、どちらとも取れないうなり声。
    「ねえヘルメッポさん、まだ急いで行けば開いてるお店ありますよ。新しいの買いに行こう?」
    頭を離して見上げてくる。やはり知らなかったとはいえ本命に贈るには相応しくないものを選んでしまったことを後悔しているようだ。
    大切な人にはちゃんとしたものを贈りたい。こんな隠れた意味合いなんてものに無頓着な自分が恥ずかしい。そんな感情がありありとわかる目を見て、自分から振っておきながらヘルメッポにも罪悪感が湧く。
    「おれが言い出しといてなんだけどよ、ただの俗説だって。別にそこまで気にしなくていいんだぜ?お前がおれの為に選んでくれたんだろ?」
    「だってヘルメッポさんはその意味をわかってて飴を買ってきたんでしょう?」
    「それはまあ……」
    「だったら僕もちゃんとヘルメッポさんに意味のあるもの渡したいです」
    知らなければ知らないでそれでも良かったことだ。そんないつ誰が流布したのかもわからない意味合いよりも、恋人が自分のことを考えて選んでくれたプレゼントへの気持ちの方が大事だ。
    ただそうはいっても、知ってしまえば気にするのは当然のことで。余計なことなど言わなければ良かったと今度はヘルメッポが後悔した。一度決めたら頑固なコビーの意思を変えさせるのは少々骨が折れる。

    「んー……、でもなコビー。おれは折角早めに仕事上がったんだから今日はもう部屋でお前とゆっくり過ごしてえんだが」
    「でも……」
    「なら来年の楽しみにしておこうぜ。来年のバレンタインもおれからもチョコやるから、ホワイトデーにはコビーもまた何か用意してくれよ」
    「来年……?」
    それは来年のバレンタインデーもホワイトデーも、恋人として一緒にいようということ。一ヶ月前にヘルメッポから来年また違うチョコレートをくれると言われた時と同じ喜びがじわりと湧く。
    本当なら今年もきちんとやりたい。だがゆっくり過ごしたいというヘルメッポの気持ちもわかる。元々はコビーもそう思っていたから。
    折角のホワイトデー、少しでも長く恋人との甘い時間を過ごしたい。だから。

    するりとヘルメッポから体を離し、テーブルに置いていたガラス瓶を手に取る。蓋を開けて中身の飴を一つ取り出すと、フィルムを剥がして口に含む。
    途端口内に広がる、甘い甘い林檎味。
    「ヘルメッポさん」
    「っ、おいコビー……!」
    ぐい、とヘルメッポの両頬を掴み固定し、その唇に自分のものを合わせる。
    僅かに開いたままだった隙間から舌をねじ込み、それと一緒に飴もころんとヘルメッポの口内に移った。
    「コ、……んっ!」
    「はぁ、んむ……へうめっぽひゃん……んん」
    一度ヘルメッポの方に渡った飴を再度舌で取り戻す。その際触れ合う舌の感触にぞくぞくと背筋が震える。
    離れた飴とコビーの舌を追うように今度はヘルメッポから絡ませてくる。角度を変えて何度も唇を合わせながら、互いの口内を飴が行き来してだんだんと小さくなっていく。
    背と後頭部にヘルメッポの手が回り固定される。手袋越しでも伝わる体温の熱さに、飴と混ざった唾液の甘ったるさにくらくらする。

    「ぷはっ!はあ……!」
    息が続かなくなり長い口付けが終わる。まだ少し残っている飴はヘルメッポの口内に渡した。
    もう飴がなくなっても残る林檎味の唾液をこくりと飲み込み、とろんと飴よりも甘い視線でヘルメッポを見上げる。
    「僕もヘルメッポさんのこと大好きだから……今年はこれで許してくださいね?それと……バレンタインの時の"お返し"です」
    長いキスで濡れた唇をうっそりと吊り上げ、今度は悪戯が成功したかのように挑発的に笑む。
    どうやらもう新しいものを買いに行くのは諦めたようだ。この飴が代わりということだろう。それにこんな状態で部屋の外に出る気力など互いにもう失せてしまった。

    「おう、しっかり受け取ったぜ。じゃあ、ゆっくり"一緒に"残りの飴食べるか?」
    蠱惑的な笑みを浮かべ、かなり小さくなった口内の飴をがりりと嚙み砕く。「一緒に」の意味合いに気付いたコビーが熱を帯びた声で「はい」と頷くと、瓶から新しい飴を取り出し口に含んだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏💞💞💞💞👍👍💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works