いつものナイトルーティーンも終わり、そろそろ寝室へ向かおうかという時頃。ソファからHiMERUを眺めていた燐音が近づいてくる。
「メルメル〜」
「.........なんですか」
「俺っち、メルメルにお願いがあります」
「いやです」
「なァ、何も言ってない」
「HiMERUはもう寝ますので、」
「あのさぁ」
「...」
「今日一緒にねよ?」
「...シませんよ?」
「あー、...うん、大丈夫。別にシたい訳じゃねぇの」
いや、メルメルが良いなら俺っちは〜とか言い出すから、だからシないって言ってんだろ!と睨んでやるが、効果はいまひとつ。
「俺っち今日はぁ、メルメルと一緒に寝たい気分なの。添い寝。」
なァ、ダメ?なんて上目遣いで確認される。...この顔に弱いことを利用されている気がするが、添い寝だけならHiMERUもやぶさかでは無い。
「...まぁ、寝るだけなら、良いですけど」
「やりィ!」
そのままHiMERUの手を攫って歩き出すから、ちょっと!本当にシませんからね!?とその背中に声をかけながら着いていくしかなかった。
****
燐音の部屋へ連れていかれ、仕方ないので、そのままベッドに上がると背中から抱きしめられた。
「...燐音?」
腹部に回された腕に手を重ねて後ろを伺うが、ギュッと抱きしめる力が少し強くなっただけで、返答は無い。ベッドに座ったまま背中で燐音の体温を感じる。ただ抱きしめられたままジッとしていたが、あまりにも動く気配がないので、体をよじって燐音に正面から向き合い、頬を手で包み込んで顔を覗き込む。
「何かありましたか?」
「...なんもねェ」
「HiMERUには言えない案件ですか?」
「そーいうんじゃないから」
「...では、今日はHiMERUに甘えたい気分、という事ですね?」
「ん、そう」
「え?」
「メルメルに甘えたかったの。充電させて」
そう言いながら、押し倒してくる燐音にプチパニックだ。まさか肯定されるとは思っていなかった。
ただ、寝転がって、いつもは不埒に這い回る手も、背中に回されただけでそこから動こうとしない。
首筋にかかる吐息がくすぐったいが、たまには良いか、と燐音の背に腕を回す。そして、子供をあやす様にトントンとリズムを刻んでみる。
「...ん」
HiMERUの肩口にグリグリと額を押し付けられる。まるで子供がむずがるみたいな仕草。本当に甘えているらしい。
HiMERUの上に乗っていた体を少し横にずらし、それでも抱きしめた腕は解放しないまま寝に入る。
抱き枕にでもなった気分だったが、自分も居心地の良いポジションを見つけ、燐音を抱きしめながら目を閉じた。
-fin-